冒険パーティー【暁の渡り鳥】の村人は最強です

美山 鳥

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11章 タレク島の決戦!!

STORY177 アリムルの思いとグランザの思い

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 「グランザ……」

 神殿の奥。祭壇の間にいたアリムルはやってきた一行の中に懐かしい顔を見つけ、その名を呟く。

 「アリムル様、ご無事だったんですね!? よかった……」

 グランザが心から安堵したように胸を撫で下ろす。

 「無事だったというより、アリムル自身がジョアファルアの手先だったんじゃないか?」

 ウラボスの言葉にグランザが驚愕の表情をする。

 「何を言ってるんですか!? そんなわけありませんよ! だって、僕はこの島の出身で、アリムル様のお側に仕えてきました。でも、ジョアファルアなんて名前は聞いたことありません!」

 猛反論するグランザ。しかし、ウラボスは疑いの眼差しをアリムルに向けたままだ。

 「どうなんだ、アリムル?」

 「真なる支配者……」

 アリムルはウラボスを見据える。

 「嘘、ですよね?」

 グランザが懇願するような瞳をアリムルに向ける。

 「たしかにジョアファルア様はこの奥でおられる」

 アリムルが答えつつもグランザと視線を合わせようとしない。

 「なぜ……ですか!?……」

 信じられないといった表情でアリムルを見つめるグランザ。重い沈黙がおとずれる。

 「……あたしはね、魔族が差別的な扱いを受けてるこの世界を変えたいのさ。それには思い上がった人間どもに鉄槌てっついを下さなければならないのさ」

 「ジョアファルアは人間だけじゃなく、世界を滅ぼそうとしてるんですよ!?」

 グランザがアリムルに詰め寄る。

 「そんなことはない。ジョアファルア様は、世界中の人間たちに裁きを下し、その後、平和な世界を築くと約束してくださったんだ」

 アリムルはグランザの言葉を信じようとはしない。

 「僕はレビオルムで見ました。ジョアファルアの配下のバゼルという男が使役したアンデッドが街を蹂躙じゅうりんする光景を! 犠牲になったのは人間だけじゃありません。命ある者なら見境なしに襲われて、とても、とても残酷で恐ろしい光景でした……」

 「それだけじゃねぇぜ。レビオルムの事件で魔族の親子が襲われている。両親は息子を遺して死んだ……。そのガキさえも俺が駆けつけなきゃ殺されちまってたぞ」

 「それだけじゃないです。バゼルは生涯を終えて眠りについていた魔族の戦士を使役しました。そんなやつらの言うことなんか信用できません!」

 グランザとゼルアルに言われ、押し黙るアリムル。だが、迷いを絶ち切るように一同を一瞥する。

 「うるさいね! あたしはジョアファルア様を信じる!! もう、後戻りはできないんだ!!!」

 身構え、臨戦態勢をとる。

 「アリムル様!?」

 グランザは哀しみをたたえた単眼を愛しい女性に向ける。

 「くっ!……もしも邪魔をするのなら、たとえあんたでも容赦しないよ、グランザ!!!」

 グランザを睨み付け、叫ぶ。

 「……わかりました。だったら、僕がアリムル様を止めます。あなたを救う方法がそれしかないのなら……」

 グランザは哀しみを堪え、槍と盾を構える。

 「皆さんは手を出さないで下さい。この戦いだけは!」

 「うん、わかったよ。気をつけてね!」

 リアーナは真剣な表情のグランザの意志を尊重する。

 「グランザ……。あんた、あたしに勝てると思ってるのかい? 魔族でありながら魔術を扱えないあんたが、このタレク島の魔族の族長である、このあたしに!」

 「はい。僕はタレク島を出て様々な戦いを乗り越えてきました。それらの経験は決して無駄ではないはず。今の僕ならあなたを止められます」

 「いい表情かおをするようになったじゃないかい。いいだろう。けど、覚悟してかかってきな。死んでも責任はもたないよ!」

 アリムルとグランザ、魔族同士の戦いが始まった。
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