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2章 ゴブリンの砦
STORY19 買い出し組の二人
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「ポーションに毒消しに各種の魔石……。これで買い忘れはありませんよね」
単眼の巨人サイクロプスのグランザは大荷物を両手いっぱいに抱えていた。
「ああ、大丈夫だろう。それよりも本当に荷物を全部持ってもらってもよかったのか?」
隣で手ブラの青年ウラボスがすまなそうな表情を見せて言う。
「いいんですよ、これくらい。僕にとっては軽いもんですから」
「そうか? それならいいんだが、必要ならいつでも言ってくれ。すぐに交代する」
「ありがとうございます。……でも、僕なんかが冒険パーティーに加わってよかったんですかね……」
「どういう意味だ?」
怪訝な表情のウラボスが訊く。
「魔族が一緒にいるってだけでも周りの人たちから変な注目を集めちゃうのに、僕の場合は……」
グランザの言葉通り、魔族であるサイクロプスのグランザと親しげに話しながら歩くウラボスは衆人の注目を集めている。それはけっして好意的なものではないことははっきりと感じる。
そして、グランザが気にかけているのはそれだけではないことをウラボスも知っていた。グランザは狂戦士であることを後ろめたく感じているのである。
「リアーナもリャッカも、もちろん俺だってそんなことを気にしちゃいないさ」
「ウラボスさん……」
単眼を潤ませるグランザ。
「おいおい、魔族が町をうろついてんじゃねぇよ」
二人の行く手を4人組の人物が遮る。グランザは怯懦な性格から何も反論できずに押し黙ってしまう。
「べつに魔族が歩き回っちゃいけない決まりはないだろ。おまえたちにとやかく言われる覚えはない」
ウラボスは4人組を一瞥する。
「魔族なんぞにうろつかれちゃ目障りなんだよ! ついでに、てめぇら暁の渡り鳥も消えちまえ。報酬の安い雑用ばっか引き受けてるようなショボいパーティーなんか必要ねぇんだよ!」
「僕のことはなんと言ってもかまわないです。だけど、暁の渡り鳥を悪く言わないでください! リアーナさんはだれも引き受けないような、お金にならないような依頼でも引き受けてる素晴らしい人です! 僕はそんな彼女を尊敬しています!」
グランザは毅然とした態度で対応にでる。
「けっ! 偉そうな事を言っちゃいるが、そこにいる男はただの村人だそうじゃねぇかよ」
4人組の一人、赤髪の男が挑発的な視線を投げつける。
一方、ウラボスは呆れたようにため息をついている。
「行こうぜ、グランザ。こんな連中はまともに相手する価値もない」
4人組は、無視して立ち去ろうとするウラボスとグランザの先回りをして立ちふさがる。
「待てよ。随分と言ってくれるじゃねぇか。俺たち黒豹はこの町じゃ名の知れた冒険パーティーなんだぜ。てめぇらのような流れ者なんかに敗けるかよ!」
「あの、やめておいたほうがいいですよ。たしかにウラボスさんのクラスは村人ですけど、ものすごく強いですから」
黒豹のメンバーを気遣うグランザ。赤髪の男はますます気に入らないといった様子である。
「るせぇ! だったら、勝負してやろうじゃねぇかよ! ただし、てめぇらが敗けたら土下座して謝ってもらうからな!!」
「あわわわわ……。すみません、ウラボスさん。僕が余計なこと言っちゃったから面倒なことに……」
予想外の展開に申し訳なさげに項垂れるグランザ。
「気にすることはない。俺はこいつらと少し遊んでやってから戻る。グランザは先に帰っててくれ」
「わかりました。あの、ちゃんと手加減してあげてくださいね」
「ああ、わかってるよ」
立ち去るグランザを手を振って見送る。
「てめぇ!……血祭りにしてやる!!」
赤髪の男はウラボスの胸ぐらを掴む。
「そう焦るなって。ここで暴れるのもまずいだろ。場所を変えようぜ」
ウラボスは涼しい顔で場所替えを提案した。
単眼の巨人サイクロプスのグランザは大荷物を両手いっぱいに抱えていた。
「ああ、大丈夫だろう。それよりも本当に荷物を全部持ってもらってもよかったのか?」
隣で手ブラの青年ウラボスがすまなそうな表情を見せて言う。
「いいんですよ、これくらい。僕にとっては軽いもんですから」
「そうか? それならいいんだが、必要ならいつでも言ってくれ。すぐに交代する」
「ありがとうございます。……でも、僕なんかが冒険パーティーに加わってよかったんですかね……」
「どういう意味だ?」
怪訝な表情のウラボスが訊く。
「魔族が一緒にいるってだけでも周りの人たちから変な注目を集めちゃうのに、僕の場合は……」
グランザの言葉通り、魔族であるサイクロプスのグランザと親しげに話しながら歩くウラボスは衆人の注目を集めている。それはけっして好意的なものではないことははっきりと感じる。
そして、グランザが気にかけているのはそれだけではないことをウラボスも知っていた。グランザは狂戦士であることを後ろめたく感じているのである。
「リアーナもリャッカも、もちろん俺だってそんなことを気にしちゃいないさ」
「ウラボスさん……」
単眼を潤ませるグランザ。
「おいおい、魔族が町をうろついてんじゃねぇよ」
二人の行く手を4人組の人物が遮る。グランザは怯懦な性格から何も反論できずに押し黙ってしまう。
「べつに魔族が歩き回っちゃいけない決まりはないだろ。おまえたちにとやかく言われる覚えはない」
ウラボスは4人組を一瞥する。
「魔族なんぞにうろつかれちゃ目障りなんだよ! ついでに、てめぇら暁の渡り鳥も消えちまえ。報酬の安い雑用ばっか引き受けてるようなショボいパーティーなんか必要ねぇんだよ!」
「僕のことはなんと言ってもかまわないです。だけど、暁の渡り鳥を悪く言わないでください! リアーナさんはだれも引き受けないような、お金にならないような依頼でも引き受けてる素晴らしい人です! 僕はそんな彼女を尊敬しています!」
グランザは毅然とした態度で対応にでる。
「けっ! 偉そうな事を言っちゃいるが、そこにいる男はただの村人だそうじゃねぇかよ」
4人組の一人、赤髪の男が挑発的な視線を投げつける。
一方、ウラボスは呆れたようにため息をついている。
「行こうぜ、グランザ。こんな連中はまともに相手する価値もない」
4人組は、無視して立ち去ろうとするウラボスとグランザの先回りをして立ちふさがる。
「待てよ。随分と言ってくれるじゃねぇか。俺たち黒豹はこの町じゃ名の知れた冒険パーティーなんだぜ。てめぇらのような流れ者なんかに敗けるかよ!」
「あの、やめておいたほうがいいですよ。たしかにウラボスさんのクラスは村人ですけど、ものすごく強いですから」
黒豹のメンバーを気遣うグランザ。赤髪の男はますます気に入らないといった様子である。
「るせぇ! だったら、勝負してやろうじゃねぇかよ! ただし、てめぇらが敗けたら土下座して謝ってもらうからな!!」
「あわわわわ……。すみません、ウラボスさん。僕が余計なこと言っちゃったから面倒なことに……」
予想外の展開に申し訳なさげに項垂れるグランザ。
「気にすることはない。俺はこいつらと少し遊んでやってから戻る。グランザは先に帰っててくれ」
「わかりました。あの、ちゃんと手加減してあげてくださいね」
「ああ、わかってるよ」
立ち去るグランザを手を振って見送る。
「てめぇ!……血祭りにしてやる!!」
赤髪の男はウラボスの胸ぐらを掴む。
「そう焦るなって。ここで暴れるのもまずいだろ。場所を変えようぜ」
ウラボスは涼しい顔で場所替えを提案した。
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