冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

６章 オーク大戦

STORY105 ウォグ戦①

　「おら、さっさとかかってこいよ。人間ども！」

　ウォグはベイズたちに挑発的な視線を送っている。

　「安い挑発だな、少年」

　ベイズは気にする様子もなく言った。

　「へっ、だったら、こっちからいかせてもらうぜ！」

　「かはっ！」

　ウォグは一瞬にしてニーネの前まで移動し、ボディーブローをくらわし、さらに回し蹴りを追撃としてくり出した。

　蹴り飛ばされたニーネの身体は草原に何度かバウンドして、ようやく停止した。

　「ニーネ！」

　サナは叫び、ニーネに駆け寄ろうと走り出した。

　「させるかよ！」

　ウォグはサナをターゲットに定め、握りしめた右拳を突き出す。

　ガッ！

　思わず目を閉じてしまったサナが薄目を開ける。

　「早く、ニーネさんの所へ！」

　盾でウォグの拳を受け止めたグランザがサナを急がせる。

　「は、はい！」

　サナは再び足を動かす。

　「ちっ、デカブツが！」

　ウォグは忌々しげにグランザを睨むが攻撃はせず、後方へ飛び退いて間合いをあける。

　「はぁっ！」

　リアーナが連続突きをくり出すが、ウォグは全てかわし、右拳でリアーナの頬を殴る。

　リアーナは強烈なカウンターを受けて倒れた。ウォグはそのリアーナの顔面に向けて拳を構える。

　「水圧矢魔術ウォーター・アロー！」

　リャッカは攻撃魔術を詠唱発動させ、圧縮された水の矢をウォグに向けて放つ。

　水の矢はウォグの肩先をかすめた。痛みがはしり、血が流れる。

　「くそ猫ぉ！」

　ウォグはリャッカをギロリと睨む。リャッカは背筋に悪寒を感じながらもそれを悟られまいと平静を装う。

　「どこを見ている？」

　ベイズの声が聞こえたかと思った瞬間、ウォグは殺気を感じて身構えた。

　「のわっ！」

　ベイズが長剣による斬撃を連続で繰り出し、ウォグは短く声をあげる。

　（このおっさん！）

　ウォグは飛び退き、前傾姿勢をとってベイズの隙を探る。

　ベイズがウォグの動きを警戒して２、３歩後退する。

　「ぜやっ！」

　ウォグは一気に間合いを詰める。そこをベイズは大剣を振るってカウンターを仕掛ける。

　ウォグは跳躍し、後方宙返りの華麗な動きでベイズのカウンターをかわす。

　「もらったぁ！」

　ウォグはベイズの懐に飛び込む。

　（くっ！）

　一方、ベイズはどうにかしてウォグとの間合いをあけようと動く。しかし、素早さではウォグにかなうはずがなかった。

　「はぁぁぁぁぁっ！！」

　ギラリとした鋭い眼光を放ち、ウォグは両手足を使っての情け容赦ない怒涛の連続攻撃をベイズに叩き込む。

　「ぐぬぅっ！」

　低く声を漏らすベイズ。

　（防御魔術プロテクトをかけているというのに、これだけのダメージを受けてしまうとは……）

　ベイズは驚愕していた。目の前の少年は素手で攻撃してきているというのに、防御魔術プロテクトで防ぎきれないほどの打撃力を持っている。

　「このぉ！」

　サナの治癒魔術ヒールにより復帰したニーネがウォグの背後からロングソードで斬りかかる。

　ヒュンッ

　ウォグはしゃがんでロングソードをかわす。

　「しつけぇんだよ！」

　ニーネの攻撃をかわしたウォグはすかさず反撃にでようと身構える。

　「くそっ！」

　ウォグは反撃することができなかった。グランザの槍の穂先がウォグの頬をかすめる。

　ウォグは一度仕切り直すためにグランザたちから離れた。