冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

３章 淫魔に憑かれた村

STORY57 伝説級の素材アイテム

　「悪い、待たせてしまったな」

　タウカラの町の冒険者用品店の前で待っていたリアーナたちに声をかけるウラボス。

　「そんなことはいいニャ。それで、資金は調達できたかニャ？」

　リャッカが直球的に訊く。

　「リャッカちゃん…」

　「これが重要ニャ。みんなで旅を続けられるかがかかってるニャ！」

　リャッカはいたって真剣な目でウラボスを見つめる。

　「心配するなって！　ほれ」

　ウラボスはリャッカにシークレット・パレスから持ち出した素材アイテムを渡す。

　「ニャニャニャニャニャニャ～！！！？」

　リャッカは驚いて腰を抜かさんばかりである。

　「どうしたの！？」

　驚いたリアーナがリャッカに訊く。

　「これ……本物かニャ？……」

　そんなことはおかまいなしに、ウラボスから視線をそらすことができないリャッカが訊く。その声は微かに震えている。

　「当たり前だろ？」

　当然だと言わんばかりの顔でリャッカを見るウラボス。

　「これってそんなにすごい品物なのかい？」

　リャッカが持っている素材アイテムを見ながらグランザが訊く。

　「す…すごいなんてもんじゃないニャ……。と、とにかくすぐに店に入るニャ！」

　一行は冒険者用品店に入ることにした。

◎

　「いらっしゃい。何か欲しい物でも？　それとも売りたい物でもあるのかい？」

　「そ…素材アイテムを売りたいニャ」

　冒険者用品店の店主にリャッカが未だに震える声で伝える。

　「素材アイテムをねぇ。もちろんかまわないが、最近は質の悪い素材アイテムを持ち込んでくる冒険者が多くてね。あんたらのは大丈夫なんだろうね？　わしはこれでもこの道５０年の鑑定士じゃからな。粗悪な物なら買い取らんからそのつもりでな！」

　鑑定士を名乗る店主の目がギラリと光る。

　「これニャ」

　リャッカがカウンターの上にウラボスが持ち帰った品物を置く。

　「どれどれ……………………………………」

　店主は絶句した。

◎

　「いやぁ、暁の渡り鳥の皆様は本当に素晴らしい品物をお持ちですなぁ！　……おぉ、失礼いたしました。わたくしとしたことがお茶もお出しせずにご無礼をいたしました。少々、お待ちくださいませ、今すぐお持ちいたしますので！」

　そう言い置くと、鑑定を終えた店主は半ば転がるように店の奥へと入っていく。

　「なんなんですか、これ？」

　グランザが改めて質問する。

　「ドラゴンの牙だ」

　「……ドラゴンの牙なんて伝説級の素材アイテムだニャ……。１つで１億コルドくらいだニャ」

　「い、１億コルド！？」

　リアーナとグランザが同時に叫ぶ。

　「ウラボス、お願いがあるニャ！」

　「なんだよ、改まって」

　「この交渉はあたしに任せてほしいニャ！　リアーナやグランザは論外、ウラボスだって随分値切られそうニャ！　あたしがやるニャ！」

　やる気を漲らせた本気モードのリャッカがウラボスに熱い視線を送る。

　「わ、わかったよ…」

　気圧される形で承諾するウラボス。

　「どうも、お待たせいたしました！」

　店主がリアーナたちに茶を出す。

　「それで、こちらの品物の買い取り金額ですが……」

　本題をきりだすとリャッカは店主の前に腰を落ち着ける。こうして、リャッカの交渉戦が幕を開けた。