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2章 ゴブリンの砦

STORY25 ラグト村

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 「びっくりしたニャ。いつの間にあんなに強くなったニャ?」

 「ほんとですよ。リアーナさんがあんなに強くなってたなんて全然気づかなかったです」

 ラグト村へと続く山道を進む一行。リャッカとグランザはリアーナの成長を自分のことのように喜んでいた。

 「エヘヘ…。ウラボスが稽古をつけてくれてるから、それが活かされてきてるんだと思う」

 リアーナは照れ笑いしながら言う。

 「フムフム。ウラボスもほんの少しは役に立つってことニャ!」

 「おやおや、猫に認められても嬉しくないな」

 「ニャア! やっぱりムカつく性格ニャ!!」

 ウラボスとリャッカのいつもの口喧嘩に慣れてきたリアーナとグランザは微笑みすら浮かべていた。

 「なんだかんだ言っても、ウラボスさんとリャッカって仲が良いですね」

 「どうしてそうなるニャ!? 心外ニャ!」

 グランザの言葉にすかさず反論するリャッカ。

 「じゃあ、リャッカちゃんはウラボスのことが嫌い?」

 「……だれもそこまでは言ってないニャ……」

 リアーナに訊かれて小声で答える。

 「ウラボスさんだって、リャッカのこと可愛いと思いますよね?」

 「そうだな……。暁の渡り鳥のペット的な存在ってところか?」

 「ニャニャッ。ペットとは何事ニャ! マスコットって言ってほしいものニャ」

 「マスコット、か……」

 含みを持ったような言い方をするウラボスにリャッカはジットリとした視線を向ける。

 「……何が言いたいニャ?」

 「いいや、べつに。いいんじゃないか、マスコットで」

 ウラボスは視線をそらし、フッと息を洩らす。

 「おぉっ、ラグト村が見えてきただよ」

 暁の渡り鳥を先導していたカトムルが前方を指差して声を弾ませる。ウラボスに飛びかかろうとしていたリャッカは動きを止め、視線をうつす。

 小さな村があった。



 ラグト村のほとんどは畑になっており、村人たちは農作業に精を出していた。

「おぉい、帰ったぞぉ!」

 カトムルが大声を出す。

 「おお、カトムルだべ! 生きて帰ってきただべか!!」

 ほどなくやってきた老人の男性が声をかけてくる。

 「おう! 途中で山賊も退治しといたべ!」

 「あんれまぁ! ベドル山の山賊をだべか!?」

 カトムルは得意気に頷く。

 「やったのはあたしたちだけどニャ。この人は頭を抱えてうずくまってただけニャ」

 「まぁまぁ、そこはどうだっていいじゃない。ね?」

 真実を暴露するリャッカをリアーナがなだめる。

 「もしかして、こちらの方々が? 冒険者を連れてきてくれただか!?」

 「んだ! 冒険パーティー暁の渡り鳥の方々だべ!!」

 今度こそ、カトムルは得意気になって頷いた。

 「はじめまして。リアーナといいます」

 「僕はグランザです。よろしくお願いします」

 「賢者のリャッカっていうニャ」

 「ウラボスだ」

 それぞれが名前を名乗る。

 「こんな田舎にようこそおいでくださいましただ。どうか、村の危機を救ってくだせぇ!」

 老人はリアーナの手を取り、救いを求めてくる。

 「…わたしたちに何ができるかはわかりませんが、できる限りのお力にはなるつもりです」

 リアーナの言葉に老人は表情を明るくする。

 「なら、早速で申し訳ねぇが、村長の所へ行ってもらうべ。カトムル、案内するだぞ!」

 「おぅ! 任せるだ! さあ、皆さん、こっちだべ」

 カトムルは再び先頭に立って歩く。リアーナは老人に一礼すると仲間たちと共にカトムルの後についていった。
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