聖剣と魔剣の二刀流剣士物語2【七星大将軍編】

美山 鳥

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7章 最後の戦い

74話 六光破邪衆ヴェーガ

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 「よし、この辺りのモンスターどもは殲滅せんめつしたぞ!」

 ゴブリン、オーク、オーガ、スケルトンなど多様なモンスターの大群を掃討したルットが弾んだ息を整える。

 「ルット様、民間人の避難準備が終わりました!」

 救助班の近衛騎士がルットに報告する。

 「わかった。では、早急にアルスフェルト城へ向かおう」
 「はっ!」

 近衛騎士は敬礼し、ほかの騎士たちに伝えにいく。

 「ルット様!」

 近衛騎士を見送ったルットの元にリーシャが駆けてくる。

 「リーシャ、一度城へ戻るよ。兵や騎士もかなり疲弊しているし、民間人を避難させなきゃダメだからね。殿しんがりは僕に任せるんだ。リーシャは先頭で避難民の安全を確保してほしい」
 「了解です。では、先行します!」

 ルットからの指示を受け、リーシャは避難ルートの安全を確保するため一足早くアルスフェルト城へと向かう。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 「ルット様!!」

 先行していたリーシャが、アルスフェルト城へと避難民を誘導している一行のもとへと血相を変えて引き返してきた。

 「どうしたんだい!?」

 ただならぬ様子にルットは訊く。

「大変です! アルスフェルト城が攻撃を受けています!!」

 リーシャの報告にルットは衝撃を受ける。

 (くっ! だとすれば、このまま民を連れていけば危険にさらしてしまう!!)

 ルットは思案し、決断したように傍らにいた近衛騎士に視線を流す。

 「この近くの大聖堂には広い地下室があったはず。このままアルスフェルト城へ民を連れて行ってかえって危険だ。ひとまず大聖堂に民を誘導するんだ。僕とリーシャはアルスフェルト城に向かう」
 「では、民の避難が完了次第、我らもアルスフェルト城に向かいます!」
 「だめだ。君たちは大聖堂で待機して民を守ってほしい。指揮はギル小隊長に一任する」

 自ら危険に身を投じるルットの目に一切の迷いはなかった。

 「……了解いたしました。では、ご武運を!!」

 ルットとリーシャに敬礼し、近衛騎士たちは民を連れて移動を開始する。

 「悪いけど、付き合ってくれるかい?」

 ルットは残ったリーシャをすまなそうに見る。

 「もちろんです。このラミーネルは私にとっても大切な居場所ですから、絶対に守ってみせます!!」

 強い意思を溶かした瞳がルットを見つめ返す。

 「よし、行こう!!」
 「はい!」

 ルットとリーシャはアルスフェルト城に向けて駆け出した。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 「囲め! これ以上は城に侵入させてなるものか!!」

 アルスフェルト城の城門前。両腕に盾代わりとなる大籠手を装備し、右手に大剣を持った大柄の剣士をラミーネルの近衛騎士たちが取り囲む。

 「貴様らでは話にならん! アルフォスをだせ!!」

 剣士は大剣を構えすらせず、要求する。

 「なめるな! たったひとりで我々の相手をするつもりか!?」

 剣士の周りを取り囲んでいた近衛騎士たちが一斉に襲いかかる。

 「むぅん!」

 剣士は前に向かって飛び出すと手にした大剣を横に一閃した。この軌道上にいた近衛騎士たちは一瞬で鎧もろとも体を切断されて命を落とす。返す刃でさらに幾人かの近衛騎士を葬り去った。

 「魔術で応戦しろ!」

 宮廷魔術師団たちが光属性中級魔術レイ・アロー火属性中級魔術フレイム・アロー氷属性中級魔術アイス・アロー風属性中級魔術ウインド・ダガーなど各々が得意とする攻撃魔術を一斉に撃つ。

 「そんな子供だましで我を倒せると思ったか!?」

 空中へと跳び上がった剣士が振りかざした大剣から飛び出した斬撃波が宮廷魔術師団を直撃する。その一撃によって多くの宮廷魔術師が絶命した。

 「化け物が!」

 着地した剣士を狙って宮廷騎士と近衛騎士が一斉に攻撃を仕掛ける。

 「化け物とは心外だな。我が名はヴェーガ。六光破邪衆ろっこうはじゃしゅうのヴェーガだ! 貴様らザコがいくらいようが一緒だとわからぬか!」

 名乗ったヴェーガが周りの騎士たちを睥睨へいげいする。

 「くっ……」

 騎士や魔術師たちはヴェーガの実力を目の当たりにしてひるむ。

 「そこまでだ!」

 不意に聞こえてきた声にヴェーガが視線を移す。そこにはアルスフェルト城の窮地に駆けつけたルットとリーシャの姿があった。
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