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5章 幸運の獣
STORY96 初めての魔術!
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「えっ? 明日の早朝から仕事なの?」
ネネカが用意してくれた夕食を摂りながら、詳細は隠したままに伝える。朝、目を覚ましたら宿泊客がいなくなっていては慌てるだろうとの配慮からだ。
「そう……。冒険者ってのも大変だね。それで、朝食はどうしようか?」
「あっ、それなら不要です。場合によっては、帰ってくるのは日付が変わっちゃうかも…」
「そっか……。お客さんのことをあれこれ詮索しないけど、みなさん、どうかお気をつけください!」
ネネカが真剣な表情で暁の渡り鳥のメンバーの顔を順番に見る。
「はい! 必ずみんな無事に戻ってきます!」
リアーナは力強く頷いた。
◎
夜、ニギヤカ亭の2階廊下の窓から月を眺めるウラボスを見つけたリアーナが近寄ってくる。
「…今夜は特訓も休みだと言ったはずだが?」
「うん…」
ウラボスの言葉に小さな声で答える。
「とはいえ、眠れないのもわかる。明日の戦いは今までとは比較にならないほど危険で激しいものになる。冒険者ギルドからの100名、街の警備隊からの騎士・戦士・魔術師が合わせて約1500名。こちらの兵力が約1600なのに対してオークは数万……。数の上では圧倒的に不利な状況と言わざるを得ないからな」
「うん……。わたし、みんなの足手まといにならないか、すごく不安なの……」
リアーナは自らの体を抱きしめながら呟くように言う。
「……本来なら、こんな時こそ少しでも休んでおくべきなんだがしかたない。少しだけ修行をしておくか?」
「うん!」
ウラボスに訊かれ、リアーナは即応した。
◎
ニギヤカ亭の表に出てきたウラボスとリアーナは魔術の訓練中である。
「そうだ…掌に魔力の流れを集めるイメージだ」
ウラボスは、左手をかざすリアーナにアドバイスする。
「あっ」
リアーナが小さく声を漏らす。左の掌に暖かな何かが集まる感覚がしたからだ。
「いいぞ…その調子だ。今、リアーナが感じ取っているのが魔力だ。今度はそれを放出するんだ。やり方を説明するから落ち着いて実行すればいい」
「…うん……」
「まずはどんな魔術を放つのかイメージをしっかりと固めるんだ」
「えっと…それじゃ、光線魔術にする」
リアーナの答えにウラボスが頷く。
「わかった。だったら、左手に集めた魔力に意識を集中しながら光を強くイメージするんだ」
「うん…やってみる……」
リアーナは左手に意識を集中したままで強い輝きを放つ光をイメージする。すると、左手に集まった魔力が輝きだした。
「それでいい。あとはその光を俺に向けて勢いよく撃ち出すイメージをしろ」
「でも…」
「大丈夫だ」
心配するリアーナにウラボスは短く答える。
「わかった! 気をつけてね!」
リアーナは集まった光を光線として撃ち出すイメージを固める。
バシュッ!
リアーナの左手に集まった光は一筋の光線となってウラボス目掛けて飛んでいく。
ウラボスは左手でその光線を受け止める。
「できた……」
自分が魔術を使えたことが信じられず呆然としているリアーナ。
「やったじゃないか! 今の光線魔術の威力なら実戦でも使えるレベルだ。あとは反復練習してより早く、より正確に撃てるようになるのが次の課題だな!」
「はい!」
ウラボスに誉められ、ようやく実感がわいてきたリアーナは笑顔で返事する。
「ちなみに、さっきのは単発タイプだったが、拡散タイプもまた練習していくとしよう。同じ量の魔力を使用した場合、単発タイプに比べると拡散タイプは威力が落ちるが複数の敵を同時に攻撃できるメリットもある。当然だが、数を増やせば増やすほどに1発の威力は落ちる。同様に、例えば防御魔術なんかも効果を変えられるタイプの魔術だ」
「防御魔術が?」
「ああ。具体的にはシールドとして発動すれば特定方向からの攻撃に対して強固な防御が可能だ。バリアとして発動すれば全方位からの攻撃に対して有効だがシールドに比べると強度は落ちる。フィルムとして発動した場合は防御力を犠牲にする代わりに自由に動き回ることができるといった具合だな。まあ、ゆっくり覚えていけばいいさ」
「うん、がんばるね!」
「さて、今日はあと少しだけ光線魔術の練習をして終わるか!」
「うん!」
この後、数回の練習を繰り返し、ウラボスによるリアーナの修行は終了した。
~5章 幸運の獣 完~
ネネカが用意してくれた夕食を摂りながら、詳細は隠したままに伝える。朝、目を覚ましたら宿泊客がいなくなっていては慌てるだろうとの配慮からだ。
「そう……。冒険者ってのも大変だね。それで、朝食はどうしようか?」
「あっ、それなら不要です。場合によっては、帰ってくるのは日付が変わっちゃうかも…」
「そっか……。お客さんのことをあれこれ詮索しないけど、みなさん、どうかお気をつけください!」
ネネカが真剣な表情で暁の渡り鳥のメンバーの顔を順番に見る。
「はい! 必ずみんな無事に戻ってきます!」
リアーナは力強く頷いた。
◎
夜、ニギヤカ亭の2階廊下の窓から月を眺めるウラボスを見つけたリアーナが近寄ってくる。
「…今夜は特訓も休みだと言ったはずだが?」
「うん…」
ウラボスの言葉に小さな声で答える。
「とはいえ、眠れないのもわかる。明日の戦いは今までとは比較にならないほど危険で激しいものになる。冒険者ギルドからの100名、街の警備隊からの騎士・戦士・魔術師が合わせて約1500名。こちらの兵力が約1600なのに対してオークは数万……。数の上では圧倒的に不利な状況と言わざるを得ないからな」
「うん……。わたし、みんなの足手まといにならないか、すごく不安なの……」
リアーナは自らの体を抱きしめながら呟くように言う。
「……本来なら、こんな時こそ少しでも休んでおくべきなんだがしかたない。少しだけ修行をしておくか?」
「うん!」
ウラボスに訊かれ、リアーナは即応した。
◎
ニギヤカ亭の表に出てきたウラボスとリアーナは魔術の訓練中である。
「そうだ…掌に魔力の流れを集めるイメージだ」
ウラボスは、左手をかざすリアーナにアドバイスする。
「あっ」
リアーナが小さく声を漏らす。左の掌に暖かな何かが集まる感覚がしたからだ。
「いいぞ…その調子だ。今、リアーナが感じ取っているのが魔力だ。今度はそれを放出するんだ。やり方を説明するから落ち着いて実行すればいい」
「…うん……」
「まずはどんな魔術を放つのかイメージをしっかりと固めるんだ」
「えっと…それじゃ、光線魔術にする」
リアーナの答えにウラボスが頷く。
「わかった。だったら、左手に集めた魔力に意識を集中しながら光を強くイメージするんだ」
「うん…やってみる……」
リアーナは左手に意識を集中したままで強い輝きを放つ光をイメージする。すると、左手に集まった魔力が輝きだした。
「それでいい。あとはその光を俺に向けて勢いよく撃ち出すイメージをしろ」
「でも…」
「大丈夫だ」
心配するリアーナにウラボスは短く答える。
「わかった! 気をつけてね!」
リアーナは集まった光を光線として撃ち出すイメージを固める。
バシュッ!
リアーナの左手に集まった光は一筋の光線となってウラボス目掛けて飛んでいく。
ウラボスは左手でその光線を受け止める。
「できた……」
自分が魔術を使えたことが信じられず呆然としているリアーナ。
「やったじゃないか! 今の光線魔術の威力なら実戦でも使えるレベルだ。あとは反復練習してより早く、より正確に撃てるようになるのが次の課題だな!」
「はい!」
ウラボスに誉められ、ようやく実感がわいてきたリアーナは笑顔で返事する。
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「防御魔術が?」
「ああ。具体的にはシールドとして発動すれば特定方向からの攻撃に対して強固な防御が可能だ。バリアとして発動すれば全方位からの攻撃に対して有効だがシールドに比べると強度は落ちる。フィルムとして発動した場合は防御力を犠牲にする代わりに自由に動き回ることができるといった具合だな。まあ、ゆっくり覚えていけばいいさ」
「うん、がんばるね!」
「さて、今日はあと少しだけ光線魔術の練習をして終わるか!」
「うん!」
この後、数回の練習を繰り返し、ウラボスによるリアーナの修行は終了した。
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