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7章 最後の戦い
73話 女神VS魔神③
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飛翔したリュカリオンの右手が素早く動く。剣閃が下から上へと流れる。フィアーゼは後方へと移動し、すかさず八岐大蛇で猛烈な反撃に転じた。魔力大盾と魔力剣で応戦するリュカリオンだが、手数に押されて右腕に噛みつかれてしまう。
「ぐっ!!……」
痛みに表情をゆがめつつも左手の魔力大盾を魔力剣に変えて噛みついた大蛇の首を斬り落とす。
「光属性中級広域魔術!」
リュカリオンがフィアーゼから離れた瞬間、女神が放った光の渦が魔神をのみこんだ。
「ぬぅぅぅぅっ!!……」
光の渦の中、リュカリオンは全身に火傷と切り傷を同時に受ける。
「うぬぅ!……」
リュカリオンは全身に魔力を纏い、強引に光の渦を突き抜ける。
「火属性上級魔術!」
その瞬間を待ち構えていたフィアーゼが火炎の弾丸をマシンガンのごとく連射する。
ガガガがガガガッ
咄嗟に顕現した魔力大盾でガードしつつ上空へと逃れるリュカリオン。
「逃さない!」
フィアーゼは八岐大蛇の首を魔神に向けて光線を放つ。
(まったく、容赦のない女だ……)
リュカリオンは、次々に繰り出される光線を回避しながら魔力矢で反撃し、八岐大蛇の首を7つ仕留める。
(なんてやつなの!?)
フィアーゼは、手負いの状態にもかかわらずこれほどの戦闘能力を有するリュカリオンを忌々しく思いながらも冷静さは失わない。ひとまず魔神との距離を確保しようとする。
「はっ!」
短く声を発したリュカリオンが魔力槍をフィアーゼに向けて投擲した。
「くぅ!」
フィアーゼは、最後に残った八岐大蛇の頭を盾にして間一髪のところで防御する。魔力槍が八岐大蛇を貫通できなかったことを確認した女神がホッと安堵する。
(おのれ! リュカリオンめ!!)
肝を冷やされたフィアーゼは鋭い視線を戻す。が、そこにはだれもいない空間が広がっているのみだった。目を離したのは一瞬だったはすだが、魔神の影も形もない。
(瞬間移動魔術!!)
フィアーゼはリュカリオンの奇襲に備えて警戒する。八岐大蛇の再生を急がねばならない。しかし、そこに意識を集中し過ぎてはリュカリオンからの強烈な一撃をくらうおそれがある。フィアーゼは額に汗をにじませる。
(後ろ!?)
背後にリュカリオンの気配を察知したフィアーゼは振り返ると同時に間合いをとり、さらに魔術による反撃を放とうと左手をかざす。が、魔神の姿をとらえたのはほんの一瞬のこと。魔術を放つ間もなく、リュカリオンは再び姿を消した。
(このあたしをおちょくってるの!?)
フィアーゼは苛立ちつつも敵の気配を探る。
「そこね!!」
またしても背後に魔神の気配を感じたフィアーゼが振り返り様に風属性上級魔術を撃つ。だが、リュカリオンは攻撃する素振りもみせず、垂直に飛翔した。飛び出した風刃が何もない空間へと消えていく。
「リュカリオン!!」
遊ばれているようで、苛立ちを抑えきれなくなったフィアーゼが怒声をあげ、頭上を振り仰ぐ。
「えっ!!」
女神は戦慄を覚える。リュカリオンは高々と掲げた魔力大剣を今まさに振り下ろそうとしていた。即座に後方へと逃れる女神。
「遅い!!」
リュカリオンは躊躇なく魔力大剣を振り下ろした。
「ぎゃあっ!!」
八岐大蛇の再生が間に合っていなかったフィアーゼは、魔力大剣によって右肩から左脇腹にかけて斬りつけられ、短い絶叫をあげて落下していく。
(あやつがこの程度で死ぬはずがない。手応えは確かにあった。だが、おそらく防御膜魔術でガードされておるだろう。致命傷を与えたとは思えんな)
リュカリオンは魔力矢を雨の如く女神に向かって射ちまくる。しかし、それらは右側へと滑空したフィアーゼに躱されてしまう。
「やってくれたわね!」
ようやく八岐大蛇を再生させたフィアーゼが光線を連射して反撃に転じる。一方、リュカリオンは回避と魔力大盾による防御でやり過ごしていく。
「ちっ!」
フィアーゼは、決定打を与えることができないもどかしさに舌を打つ。
(さすがに魔力を使い過ぎたわ)
膨大な魔力を持つフィアーゼだったが、想定していたよりもリュカリオンが手強く苦戦を強いられている。事実、八岐大蛇の再生速度も落ちていた。
(今が攻め時か!)
リュカリオンは両手に魔力剣に握り、撃ち出される光線を躱しつつフィアーゼとの距離を一気に詰める。
「はぁぁぁっ!!」
魔力剣が無数の剣閃を描き、女神を斬りつける。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
全身から血を噴き出したフィアーゼが絶叫する。だが、リュカリオンは攻撃の手を緩めない。怒濤の斬撃がフィアーゼを切り刻む。頼りの八岐大蛇はまたしても全て斬り捨てられた。
「ぜぇぇぇぇぇい!!!」
魔神リュカリオンは裂帛の気合いとともに両手の魔力剣の軌道を交差させ、女神フィアーゼの身体に十文字の切り傷をつける。さらに、両腕を引いて魔力剣の切先をフィアーゼの胸に向ける。
「や、やめ……がっ!!」
女神は衝撃を受けて両目を大きく見開く。ゆっくりと自らの胸に視線を向ける。深々と突き刺さった魔力剣が貫通している。
「おの!……れぇぇぇ!!!」
フィアーゼは激しい憎悪を溶かした視線をリュカリオンに向けた。
(まだ、なにかするのか!?)
瀕死の重傷を負っているはずのフィアーゼだが、その瞳は勝利を諦めているようには見えなかった。リュカリオンは魔力剣から手を放し、その場から離れようと動く。が、フィアーゼは残された力を振り絞るかのようにリュカリオンの両腕を掴む。
「放せ!」
必死に振りほどこうとするも、どこにこんな力があるのかと疑問に思われるほどの膂力で掴まれている。
「あたしの……勝ちよ!!!」
女神は残された魔力を一気に魔神へと流し込む。
「がぁぁぁぁぁぁっ!!!」
瞬間的に膨大な魔力を体内に流し込まれたことにより、リュカリオンは内蔵に甚大なダメージを受けてしまう。
「がはぁっ!!」
魔神リュカリオンは口から大量の血を吐き、意識が薄れていくのを感じた。
「ぐっ!!……」
痛みに表情をゆがめつつも左手の魔力大盾を魔力剣に変えて噛みついた大蛇の首を斬り落とす。
「光属性中級広域魔術!」
リュカリオンがフィアーゼから離れた瞬間、女神が放った光の渦が魔神をのみこんだ。
「ぬぅぅぅぅっ!!……」
光の渦の中、リュカリオンは全身に火傷と切り傷を同時に受ける。
「うぬぅ!……」
リュカリオンは全身に魔力を纏い、強引に光の渦を突き抜ける。
「火属性上級魔術!」
その瞬間を待ち構えていたフィアーゼが火炎の弾丸をマシンガンのごとく連射する。
ガガガがガガガッ
咄嗟に顕現した魔力大盾でガードしつつ上空へと逃れるリュカリオン。
「逃さない!」
フィアーゼは八岐大蛇の首を魔神に向けて光線を放つ。
(まったく、容赦のない女だ……)
リュカリオンは、次々に繰り出される光線を回避しながら魔力矢で反撃し、八岐大蛇の首を7つ仕留める。
(なんてやつなの!?)
フィアーゼは、手負いの状態にもかかわらずこれほどの戦闘能力を有するリュカリオンを忌々しく思いながらも冷静さは失わない。ひとまず魔神との距離を確保しようとする。
「はっ!」
短く声を発したリュカリオンが魔力槍をフィアーゼに向けて投擲した。
「くぅ!」
フィアーゼは、最後に残った八岐大蛇の頭を盾にして間一髪のところで防御する。魔力槍が八岐大蛇を貫通できなかったことを確認した女神がホッと安堵する。
(おのれ! リュカリオンめ!!)
肝を冷やされたフィアーゼは鋭い視線を戻す。が、そこにはだれもいない空間が広がっているのみだった。目を離したのは一瞬だったはすだが、魔神の影も形もない。
(瞬間移動魔術!!)
フィアーゼはリュカリオンの奇襲に備えて警戒する。八岐大蛇の再生を急がねばならない。しかし、そこに意識を集中し過ぎてはリュカリオンからの強烈な一撃をくらうおそれがある。フィアーゼは額に汗をにじませる。
(後ろ!?)
背後にリュカリオンの気配を察知したフィアーゼは振り返ると同時に間合いをとり、さらに魔術による反撃を放とうと左手をかざす。が、魔神の姿をとらえたのはほんの一瞬のこと。魔術を放つ間もなく、リュカリオンは再び姿を消した。
(このあたしをおちょくってるの!?)
フィアーゼは苛立ちつつも敵の気配を探る。
「そこね!!」
またしても背後に魔神の気配を感じたフィアーゼが振り返り様に風属性上級魔術を撃つ。だが、リュカリオンは攻撃する素振りもみせず、垂直に飛翔した。飛び出した風刃が何もない空間へと消えていく。
「リュカリオン!!」
遊ばれているようで、苛立ちを抑えきれなくなったフィアーゼが怒声をあげ、頭上を振り仰ぐ。
「えっ!!」
女神は戦慄を覚える。リュカリオンは高々と掲げた魔力大剣を今まさに振り下ろそうとしていた。即座に後方へと逃れる女神。
「遅い!!」
リュカリオンは躊躇なく魔力大剣を振り下ろした。
「ぎゃあっ!!」
八岐大蛇の再生が間に合っていなかったフィアーゼは、魔力大剣によって右肩から左脇腹にかけて斬りつけられ、短い絶叫をあげて落下していく。
(あやつがこの程度で死ぬはずがない。手応えは確かにあった。だが、おそらく防御膜魔術でガードされておるだろう。致命傷を与えたとは思えんな)
リュカリオンは魔力矢を雨の如く女神に向かって射ちまくる。しかし、それらは右側へと滑空したフィアーゼに躱されてしまう。
「やってくれたわね!」
ようやく八岐大蛇を再生させたフィアーゼが光線を連射して反撃に転じる。一方、リュカリオンは回避と魔力大盾による防御でやり過ごしていく。
「ちっ!」
フィアーゼは、決定打を与えることができないもどかしさに舌を打つ。
(さすがに魔力を使い過ぎたわ)
膨大な魔力を持つフィアーゼだったが、想定していたよりもリュカリオンが手強く苦戦を強いられている。事実、八岐大蛇の再生速度も落ちていた。
(今が攻め時か!)
リュカリオンは両手に魔力剣に握り、撃ち出される光線を躱しつつフィアーゼとの距離を一気に詰める。
「はぁぁぁっ!!」
魔力剣が無数の剣閃を描き、女神を斬りつける。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
全身から血を噴き出したフィアーゼが絶叫する。だが、リュカリオンは攻撃の手を緩めない。怒濤の斬撃がフィアーゼを切り刻む。頼りの八岐大蛇はまたしても全て斬り捨てられた。
「ぜぇぇぇぇぇい!!!」
魔神リュカリオンは裂帛の気合いとともに両手の魔力剣の軌道を交差させ、女神フィアーゼの身体に十文字の切り傷をつける。さらに、両腕を引いて魔力剣の切先をフィアーゼの胸に向ける。
「や、やめ……がっ!!」
女神は衝撃を受けて両目を大きく見開く。ゆっくりと自らの胸に視線を向ける。深々と突き刺さった魔力剣が貫通している。
「おの!……れぇぇぇ!!!」
フィアーゼは激しい憎悪を溶かした視線をリュカリオンに向けた。
(まだ、なにかするのか!?)
瀕死の重傷を負っているはずのフィアーゼだが、その瞳は勝利を諦めているようには見えなかった。リュカリオンは魔力剣から手を放し、その場から離れようと動く。が、フィアーゼは残された力を振り絞るかのようにリュカリオンの両腕を掴む。
「放せ!」
必死に振りほどこうとするも、どこにこんな力があるのかと疑問に思われるほどの膂力で掴まれている。
「あたしの……勝ちよ!!!」
女神は残された魔力を一気に魔神へと流し込む。
「がぁぁぁぁぁぁっ!!!」
瞬間的に膨大な魔力を体内に流し込まれたことにより、リュカリオンは内蔵に甚大なダメージを受けてしまう。
「がはぁっ!!」
魔神リュカリオンは口から大量の血を吐き、意識が薄れていくのを感じた。
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