冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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2章 ゴブリンの砦

STORY26 チェンジリング

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 カトムルに案内されてたどり着いた村長の家は、ラグト村の奥に広がる森の手前に建てられていた。

 「いやぁ、遠いところ足を運んでもらって申し訳ないだ」

 村長は一行に茶を出して席につく。

 暁の渡り鳥の面々は先ほどと同じように名乗る。

 「おらがラグト村の村長を務めておりますグラージといいますだ。この度は依頼を引き受けてくださるそうで……」

 深々と頭を下げるグラージ村長。

 「しかし、わたしたちでお力になれるかどうかは…」

 「わかっとります。そんでは、とりあえず実際に見てもらったほうがいいだな。この奥の部屋に孫娘がおりますだ。どうか、見てやってくだせぇ」

 村長の言葉に頷き、暁の渡り鳥たちは奥の部屋へと入る。



 「だれよ、あんたたち! さっさとこの村から出ていきなさいよ!!」

 部屋に入ると、いきなり食器や枕など様々な物が飛んできた。すかさずプレートメイルに身を包んだグランザが立ち塞がる。

 「う…」

 頑丈な鎧を着たサイクロプスには何を投げても意味がないと思い、少女は動きを止めた。

 「今すぐこんな村なんか出ていきましょうよ! 私たちはこんな所で暮らしたくなんかないの!!」

 暁の渡り鳥を追い出すことを早々に諦め、グラージに村を出るように訴える少女。

 「待って。少しだけでもお話ししましょう?」

 リアーナはグランザの脇から出て、少女に歩み寄る。

 「いやよ! おばさんなんか引っ込んでなさいよ!!」

 少女は聞く耳を持たず、手当たり次第に物を投げつけてくる。

 「やれやれ、とりつく島もないな……。しかたない。一度戻ったほうがいいんじゃないか?」

 ウラボスの提案により、一同は居間へと戻る。



 少女がいる部屋の扉を閉める。

 「ねぇ、ウラボス……」

 リャッカやグランザに続こうとしているウラボスにリアーナが小声で囁く。

 「どうした?」

 「あの、ね…。17歳って、おばさんじゃないよね?」

 真剣な顔をして見つめてくるリアーナに、ウラボスは吹き出してしまった。

 「もう!」

 不機嫌そうに頬を膨らませる少女の頭を撫でる。

 「悪い悪い。しかし、あんなのを気にしてたのか? 大丈夫だって。そんなわけないだろ」

 「そう…だよね。うん、やっぱりそうだよね!」

 安心したように笑顔になるリアーナ。

 「何してるニャ?」

 先を歩くリャッカが振り返る。

 「ううん、なんでもないよ」

 リアーナは答えるとウラボスを見る。

 「ありがと、ウラボス。それじゃ、行こ!」

 ニコリと笑いかけてウラボスの手をとり、リャッカたちの後に続く。



 「どうだべか? 孫娘の様子に心当たりはおありだべか?」

 暁の渡り鳥にグラージが期待を込めて訊く。リアーナとグランザは首を横に振る。

 「ウラボスは心当たりはあるかニャ?」

 リャッカがウラボスに訊く。

 「違和感は感じるんだけどなぁ…。それが何なのかが今一つわからないんだよな…」

 ウラボスも難しい表情をする。

 「ニャフフフフフ」

 リャッカが得意気に笑む。

 「どうかしたの?」

 リアーナがリャッカに訊く。

 「あたしには解ったニャ! ズバリ、あの女の子は人間じゃないニャ!!」

 リャッカの衝撃的な回答に一同は絶句する。

 「あの、リャッカ。詳しく話してくれないかい?」

 グランザが掘り下げる。

 「いいニャ。あの娘は妖精が作り出した分身体ニャ」

 「しかし、間違いなくおらの孫娘だべよ?」

 グラージが異を唱える。

 「見た目はそうかもしれないけど、すり代えられてるニャ。チェンジリングって知ってるかニャ?」

 「…フェアリーか!!」

 リャッカの言葉にウラボスが反応し、リャッカは首肯した。

 「どういうこと?」

 リアーナが訊く。グランザとグラージもまだわからない様子である。

 「いいかニャ。チェンジリングっていうのは、フェアリーが人間の子を拐ったとき、身代わりとして分身体とすり代えていくことをいうのニャ」

 「ということは、おらの孫娘や村のほかの子供たちは!?」

 「フェアリーたちに拐われてるとみて間違いないニャ」

 「そ、そんな!?」

 グラージはショックを受け、頭を抱え込んでしまう。

 「それじゃ、拐われた子供たちはどうなるの?」

 「うーん。はっきりとは言えないけど、たぶん無事だと思うニャ。フェアリーも人間に対して比較的友好なのが多いニャ」

 「そういえば、子供たちはこの家の近くの森でよく遊んでるだよ。あそこは昔から妖精が住んでるっていわれてるだ」

 グラージが思い出したように情報を提供する。

 「だったら、森に行ってみるニャ!」

 「そうね。早く村の子供たちを助けてあげなきゃ!」

 リアーナとリャッカはほぼ同時に席を立つ。それに続くようにウラボスとグランザも立ち上がった。

 「そんでは、みなさん。どうか、よろしくお願いしますだ!」

 グラージは今一度深々と頭を下げ、暁の渡り鳥を見送った。
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