冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

２章 ゴブリンの砦

STORY21 合流

　「ウラボスとグランザはまだ帰ってないみたいね」

　滞在している宿屋２階の部屋を見回したリアーナが言う。

　「せっかく仕事を持ってきたっていうのに、あの二人は遅いニャ！」

　「ウラボスもグランザも買い出しに行ってくれてるんだから、そんなこと言っちゃダメじゃない」

　不満を口にするリャッカをリアーナがいさめる。

　「あのぅ……」

　リアーナとリャッカに連れられてやってきた依頼主の男はどうすればいいのか戸惑っているようである。

　「あっ、すみません。こちらにおかけになってお持ちください。もうすぐわたしたちの仲間が帰ってくると思いますので…」

　「はぁ…」

　席をすすめられ、男はおずおずと着席する。

◎

　コンコン

　「どうぞ」

　扉をノックする音にリアーナが反応する。

　「もう戻ってらしたんですね」

　扉を開けてグランザが室内に入ってくる。

　「ひゃああっ！」

　それまでおとなしく椅子に座っていた男は驚いて椅子もろとも床に倒れ、這ほう這ほうの体ていで壁際まで移動する。

　「ニャハハハ。普通の人がいきなりサイクロプスを見ればこうなるニャ！」

　リャッカが楽しげに笑う。

　「リャッカちゃんったら…。大丈夫ですよ。彼はグランザといってわたしたちの仲間なんです」

　リアーナが倒れた椅子を起こし、男に手を差し伸べる。

　「あ、あ、あんたら、魔族と一緒に旅してるだか？」

　恐怖に顔をひきつらせながら男が声を震わせる。

　「はい。でも、グランザはとても優しい性格をしてるんですよ。ですからご安心ください」

　「はぁ」

　男はリアーナに促されて再び着席する。

　「それで、ウラボスはどうしたの？」

　ウラボスの姿がないことを気にして、リアーナがグランザに訊く。

　「それが……」

　グランザは買い出しの帰りに起きた出来事を話した。

　「それじゃ、ウラボス１人でその人たちと！？」

　リアーナが部屋の扉のノブに手をかける。

　「リアーナが行く必要はないニャ。あのウラボスを倒せるやつなんていないニャ。むしろ、相手が心配ニャ」

　部屋を飛び出そうとするリアーナを制止し、リャッカが言う。

　「リャッカの言う通りですよ。黒豹のメンバーさんの実力ではウラボスさんには到底勝てないです。きっとすぐに帰ってきますよ」

　グランザもリャッカの同意する。

　「そういうことニャ。リアーナもおとなしく待ってるニャ」

　リアーナは仲間たちに諭されてドアノブから手を離す。たしかにウラボスが敗北するなど想像すらできなかった。それに、もしもそれほどの相手なら自分たちが加勢したところで足手まといにしかならないのは確実であった。

◎

　ガチャ

　扉を開けてウラボスが入ってくる。

　「ウラボス！　ケガとかはしてない？」

　リアーナがウラボスに駆け寄る。

　（ウラボスのことになると、リアーナはいつも心配し過ぎるニャ）

　リャッカが肩をすくめる。

　「ああ。問題ない」

　普段と変わらない様子のウラボスにホッと胸を撫で下ろすリアーナ。

　「本当に大丈夫なのかニャア？　相手を殺してないかニャ？」

　リャッカが悪戯っぽく笑いながらウラボスに訊く。

　「あのなぁ……。俺はおまえと違って血に飢えた獣じゃないぞ？」

　「ニャア！？　あたしだって獣じゃないニャ！」

　「そうは言っても猫じゃないか」

　「違うニャ！　あたしはケットシーなんだニャ！」

　「似たようなもんだろ」

　「全っ然、違うニャ！！　あたしは歴とした妖精ニャ！　よ！　う！　せ！　い！！」

　「猫妖精だけどな」

　「ニャア！　やっぱりあいつは性格最悪男ニャア！！」

　遂にリャッカは猫の姿となってリアーナの懐に飛び込む。リアーナは慣れた様子でリャッカの頭を撫でる。

　「……あのぅ？……」

　暁の渡り鳥にとってはいつもと変わらない平和な時間である。しかし、依頼主の男はどうすればいいのか困惑していた。