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5章 海賊討伐
45話 アルフォスとルット
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アルスフェルト城の謁見の間。俺は、帰還したルットたちから詳細な報告を受けていた。
「それにしても、随分と疲れているようだな。今回の戦いに参加した者全員に休暇を与える。ゆっくり休んで心身の疲れを癒してほしい。ガルフェン、手配を頼む」
「はっ、承知いたしました。それでは……」
老騎士ガルフェンが一礼し、謁見の間を退出する。
「それじゃ、僕も休ませてもらうよ」
全ての報告を終え、ルットは自室へと向かう。
「ルット」
謁見の間を出ようとするルットに声をかける。それに反応して振り返るルット。
「今夜、一緒に飲まないか?」
思いもよらない誘いだったのだろう。ルットは少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔になる。
「わかった。アルフォスと飲むのは久しぶりだね。楽しみにしてるよ」
力なく答え、謁見の間をあとにするルットの背中を無言で見送った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夜。アルスフェルト城3階のサロン。俺とルットは窓から見えるクラッツェルンの夜景を見ながらグラスを傾けている。
「今回はかなりまいっているみたいだな」
まずは俺から口を開く。
「……そうだね。自分が情けなくなるよ」
ルットは自嘲気味に笑う。
少しの間を挟んで言葉を返す。
「俺は、ルットに任せたことを間違ったとは思っていないが?」
「例えば、セラさんならもっと上手く指揮できたんじゃないかな」
ルットは意見に俺は「うーん」と唸る。
「セラは優秀だからな。けど、あいつだって失敗しないってこともないぞ。俺とセラはこれまでいろんな事を乗り越えてきた。そのなかで、失敗しても互いにフォローし合ったもんさ」
当時はリュカリオンからの指令を達成するために必死だったが、今となっては懐かしい思い出だ。
「たしかに、アルフォスとセラさんは信頼し合ってるのは見ててわかるよ。……だけど……」
そこまで言ってルットは言葉を止め、目の前でグラスに注がれたワインを飲む俺を見る。
「なんだよ?」
先を促す。
「……君にとっての一番はどっちなんだい?」
ルットは悪戯を思いついたような笑みを浮かべる。
おそらく、セラかメルティナかを訊いているのだろう。暫く黙考する。
「今の俺には答えは出せない質問だな。どちらも俺にとってはかけがえのない大切な存在だ」
「なるほどなるほど。昔はメルティナ様に一途だったのに、アルフォスも変わったもんだ」
「おいおい、なにが言いたいんだ、ルット?」
抗議の目を向ける。
「いやいや、まさかアルフォスが複数の女性とよろしくする時がくるとは思わなかったよ」
ルットめ。俺の反応を楽しんでるな。落ち込まれているよりはいいが……
「そういうおまえこそどうなんだ?」
今度は俺から仕掛ける。
「どうって……何がさ? 僕は一途だよ?」
「そりゃそうだろう。だが、少々奥手すぎるんじゃないか?」
ルットは、ニヤリと笑む俺を見ながら眼鏡をクイッと上げる。
「それは心外だね。硬派だと言ってほしいものだよ」
「硬派、ねぇ……」
「そう、硬派だ」
俺とルットは互いの顔を直視する。
「「アハハハハ……」」
声をあげて笑いだしたのは同時だった。
その後も酒を飲みながら他愛もない話をして夜は更けていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、そろそろ寝るか」
ボトルが空になったこともあり、俺は席を立った。
「そうだね……お陰で少し元気が出たよ」
ルットが柔らかな笑みを浮かべる。
「そうか」
短く答える。
「ありがとう。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
こうして俺たちの飲み会は終わりを告げた。
(ルットを少しでも元気付けることができたのならそれでよかった)
安堵の気持ちを抱きつつ、寝室へと向かった。
「それにしても、随分と疲れているようだな。今回の戦いに参加した者全員に休暇を与える。ゆっくり休んで心身の疲れを癒してほしい。ガルフェン、手配を頼む」
「はっ、承知いたしました。それでは……」
老騎士ガルフェンが一礼し、謁見の間を退出する。
「それじゃ、僕も休ませてもらうよ」
全ての報告を終え、ルットは自室へと向かう。
「ルット」
謁見の間を出ようとするルットに声をかける。それに反応して振り返るルット。
「今夜、一緒に飲まないか?」
思いもよらない誘いだったのだろう。ルットは少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔になる。
「わかった。アルフォスと飲むのは久しぶりだね。楽しみにしてるよ」
力なく答え、謁見の間をあとにするルットの背中を無言で見送った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夜。アルスフェルト城3階のサロン。俺とルットは窓から見えるクラッツェルンの夜景を見ながらグラスを傾けている。
「今回はかなりまいっているみたいだな」
まずは俺から口を開く。
「……そうだね。自分が情けなくなるよ」
ルットは自嘲気味に笑う。
少しの間を挟んで言葉を返す。
「俺は、ルットに任せたことを間違ったとは思っていないが?」
「例えば、セラさんならもっと上手く指揮できたんじゃないかな」
ルットは意見に俺は「うーん」と唸る。
「セラは優秀だからな。けど、あいつだって失敗しないってこともないぞ。俺とセラはこれまでいろんな事を乗り越えてきた。そのなかで、失敗しても互いにフォローし合ったもんさ」
当時はリュカリオンからの指令を達成するために必死だったが、今となっては懐かしい思い出だ。
「たしかに、アルフォスとセラさんは信頼し合ってるのは見ててわかるよ。……だけど……」
そこまで言ってルットは言葉を止め、目の前でグラスに注がれたワインを飲む俺を見る。
「なんだよ?」
先を促す。
「……君にとっての一番はどっちなんだい?」
ルットは悪戯を思いついたような笑みを浮かべる。
おそらく、セラかメルティナかを訊いているのだろう。暫く黙考する。
「今の俺には答えは出せない質問だな。どちらも俺にとってはかけがえのない大切な存在だ」
「なるほどなるほど。昔はメルティナ様に一途だったのに、アルフォスも変わったもんだ」
「おいおい、なにが言いたいんだ、ルット?」
抗議の目を向ける。
「いやいや、まさかアルフォスが複数の女性とよろしくする時がくるとは思わなかったよ」
ルットめ。俺の反応を楽しんでるな。落ち込まれているよりはいいが……
「そういうおまえこそどうなんだ?」
今度は俺から仕掛ける。
「どうって……何がさ? 僕は一途だよ?」
「そりゃそうだろう。だが、少々奥手すぎるんじゃないか?」
ルットは、ニヤリと笑む俺を見ながら眼鏡をクイッと上げる。
「それは心外だね。硬派だと言ってほしいものだよ」
「硬派、ねぇ……」
「そう、硬派だ」
俺とルットは互いの顔を直視する。
「「アハハハハ……」」
声をあげて笑いだしたのは同時だった。
その後も酒を飲みながら他愛もない話をして夜は更けていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さて、そろそろ寝るか」
ボトルが空になったこともあり、俺は席を立った。
「そうだね……お陰で少し元気が出たよ」
ルットが柔らかな笑みを浮かべる。
「そうか」
短く答える。
「ありがとう。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
こうして俺たちの飲み会は終わりを告げた。
(ルットを少しでも元気付けることができたのならそれでよかった)
安堵の気持ちを抱きつつ、寝室へと向かった。
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