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2章 ヴィズ村のオーク襲撃事件
15話 父子の再開
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グリッパーとの戦いに勝利し、カラドボルグとエクスカリバーを背中の鞘に納める。
(ここで父さんは……)
父さんがタハルジャの手にかかって命を落とした場所がここだ。それは魔神リュカリオンが封印されていた所でもある。
足元の骸骨に目を落とす。それにはもはや微量の魔力も残っていない。宿っていた魂は完全に消滅したようだ。
改めてフロアを見回す。
(本当に何もない空間だな)
壁や天井はもちろん、フロアのどこにも装飾や魔法陣の類はまるでない。
『あそこは余を封印するためだけに存在する場所なのだ』
リュカリオンが以前に言っていた言葉を思い出す。
(……ここにいてもしかたない。戻るか)
俺は洞窟の入り口へと爪先を向けて歩き出す。
「アルフォス……」
その時だった。俺は自分を呼ぶ懐かしい声に振り返った。
「父……さん……なのか!?」
そこに出現していた霊体に訊く。
「アルフォスよ……立派に成長してくれたこと、心から嬉しく思うぞ。そして、おまえに何もしてやれなかったことを詫びさせてほしい。本当にすまなかったな……ゆるしてくれ」
霊体となった父さんが俺に頭を下げる。俺は胸に熱い思いがこみ上げてくるのを感じて言葉に詰まる。
「おまえのこれまでの苦労は、クレイモアに宿っている俺の魂を通じて見守ってきた。おまえを救い、これほどまでに立派に育ててくれたリュカリオン殿には感謝している」
「父さん……」
本当なら言いたいことはいくらでもある。だが、実際に霊体とはいえ父さんを前にして、俺はそれ以上の言葉を発することができなかった。
父さんは、そんな俺に優しく微笑みかけてくれる。
「今のおまえは七星大将軍のひとりとしてラミーネルを治めておるのだな。父として我が子が自分を超えていくことを嬉しく、また誇らしく思うぞ」
俺の頬を伝う涙が足元を濡らす。
「リュカリオン殿をはじめ、アルフォスはまことに良き者に恵まれたな。だからこそ、俺は思い残すことなく逝くことができる」
それまで優しく微笑んでいた父さんが真剣な表情になる。
「最後にひとつ頼みたい。ジルバーナ様、メルティナ様、ピファ様、ルット君……彼らは俺に逆賊の汚名を着せたことに対して贖罪の気持ちを抱き続けている。しかし、俺はだれも恨んでなどいない。もう、無意味に自分たちを責めるのはやめてもらいたい」
そこまで言って、父さんはフッと笑う。
「むろん、タハルジャのことも恨んでいない。人間とは欲望に弱いものだ。俺とてひとつ違えれば同じ過ちをおかしていたやもしれん。あの世でタハルジャに会うことができたなら共に酒でも酌み交わそう。ルット君にはそれも伝えておいてくれ」
言い終えた父さんの霊体が淡く光る。
「父さん!!」
俺は駆け寄ってその体に触れようとした。しかし、差し出した俺の手は父さんの体をすり抜ける。
「さらばだ、我が自慢の息子アルフォスよ。おまえと直接話せてよかった……」
その言葉を最後に父さんの姿は空気に溶け込むように消え、俺の心に喪失感が押し寄せる。
父さんの死は受け入れていたはずだった。それなのに、こうして霊体とはいえ会ってしまうと別れの辛さが身にしみる。
(父さん。俺がいつかそっちに行ったら一緒に飲もう……)
心の中で呟く。その時、微風が俺の濡れた頬を優しく撫でていった。
(ここで父さんは……)
父さんがタハルジャの手にかかって命を落とした場所がここだ。それは魔神リュカリオンが封印されていた所でもある。
足元の骸骨に目を落とす。それにはもはや微量の魔力も残っていない。宿っていた魂は完全に消滅したようだ。
改めてフロアを見回す。
(本当に何もない空間だな)
壁や天井はもちろん、フロアのどこにも装飾や魔法陣の類はまるでない。
『あそこは余を封印するためだけに存在する場所なのだ』
リュカリオンが以前に言っていた言葉を思い出す。
(……ここにいてもしかたない。戻るか)
俺は洞窟の入り口へと爪先を向けて歩き出す。
「アルフォス……」
その時だった。俺は自分を呼ぶ懐かしい声に振り返った。
「父……さん……なのか!?」
そこに出現していた霊体に訊く。
「アルフォスよ……立派に成長してくれたこと、心から嬉しく思うぞ。そして、おまえに何もしてやれなかったことを詫びさせてほしい。本当にすまなかったな……ゆるしてくれ」
霊体となった父さんが俺に頭を下げる。俺は胸に熱い思いがこみ上げてくるのを感じて言葉に詰まる。
「おまえのこれまでの苦労は、クレイモアに宿っている俺の魂を通じて見守ってきた。おまえを救い、これほどまでに立派に育ててくれたリュカリオン殿には感謝している」
「父さん……」
本当なら言いたいことはいくらでもある。だが、実際に霊体とはいえ父さんを前にして、俺はそれ以上の言葉を発することができなかった。
父さんは、そんな俺に優しく微笑みかけてくれる。
「今のおまえは七星大将軍のひとりとしてラミーネルを治めておるのだな。父として我が子が自分を超えていくことを嬉しく、また誇らしく思うぞ」
俺の頬を伝う涙が足元を濡らす。
「リュカリオン殿をはじめ、アルフォスはまことに良き者に恵まれたな。だからこそ、俺は思い残すことなく逝くことができる」
それまで優しく微笑んでいた父さんが真剣な表情になる。
「最後にひとつ頼みたい。ジルバーナ様、メルティナ様、ピファ様、ルット君……彼らは俺に逆賊の汚名を着せたことに対して贖罪の気持ちを抱き続けている。しかし、俺はだれも恨んでなどいない。もう、無意味に自分たちを責めるのはやめてもらいたい」
そこまで言って、父さんはフッと笑う。
「むろん、タハルジャのことも恨んでいない。人間とは欲望に弱いものだ。俺とてひとつ違えれば同じ過ちをおかしていたやもしれん。あの世でタハルジャに会うことができたなら共に酒でも酌み交わそう。ルット君にはそれも伝えておいてくれ」
言い終えた父さんの霊体が淡く光る。
「父さん!!」
俺は駆け寄ってその体に触れようとした。しかし、差し出した俺の手は父さんの体をすり抜ける。
「さらばだ、我が自慢の息子アルフォスよ。おまえと直接話せてよかった……」
その言葉を最後に父さんの姿は空気に溶け込むように消え、俺の心に喪失感が押し寄せる。
父さんの死は受け入れていたはずだった。それなのに、こうして霊体とはいえ会ってしまうと別れの辛さが身にしみる。
(父さん。俺がいつかそっちに行ったら一緒に飲もう……)
心の中で呟く。その時、微風が俺の濡れた頬を優しく撫でていった。
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