冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

６章 オーク大戦

STORY106 ウォグ戦②

　（あのサイクロプスが厄介だな…。今のままのオレの打撃じゃ、さすがにあの鎧をどうにかすることは無理だ。ここは本気まじになるか！）

　ウォグは自らの闘争本能を高める。

　（あの感じはまさか狂戦士バーサーカー！？）

　ウォグの異変に気付いたグランザは身構える。

　「うぉぉぉぉぉぉぉっ！！」

　ウォグが咆哮ほうこうする。

　「なんだ！？」

　ベイズは対峙する少年の異変に目を見張る。筋骨隆々となった肉体は黒い体毛に覆われ、四肢の爪は鋭くなり、口には牙が生え揃っていた。

　「人狼ニャ！」

　リャッカが声をあげる。

　「リャッカちゃん、人狼って？」

　「人間と獣の中間に獣人族がいるのは知ってるかニャ？」

　「だが、彼らは滅んだということだったが？」

　ベイズの言葉にリャッカは頷く。

　「たしかに一般的にはそう言われているニャ。でも、一部の獣人族は生き残っているとする説もあるニャ。そして、人狼は獣人族の中でも他の獣人族とは共に行動することは滅多にないニャ。それだけに戦闘能力は並の獣人族より遥かに高いニャ」

　「よく知ってるじゃねぇか、猫」

　リャッカの説明を聞いていたウォグが言う。

　「オレたち人狼は人間の姿でいることもできるが、獣化することで戦闘力は格段に上がるんだぜ。こんな風にな！」

　言い終わるが早いか、グランザの前まで瞬時に移動してウォグは鋭い爪で攻撃にでる。

　「うぁぁぁぁぁぁぁっ！！」

　グランザの身体を包むプレート・メイルはあっさりと引き裂かれ、鮮血が流れ出る。

　「「グランザ！？」」

　リアーナとリャッカが叫ぶ。

　「野郎！」

　ベイズが長剣を振るう。が、ウォグはしゃがんでかわす。

　「あまい！」

　ベイズは右手の大剣をしゃがんでいるウォグに向かって振り下ろす。

　「あめぇのはそっちだろ！」

　ウォグは地面を蹴り、大剣をかわすと同時にベイズの脇をすり抜け、太腿ふとももを爪で引き裂く。

　「ぬぐぅっ！！」

　ウォグは痛みに片膝をつく。

　「おらおら！」

　その背中にウォグの蹴りがヒットし、ベイズは蹴り飛ばされてしまう。

　「ベイズさん！」

　ニーネとサナがベイズの元に駆け寄る。

　（強い！　このままだとみんな……）

　リアーナはウォグの桁外れの強さに危機感を募らせる。

　「火炎矢魔術フレイム・アロー！！」

　リャッカは魔術を詠唱発動させて無数の炎の矢を撃ち出す。

　「ふん…」

　ベイズは炎の矢を全てかわし、魔術を撃ち終えた直後のリャッカを爪で引っ掻く。

　「ギニャッ！」

　左肩を引っ掻かれたリャッカは短く叫ぶ。

　「リャッカちゃん！」

　リアーナは叫ぶ。リャッカは痛みを堪えて立ち上がる。

　「てめぇらごときにこれ以上時間をかけてられねぇ。死んでもらうぜ！」

　ウォグはさらに気合いを入れることで戦闘力を強化した。

　リアーナの腹に蹴りを入れ、リャッカの背中を引っ掻き、ようやく立ち上がったベイズの胸を引っ掻き、サナとニーネを蹴り飛ばし、グランザには背後から連続で引っ掻いた。

　「くっ……これならどうニャ！　大爆発魔術エクスプロージョン！！」

　リャッカの攻撃魔術が発動する。瞬間、ウォグの周辺に急速に魔力が集まり大爆発を起こす。

　「ぐっ！」

　ウォグは吹き飛ばされながらも空中で体勢を立て直して着地する。

　「あの猫が！」

　ウォグはリャッカに向けてかけ出す。その行く手を盾を構えたグランザが立ちはだかる。

　（まだ動けるのか…。なかなかしぶといやつめ）

　ウォグがグランザの単眼を狙って跳躍する。

　（なに！？）

　次の瞬間、姿勢を低くしたグランザの背後から飛び出したベイズが長剣を一閃した。

　咄嗟にグランザを足場にしてさらに高く跳ぶ。強く蹴りつけられたグランザは草原に叩きつけられた。

　間一髪のところでベイズの攻撃を回避する。さらにベイズを飛び越え様に身体を回転させ、ベイズの頬に回し蹴りを入れる。

　「ぐっ！」

　短い呻き声をあげ、ベイズは蹴り飛ばされて草原に叩きつけられる。

　「「やぁぁぁ！」」

　リアーナとニーネが着地した直後のウォグに左右から同時に襲いかかる。

　（くそったれ、次から次へと！）

　ウォグは苛立ちながらも二人の攻撃を回避し、ニーネの背後に回り込んで背中を引っ掻く。

　「はっ！」

　リアーナは連続突きを放つが、ウォグは後方宙返りをしてかわし、リアーナの背後に着地する。

　リアーナは振り返り様にレイピアを薙ぐ。

　ヒュンッ

　リアーナの攻撃を予測していたウォグはレイピアをしゃがんで避け、がら空きとなった腹部に強烈な蹴りを叩き込んだ。

　「「水圧矢魔術ウォーター・アロー！」」

　リャッカとサナが魔術を同時に詠唱発動させる。

　「ぐぉぉぉぉっ……」

　ウォグは圧縮された水の矢を全身に受けつつも反撃にでる。

　リャッカとサナは掌底しょうていをくらって吹き飛ばされ、草原に全身を打ち付ける。

　「まぁ、ちっとは頑張ったがここまでのようだな」

　ウォグは倒れている５人に対して勝ち誇ったように言った。