141 / 207
8章 王都レビオルム
STORY135 謁見
しおりを挟む
受付を済ませた暁の渡り鳥はすぐに国王ラグーナとの謁見となった。
「そなたたちがベイズからの手紙を持参したという冒険パーティーだな? 面をあげるがよい」
ラグーナは静かだが威厳のある声で、跪いている暁の渡り鳥に話しかける。
リアーナ、リャッカ、グランザが緊張しつつも顔をあげる。
「ふむ。ベイズからの手紙によれば、そなたたちは相当な腕利きの冒険者たちのようだな」
「恐れ入ります」
一礼しつつ答えるリアーナ。
「それで、ルチヌムの東に位置する森にある洞窟とそこを抜けた先にある広大な土地を人狼族の領地として認めてほしいとのことだが?」
「はい。ぜひともお願いします」
ラグーナは口元に手を当てて思案する。
「国王陛下、よろしいでしょうか?」
側に控えていた近衛騎士長がラグーナに発言の許可を求める。
「ヴァズか。申してみよ」
「はっ。その人狼族に領地を与えるべきではないと思われます」
「そんな!?」
近衛騎士長ヴァズの進言に対して、ラグーナより早くリアーナが声をあげる。
「現在のルチヌムが作られている場所は元々は人狼族の土地だったんです! それを人間が強引に奪ってしまったことが原因で、後に数万のオークと大勢の冒険者が犠牲になる大規模な戦いに発展してしまったんです!」
リアーナが猛反論する。
「たしかに、君の言うとおりだ。しかし、考えてもみたまえ。仮に、その人狼族に領地を与えたとしよう。人狼族はその地に仲間を集めて集落をつくるだろう。そして、時の流れとともにその集落はより大規模なものとなり、与えられた領地では手狭になってくる。ならば、どうするか? 答えは簡単だ。人狼族どもは人間の領土を狙って襲撃してくるのだ。そのころには、人狼族どもは相当な戦力となっているはずなのだ」
「彼らはそんなことしません!」
「ほぉ。なぜ、そう言い切れるのかね?」
「それは……彼らと会って、戦って、言葉を交わしたからです。彼らは決して悪ではありません!」
「では、訊こう。人狼族が再び我々に牙をむいてきた時、君たちは責任をとれるのかね?」
近衛騎士長ヴァズに問われて口ごもるリアーナ。その表情からは悔しさを感じ取れる。
「なるほど。あんたの言うことはもっともだな。だが、人狼族が人間の敵となるとする根拠はあるのか?」
ウラボスの発言にヴァズは肩をすくめる。
「そんなことか。根拠も何も実際にオークを使って騒動をおこしたではないか。そのことが何よりの証拠ではないかね?」
「だが、あいつらはそれが間違いだったと気づいている。今、あいつらと友好関係を結ぶことができれば、将来的にはこの国にとって大きな利となるかもしれないだろう?」
互いに一歩も引かず、視線をぶつけ合うウラボスとヴァズ。
「ふぅむ。たしかに、ウラボスの言い分もヴァズの言い分ももっともじゃな。手紙によれば、ベイズもウラボスと同じ意見のようだ。わしは人狼族に領地を与えようと思う。ただし、人狼族の領地には頻繁に使者を遣わし、その動向には注意を払うものとする。ヴァズよ、それでかまわぬな?」
「はっ……」
ヴァズはしぶしぶながら引き下がった。
「そなたたちがベイズからの手紙を持参したという冒険パーティーだな? 面をあげるがよい」
ラグーナは静かだが威厳のある声で、跪いている暁の渡り鳥に話しかける。
リアーナ、リャッカ、グランザが緊張しつつも顔をあげる。
「ふむ。ベイズからの手紙によれば、そなたたちは相当な腕利きの冒険者たちのようだな」
「恐れ入ります」
一礼しつつ答えるリアーナ。
「それで、ルチヌムの東に位置する森にある洞窟とそこを抜けた先にある広大な土地を人狼族の領地として認めてほしいとのことだが?」
「はい。ぜひともお願いします」
ラグーナは口元に手を当てて思案する。
「国王陛下、よろしいでしょうか?」
側に控えていた近衛騎士長がラグーナに発言の許可を求める。
「ヴァズか。申してみよ」
「はっ。その人狼族に領地を与えるべきではないと思われます」
「そんな!?」
近衛騎士長ヴァズの進言に対して、ラグーナより早くリアーナが声をあげる。
「現在のルチヌムが作られている場所は元々は人狼族の土地だったんです! それを人間が強引に奪ってしまったことが原因で、後に数万のオークと大勢の冒険者が犠牲になる大規模な戦いに発展してしまったんです!」
リアーナが猛反論する。
「たしかに、君の言うとおりだ。しかし、考えてもみたまえ。仮に、その人狼族に領地を与えたとしよう。人狼族はその地に仲間を集めて集落をつくるだろう。そして、時の流れとともにその集落はより大規模なものとなり、与えられた領地では手狭になってくる。ならば、どうするか? 答えは簡単だ。人狼族どもは人間の領土を狙って襲撃してくるのだ。そのころには、人狼族どもは相当な戦力となっているはずなのだ」
「彼らはそんなことしません!」
「ほぉ。なぜ、そう言い切れるのかね?」
「それは……彼らと会って、戦って、言葉を交わしたからです。彼らは決して悪ではありません!」
「では、訊こう。人狼族が再び我々に牙をむいてきた時、君たちは責任をとれるのかね?」
近衛騎士長ヴァズに問われて口ごもるリアーナ。その表情からは悔しさを感じ取れる。
「なるほど。あんたの言うことはもっともだな。だが、人狼族が人間の敵となるとする根拠はあるのか?」
ウラボスの発言にヴァズは肩をすくめる。
「そんなことか。根拠も何も実際にオークを使って騒動をおこしたではないか。そのことが何よりの証拠ではないかね?」
「だが、あいつらはそれが間違いだったと気づいている。今、あいつらと友好関係を結ぶことができれば、将来的にはこの国にとって大きな利となるかもしれないだろう?」
互いに一歩も引かず、視線をぶつけ合うウラボスとヴァズ。
「ふぅむ。たしかに、ウラボスの言い分もヴァズの言い分ももっともじゃな。手紙によれば、ベイズもウラボスと同じ意見のようだ。わしは人狼族に領地を与えようと思う。ただし、人狼族の領地には頻繁に使者を遣わし、その動向には注意を払うものとする。ヴァズよ、それでかまわぬな?」
「はっ……」
ヴァズはしぶしぶながら引き下がった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転
小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。
人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。
防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。
どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる