聖剣と魔剣の二刀流剣士物語2【七星大将軍編】

美山 鳥

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7章 最後の戦い

81話 VSゼトラ④

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 「アルフォス!! 殺してやる!!!」

 漆黒の鎧に身を包んだゼトラが殺気をむき出しにして睨んでくる。

 「生きていたのか。しかし、バカなことをしでかしたものだな。これは見過ごすわけにはいかないぞ」

 周囲の凄惨な状況を流し見て、最後にゼトラへと視線を戻す。俺の瞳に宿った怒りを感じ取ったのだろう。ゼトラがわずかに怯むんだ様子を見せた。が、それも一瞬のこと。すぐに魔槍を構える。

 「死ねぇぇ! アルフォス!!! 魔槍ギルガーズの黒焔に焼かれてしまえ!!」

 俺を魔槍の攻撃範囲内におさめたゼトラが黒いほのおを纏ったギルガーズの穂先を突き出してくる。

 キンッ

 魔剣カラドボルグで魔槍を弾き、聖剣エクスカリバーを下段から上段へと真っ直ぐに斬り上げる。

 「なっ!? バカな!! フィアーゼ様からたまわった鎧にヒビが!?」

 ゼトラが信じ難いといわんばかりの表情で視線を落とす。深々と亀裂が入った漆黒の鎧の細かな破片が床に散らばっている。

 「そんな!……最強の騎士であるはずの僕の鎧が!?」
 「おまえが最強の騎士だと? 思い上がりもそこまでいくと大したものだな」

 深くため息をつく俺にゼトラは突き刺すような視線を向け、魔槍を構える。

 「まだ気付かないのか? 装備を強化しているばかりで、お前自身はまるで成長していない。それこそ、ここにいるアシャやメルティナのほうが強いくらいだ」
 「なん……だと!!」

 怒りにワナワナと震えるゼトラに冷たい視線を投げかけつつ、さらに続ける。

 「どれほどに強力な装備を用意したところで、それを扱う者が未熟では意味がないということだ」
 「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!! この僕からメルティナとエクスカリバーを奪ったコソドロ風情が、よくとぬけぬけと!!」

 怒りが頂点に達したゼトラが猛然と突っ込んでくる。

 「うぉっ!? なんだ、これは!!?」

 自分の足に絡みついた鎖に気付いたゼトラが困惑したように叫ぶ。

 「魔剣の縛鎖だ。怒りのあまり気付くのが遅すぎたようだな」

 魔剣の縛鎖を振りほどこうとしているゼトラに言い捨て、容赦なくカラドボルグの電撃を流し込む。

 「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!!」

 全身を紅い雷に包まれた黒騎士が悲鳴をあげて魔槍を床に落とす。

 「く……くそぉ……」

 床に両膝をついたゼトラが魔槍ギルガーズへと手を伸ばす。

 「うぐっ!!」

 ゼトラの手が魔槍を掴んだ瞬間、魔槍の柄をおもいきり踏みつける。右手を魔槍と床の間にはさまれた黒騎士はうめき声を漏らす。

 「待て! ここはひとつ取り引きをしようじゃないか。君たちがおとなしく投降すれば、この僕からフィアーゼ様に最大限の温情をかけてもらえるように頼んであげるよ。フィアーゼ様は偉大なお方だ。たとえ、魔神リュカリオンであろうと万に一つの勝ち目もない。だったら、今からでも遅くない。フィアーゼ様についたほうが利口じゃないか?」

 追い詰められた末にコレか。かつては勇者と呼ばれた者だというのに……

 「それでいいのか?」

 俺の呟きにゼトラの表情が一瞬かたくなる。が、すぐに笑みを見せた。

 「もちろんさ。僕の直属の部下ということにすればフィアーゼ様もお許しくださるだろう」

 ゼトラの甚だしい勘違いにため息を吐く。

 「そんなことを言ってるんじゃない。最後に言い残すことがそれでいいのか? ということだ」
 「待て! 僕を殺せばフィアーゼ様のお怒りをかうことになるんだぞ!?」
 「……もういい。終わりだ……」
 「待っ……」

 ゼトラの言葉を待たず、俺は聖剣エクスカリバーによってその首をはねた。
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