冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

３章 淫魔に憑かれた村

STORY53 ルアン＆獣型モンスター戦④

　おもいきり地を蹴ったリアーナは瞬く間にルアンの背後まで移動する。

　「なん…だと！？」

　先刻までとは別人のような動きにルアンは驚嘆し、回避行動が遅れる。

　「はぁぁっ！！」

　リアーナの怒涛の連続突きがルアンに繰り出された。

　「ぬぅぅぅぅぅぅっ！！」

　飛び退くまでのほんのわずかな間に頬・首筋・両肩・右脇腹・左腰・両太ももなどを斬られて流血する。もしも防御魔術プロテクトを無詠唱発動させていなければ決着がついていたことだろう。

　「ひぃっ……」

　想像を絶する強さにルアンの表情が強張る。

　「く…く……く……くそっ！……真空刃魔術ウインド・カッター！！！」

　ルアンは魔力を自らの限界まで高め、無数の真空の刃を放つ。

　リアーナは静かにレイピアを構える。精神を集中させた。

　リアーナが動く。凄まじい速さでレイピアを振るい、迫ってきた真空の刃を斬り、またはかわす。その動きは歴戦の戦士であるグランザですら目で追いきれていない。

　（なんなんだ！？）

　ルアンは想定外の事態に慌て、上空へ避難しようと翼に広げる。

　「むごぁっ！！」

　リアーナの右拳がルアンのみぞおちにめり込む。ルアンは前のめりに体勢を崩す。そこにリアーナの強烈な踵落としがお見舞いされ、地元に激しく叩きつけられてしまう。

　「く……そ！…」

　ルアンは残された力を振り絞り、リアーナから離れると同時に魔力を練り上げた。

　「氷柱豪雨魔術アイシクル・レイン！！！」

　両手をかざし、攻撃魔術を詠唱発動させる。途端に天から氷柱つららが降り注いだ。だが、リアーナは一瞬のうちにルアンの視界から完全に消えた。ターゲットを失った氷柱つららは地面に激突した砕け散り、消滅する。

　（なんなんだ！　いったい何がどうなっているというんだ！？）

　ルアンは激しく狼狽している。目の前の光景をどうしても受け入れることができない。

　（どこだ！？　どこに消えた！？）

　リアーナの姿を探すルアン。

　「なっ！？」

　見つけたルアンは身構えた。リアーナはレイピアの切っ先をルアンに向けて構えている。

　「小娘が！　調子にのるな！！　雷撃矢魔術ライトニング・アロー！！！」

　地を蹴り、一直線に突き進んでくるリアーナにルアンは攻撃魔術を発動させて応戦する。無数の雷の矢が次々にリアーナを捉える。しかし、リアーナの勢いは全く落ちない。

　「これで終わりよ！！！」

　リアーナの渾身の突きはルアンの頭部を貫き、絶命へと誘った。

　ドサッ

　レイピアが引き抜かれると、ルアンはその場に崩れ落ち、動かなくなった。