78 / 97
7章 最後の戦い
70話 女神VS魔神②
しおりを挟む
どこまでも続く空を魔神と女神が縦横無尽に飛び回っている。リュカリオンが射た魔力矢をフィアーゼは風に舞う花びらのようにヒラリヒラリと躱す。
「雷属性上級魔術!」
女神フィアーゼが左手をかざして魔力を雷の弾丸に変えて連射する。魔神リュカリオンは左手に魔力大盾を作りだし雷の弾丸を防ぐ。
「これでもくらえ」
リュカリオンは右手に顕現させた魔力槍を女神に向けて投げる。その穂先がフィアーゼを捉えようかという直前、大蛇がそれを噛み砕く。
(フィアーゼが自らの髪を変化させた八匹の大蛇か。あれは少しばかり厄介だな。攻撃にも防御にも使えるうえに斬り落としても瞬く間に再生する……)
大蛇を警戒をしているリュカリオンにフィアーゼは冷笑を見せる。
「さすがの魔神リュカリオンも、あたしの八岐大蛇には手を焼くみたいね? でもね、警戒して近寄らなくても安全だとは言えないわよ!」
フィアーゼの魔力が急速に増大していく。
(なにをする気だ?)
リュカリオンは左手の魔力大盾を前面にだし警戒をさらに強める。
「そぉれ! 八蛇連光!!」
フィアーゼは愉快そうに笑い、八岐大蛇が大口を開けて魔力の光線を連射した。
(これはまずい!! 大盾では防ぎきれん!)
リュカリオンは、その一発一発が火属性最上級魔術を凌駕するほどの威力であることを察知し、回避する。
「あらあら、どうしたのかしらぁ? 逃げ回ってるだけじゃあたしには勝てないわよ?」
余裕の笑みを浮かべながら、フィアーゼは上下左右に滑空して光線を避け続ける魔神に向かって言う。
「言われずともわかっておる」
身体を反転させ、迫りくる無数の光線を掻い潜って女神に急接近する。
(これだけの光線を躱せるっていうの!?)
フィアーゼは驚嘆するも、その両手は迎撃のために動いていた。リュカリオンと対面しながら飛空魔術で後方へと移動し、かざした左手から火属性最上級魔術を、右手から風属性上級魔術を連続で撃ち出す。
(うそでしょ!?)
魔神リュカリオンの実力は知っているはずだった。しかし、目の前にいる魔神は女神が知る魔神のそれを上回っている。はるか昔に戦った時よりも明らかに強くなっているではないか。
街ひとつを壊滅させてもおかしくないほどの猛攻を完璧に回避したリュカリオンが両手の魔力剣をしっかりと握る。
「えっ!?」
女神はリュカリオンの予想外の行動に思考が停止する。それは刹那のことだった。しかし、再び身体を翻してフィアーゼに背中を向けたリュカリオンの姿が消えたのだ。動きが速いとかいうレベルの話ではない。
「ちぃ!!」
背後から感じた殺気にフィアーゼは反射的に垂直に飛翔した。その直後、二本の魔力剣の軌跡が女神がいた空間で交差する。
(瞬間移動魔術!?)
魔神の姿が消えた仕掛けを理解したフィアーゼは、宿敵リュカリオンの能力の高さに改めて驚嘆した。通常、瞬間移動魔術を行使する際は移動先に自分の魔力を定着させる必要がある。当然、遠距離であればあるほど難度は上がる。しかし、近距離であってもあの一瞬で猛攻を回避しながら正確に行うなどリュカリオンでなければ不可能であろう。
(……なんという反応の速さか。あれを躱されるとはさすがに想定外であった……)
リュカリオンもまた、フィアーゼの反応速度に驚きを隠せずにいた。だが、八岐大蛇の光線が途絶えた今が反撃の好機であると判断したリュカリオンは放たれた矢の如く一直線に女神に斬りかかる。
「くっ!!」
後手に回った女神は歯噛みしつつ八岐大蛇で迎撃する。
「はぁ!!」
鋭く声を発したリュカリオンが両手の魔力剣を超光速で閃かせて大蛇の首を次々に切断していく。
(忌々しい!!)
憎しみの眼差しを魔神に向けたフィアーゼがリュカリオンのサイドを回り込むように滑空し、両手をかざす。
「火属性上級広域魔術!!」
フィアーゼは膨大な魔力を消費し、大爆発を連発させた。辺り一帯を爆煙が覆う。
(まったく、相変わらずの魔力量だな。おそらく、やつの魔力にはまだ余力があるはず。さてさて……)
爆煙の中、両手の魔力武具を大盾に変化させて凌いだリュカリオンが思案する。リュカリオンの神業をもってしても魔力剣の二刀流で八岐大蛇を切断するだけで精一杯である。フィアーゼに直接ダメージを与えることはできない。さらに、接近戦に持ち込んだとしてもあの反応速度は尋常ではなく、動きそのものも素早い。また、遠距離戦ではフィアーゼに分がある。
(とりあえず、この爆煙は利用させてもらうとするか)
リュカリオンは魔力弓と魔力矢を顕現し、女神の気配を探る。
(そこか!)
狙いを定めて躊躇なく矢を射る。
「ちっ!」
爆煙の中から飛び出してきた矢が胸に刺さる寸前で回避した女神が憎悪の視線を爆煙の中の魔神に向け、八岐大蛇から光線の嵐を浴びせる。
「やれやれ、でたらめな魔力量も大概にしてほしいものだな……」
降り注がれる極太光線の雨を避けながら時折は魔力矢を撃ち返す。しかし、それが当たるとは期待できないと悟り、魔力の無駄遣いはやめることにした。
(今一度、瞬間移動魔術で奇襲をかけるか……いや、それは悪手だな。あの女のことだ。その程度のことは想定しておるだろう。下手をすれば手痛い反撃をくらうことになるやもしれぬ。となると……)
思考していたリュカリオンは女神から距離をとるように後方へと素早く移動する。その動きを察知したフィアーゼは猛攻をやめた。
「もう、終わりか?」
爆煙が晴れて視界が戻った空間で、魔神リュカリオンは口元に笑みを浮かべる。対する女神フィアーゼは舌打ちをして宿敵を睥睨していた。
「雷属性上級魔術!」
女神フィアーゼが左手をかざして魔力を雷の弾丸に変えて連射する。魔神リュカリオンは左手に魔力大盾を作りだし雷の弾丸を防ぐ。
「これでもくらえ」
リュカリオンは右手に顕現させた魔力槍を女神に向けて投げる。その穂先がフィアーゼを捉えようかという直前、大蛇がそれを噛み砕く。
(フィアーゼが自らの髪を変化させた八匹の大蛇か。あれは少しばかり厄介だな。攻撃にも防御にも使えるうえに斬り落としても瞬く間に再生する……)
大蛇を警戒をしているリュカリオンにフィアーゼは冷笑を見せる。
「さすがの魔神リュカリオンも、あたしの八岐大蛇には手を焼くみたいね? でもね、警戒して近寄らなくても安全だとは言えないわよ!」
フィアーゼの魔力が急速に増大していく。
(なにをする気だ?)
リュカリオンは左手の魔力大盾を前面にだし警戒をさらに強める。
「そぉれ! 八蛇連光!!」
フィアーゼは愉快そうに笑い、八岐大蛇が大口を開けて魔力の光線を連射した。
(これはまずい!! 大盾では防ぎきれん!)
リュカリオンは、その一発一発が火属性最上級魔術を凌駕するほどの威力であることを察知し、回避する。
「あらあら、どうしたのかしらぁ? 逃げ回ってるだけじゃあたしには勝てないわよ?」
余裕の笑みを浮かべながら、フィアーゼは上下左右に滑空して光線を避け続ける魔神に向かって言う。
「言われずともわかっておる」
身体を反転させ、迫りくる無数の光線を掻い潜って女神に急接近する。
(これだけの光線を躱せるっていうの!?)
フィアーゼは驚嘆するも、その両手は迎撃のために動いていた。リュカリオンと対面しながら飛空魔術で後方へと移動し、かざした左手から火属性最上級魔術を、右手から風属性上級魔術を連続で撃ち出す。
(うそでしょ!?)
魔神リュカリオンの実力は知っているはずだった。しかし、目の前にいる魔神は女神が知る魔神のそれを上回っている。はるか昔に戦った時よりも明らかに強くなっているではないか。
街ひとつを壊滅させてもおかしくないほどの猛攻を完璧に回避したリュカリオンが両手の魔力剣をしっかりと握る。
「えっ!?」
女神はリュカリオンの予想外の行動に思考が停止する。それは刹那のことだった。しかし、再び身体を翻してフィアーゼに背中を向けたリュカリオンの姿が消えたのだ。動きが速いとかいうレベルの話ではない。
「ちぃ!!」
背後から感じた殺気にフィアーゼは反射的に垂直に飛翔した。その直後、二本の魔力剣の軌跡が女神がいた空間で交差する。
(瞬間移動魔術!?)
魔神の姿が消えた仕掛けを理解したフィアーゼは、宿敵リュカリオンの能力の高さに改めて驚嘆した。通常、瞬間移動魔術を行使する際は移動先に自分の魔力を定着させる必要がある。当然、遠距離であればあるほど難度は上がる。しかし、近距離であってもあの一瞬で猛攻を回避しながら正確に行うなどリュカリオンでなければ不可能であろう。
(……なんという反応の速さか。あれを躱されるとはさすがに想定外であった……)
リュカリオンもまた、フィアーゼの反応速度に驚きを隠せずにいた。だが、八岐大蛇の光線が途絶えた今が反撃の好機であると判断したリュカリオンは放たれた矢の如く一直線に女神に斬りかかる。
「くっ!!」
後手に回った女神は歯噛みしつつ八岐大蛇で迎撃する。
「はぁ!!」
鋭く声を発したリュカリオンが両手の魔力剣を超光速で閃かせて大蛇の首を次々に切断していく。
(忌々しい!!)
憎しみの眼差しを魔神に向けたフィアーゼがリュカリオンのサイドを回り込むように滑空し、両手をかざす。
「火属性上級広域魔術!!」
フィアーゼは膨大な魔力を消費し、大爆発を連発させた。辺り一帯を爆煙が覆う。
(まったく、相変わらずの魔力量だな。おそらく、やつの魔力にはまだ余力があるはず。さてさて……)
爆煙の中、両手の魔力武具を大盾に変化させて凌いだリュカリオンが思案する。リュカリオンの神業をもってしても魔力剣の二刀流で八岐大蛇を切断するだけで精一杯である。フィアーゼに直接ダメージを与えることはできない。さらに、接近戦に持ち込んだとしてもあの反応速度は尋常ではなく、動きそのものも素早い。また、遠距離戦ではフィアーゼに分がある。
(とりあえず、この爆煙は利用させてもらうとするか)
リュカリオンは魔力弓と魔力矢を顕現し、女神の気配を探る。
(そこか!)
狙いを定めて躊躇なく矢を射る。
「ちっ!」
爆煙の中から飛び出してきた矢が胸に刺さる寸前で回避した女神が憎悪の視線を爆煙の中の魔神に向け、八岐大蛇から光線の嵐を浴びせる。
「やれやれ、でたらめな魔力量も大概にしてほしいものだな……」
降り注がれる極太光線の雨を避けながら時折は魔力矢を撃ち返す。しかし、それが当たるとは期待できないと悟り、魔力の無駄遣いはやめることにした。
(今一度、瞬間移動魔術で奇襲をかけるか……いや、それは悪手だな。あの女のことだ。その程度のことは想定しておるだろう。下手をすれば手痛い反撃をくらうことになるやもしれぬ。となると……)
思考していたリュカリオンは女神から距離をとるように後方へと素早く移動する。その動きを察知したフィアーゼは猛攻をやめた。
「もう、終わりか?」
爆煙が晴れて視界が戻った空間で、魔神リュカリオンは口元に笑みを浮かべる。対する女神フィアーゼは舌打ちをして宿敵を睥睨していた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる