冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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3章 淫魔に憑かれた村

STORY54 オールラウンダー

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 インキュバスのルアンを倒したリアーナは激しい脱力感と倦怠感から両膝をつく。

 「リアーナさん!?」

 「大丈夫かニャ!?」

 グランザとリャッカが駆け寄る。

 「うん…わたしなら大丈夫……。二人とも、無事だったのね……よかった……」

 リアーナは肩で息をしながら答える。

 「とにかく休むニャ!……グランザ、すぐに教会の中へ運ぶニャ!」

 「うん!!」

 グランザはぐったりとしているリアーナを抱き抱え教会の前まで行って足を止める。

 「どうしよう……。僕の体格じゃここまでしか行けないよ」

 「ありがと、グランザ。もう、本当に大丈夫だから降ろして…」

 リアーナは笑顔をつくるが辛そうである。しかし、ケットシーのリャッカには人間を背負って移動する体力や腕力はない。

 「ここからは俺が代わろう」

 背後からから聞こえた声に3人は視線を向ける。

 「よっ!」

 ウラボスは左手を軽く挙げる。

 「ウラボス……」

 無事な姿を見て安堵して表情を見せるリアーナをウラボスはグランザから引き継ぐ。



 教会の一室。ベッドの上に寝かされたリアーナにリャッカが治癒魔術ヒールを詠唱する。

 「どうニャ?」

 「少し楽になったかな……」

 答えるリアーナの様子からは治癒魔術ヒールの効果がほとんどなかったことを知る。

 「いったい、どうすればいいニャ!?」

 「ウラボスさん、リアーナさんの症状に心当たりはありませんか?……」

 リャッカが思い詰めたようにウラボスを見つめ、窓の外からはグランザが訊く。

 「……まずは、何があったのか。こうなる前のことをできるだけ詳しく話してもらおうか」

 言いながら、ウラボスはリアーナにそっと毛布をかける。



 リアーナ、リャッカ、グランザはルアンとの戦いの様子を詳細に話した。それを聞き終えたウラボスは沈黙し、何かを考え込んでいる。

 「どうしたんですか?」

 「何か知ってるのかニャ!?」

 「……ウラボス?……」

 3人はウラボスの言葉を待つ。

 「……結果から言えば、心配することはない。ゆっくりと休養すればすぐによくなる」

 ウラボスの見解に3人は胸を撫で下ろす。

 「リアーナさんに何があったんですか?」

 窓の外からグランザが質問する。

 「……おそらくだが…かなり特殊な魔術を発動させてしまったんだろうな。魔術を凌駕した魔術……超魔術をな」

 「……超魔術?…でも、わたし、普通の魔術すらまだ……」

 リアーナはウラボスに修行してもらっていたが魔術は未修得の状態であった。

 「それはどんな魔術ニャ?」

 リャッカが興味深げに訊く。やはり、魔術を得意分野とする賢者としては気になるのだろう。

 「聞いたところ、リアーナが発動させた超魔術は全能力強化超魔術オールラウンドだと思う」

 「全能力強化超魔術オールラウンド? 聞いたこともないニャ」

 リャッカは自らの記憶を探るが、どの書物にもそんな名前の魔術はおろか超魔術などにふれられていた物は記憶にない。

 「そりゃそうだろ。超魔術は現在ではだれも発動することができない、失なわれた魔術だからな」

 「ウラボスも超魔術を使えるニャ?」

 「……ああ……」

 「ウラボスはどんな超魔術を使えるのニャ?」

 リャッカはますます興味を持ったようだ。しかし、ウラボスはそれには答えるつもりはなかった。

 「それはまた機会があれば、な。言えるのは、俺でも全能力強化超魔術オールラウンドは修得していない」

 「ウラボスでも修得できないような魔術を、どうしてわたしなんかが?」

 ベッドで横になったまま、リアーナが訊く。

 「超魔術は才能や努力だけでは修得できない。詳細ははっきりとはわかっていないが……。今回のみたいに何らかのきっかけで発動するケースが多い魔術だ。ちなみに、全能力強化超魔術オールラウンドを発動した者をオールラウンダーと呼称する」

 「……超魔術……あたしも使ってみたいニャ……」

 リャッカはリアーナに羨望の眼差しを向ける。

 「とにかく、今夜はぐっすり休めば明日にはかなり楽になってるはずだ」

 「うん……おやす…み……なさ…い……」

 ウラボスが部屋の明かりを消すと、リアーナはすぐに眠りについた。
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