冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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2章 ゴブリンの砦

STORY28 ゴブリン砦

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 ゴブリンたちが占拠している砦はそれほど大規模なものではなかった。さらに、門扉や壁は劣化が激しく、既に半壊しているような状態だった。

 「これなら思ったよりも楽に落とせそうですね」

 単眼で望遠鏡をのぞきながらグランザが安堵する。

 「それはあまいニャ。あの中にはどれだけのゴブリンがいるかわからないニャ」

 「意見が合ったな。俺たち4人だけで砦を落とすなら油断はできない」

 リャッカの意見にウラボスも同意を示す。

 「それで、どうやって攻めればいいかな。みんな、何かアイデアはある?」

 リアーナは仲間の意見を求める。

 「正面からまともに突っ込んでいくのは危険ニャ。そこで、あたしは陽動作戦を提案するニャ」

 「具体的にはどうするんだい?」

 リャッカの出した提案をグランザが掘り下げる。

 「まず、ウラボスが単独で騒ぎを起こすニャ。それと同時に、グランザが砦に別方向から攻撃を仕掛けるニャ。ここでも奴らは兵力を割いてくるはずニャ。あとは少しずつ砦からゴブリンを引き離していってほしいニャ。最後に、手薄になった砦にあたしとリアーナが乗り込むニャ。あたしの魔術とリアーナの剣術があればなんとかなるニャ!」

 リアーナが考えついた作戦を説明する。

 「でも、その作戦だとウラボスとグランザの負担が大き過ぎるんじゃない?」

 リアーナが二人を気にかける。

 「そこは大丈夫ニャ!」

 「何か考えがあるんだね…」

 さすがは賢者だとリアーナは感心する。

 「この二人ならそう簡単には死なないニャ!」

 リャッカの答えにリアーナの表情が凍りつく。

 「おいおい、俺たちの扱いが雑過ぎないか?……俺はそれでもかまわないが、グランザは回復魔術が使えないんだぞ」

 「ポーションを幾つか持ってるはずだから、それで上手く乗り切るニャ!」

 「リャッカちゃん……」

 リアーナが肩を落とす。

 「僕なら大丈夫です。心配してくださってありがとうございます。リャッカだって僕とウラボスさんを信頼してくれてるから、この作戦を提案したんだと思います。だったら、僕はそれに応えたいです」

 グランザの固い決意に異を唱える者はいなかった。

 「それじゃ、今回はリャッカちゃんの作戦でいきましょう。でも、ウラボスもグランザも危険を感じたらすぐに撤退してね!」

 「はい」

 視線を向けてくるリアーナに、ウラボスは無言で頷き、グランザは短く答える。

 「じゃあ、まずは俺が騒ぎを起こすか。南の正門からリアーナたちが乗り込むとして、俺は反対の北側を攻めるとしよう」

 「僕は東側から攻めますね。そのあとはゴブリンを引き付けながら少しずつ砦から離れるようにします」

 「お願い。二人とも、気をつけてね!」

 「期待してるニャ!」

 リアーナとリャッカに見送られ、ウラボスとグランザは作戦行動を開始するため、それぞれの持ち場へと向かった。
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