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7章 最後の戦い
82話 ジルバーナ死亡
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「お父様!!」
ゼトラとの戦いに決着がつき、ようやく謁見の間に敵の姿がなくなった。ジルバーナの元へと駆けつけたメルティナが倒れた父の手を握る。だが、ジルバーナに息はなく、既に完全なる死を迎えているのは明らかだ。
「アルフォス! お願い! 聖剣の力でお父様を助けて!!!」
メルティナは涙に濡れた顔で懇願してくる。が、俺にはそれに応えることはできなかった。
「すまない。ジルバーナ殿は既に死んでしまっている。聖剣といえども死んだ人間を蘇生することはできない……」
「でも、もしかしたらなんとかなるかもしれないじゃない! お願い、アルフォスお兄ちゃん!!」
ピファも一縷の望みを託してすがりついてくる。
「いい加減になさい、二人とも! アルフォス様にもできることとできないことはありますわ。そうやってアルフォス様に無理難題をふっかけて困らせるのは感心しませんわね……」
謁見の間へと帰還したセラがメルティナとピファを一喝する。無事にヴェーガを撃破したことにホッと息をつく。セラたちなら勝つと信じていても、心配しないということではない。しかし、セラの傷はかなりひどい……
「けどよぉ、やるだけやってみちゃどうだ?」
共に入ってきたウィナーが声をかける。しかし、俺は首を縦には振らない。
「おバカさんは黙ってなさい。敵の襲撃は終わっておりませんわ。ここで魔力を使い過ぎるのは悪手ですわよ」
俺が言いたいことをセラが代弁してくれる。
「……フフフフ……さすがは七星大将軍といったところですか。冷静に状況を見ていらっしゃいますね」
突然、どこからか聞こえてきた声に聖剣と魔剣を構える。
(いったい、どこにいる?)
今、この場に敵がいるのは間違いない。しかし、相手の気配を探ろうとも見つけることができない。
「だれを探しているのです?」
突然に聞こえた背後からの声に飛び退く。そこには、白と黒を基調としたドレスを身にまとった女が冷笑を浮かべていた。淡い紫の半透明の肉体の内側は骨格ばかりで臓器のたぐいは見当たらない。たしかに言えることは、人間ではないということと……とてつもなく強いということくらいか。
「でりゃぁぁぁぁ!!」
クレイモアを掲げたウィナーが飛びかかっていく。
「……愚かな……」
銀髪の女は手をかざすことで出現した鎌をつかみ取り、ウィナーの攻撃を軽々と弾く。
「火属性最上級魔術!」
セラが得意の火炎系魔術を放つ。
(消えた!?)
銀髪の女が一瞬にして俺の視界が消えたかのように姿が見えなくなった。
「あぐっ!」
セラが声を漏らす。そちらに視線を流すと背後をとられたセラが銀髪の女の攻撃を受けていた。どうやら背中に掌底をくらったらしい。
「くっ!」
前方によろめいたセラが振り返り、鞭を揮う。それは銀髪の女の右肩を打った。
「フフフフフ……」
銀髪の女が笑い声を漏らす。
「ワタクシに一撃を入れるとは、さすがは七星大将軍アルフォスの第一従者といったところですね……うん?」
銀髪の女はまるで痛みなど感じていないかのように笑みさえ浮かべていたが、自らの足に絡みついていた魔剣の縛鎖に気付く。
「紅雷!」
俺が放った紅い電撃が魔剣の縛鎖を伝って銀髪の女に流れ込む。
「ちっ!」
紅雷は効いたようだな。銀髪の女は舌打ちをして鎌で魔剣の縛鎖を断ち切った。
(……魔剣の縛鎖を一瞬で断ち切っただと? どうやら、あの鎌も相当な業物とみるべきだな)
俺はカラドボルグとエクスカリバーを構える。だが、銀髪の女は微笑を浮かべる。
「さすがは七星大将軍アルフォスですね。それだけの実力があればこそ、我らの仲間に相応しいというものです」
この女はなにをいっているんだ? 俺がこいつらの仲間になるだと? そんなことがあるわけが……
「フフフフフ……あなたはワタクシどもの仲間になりますよ。確実に、ね」
俺の考えを見透かした銀髪の女が断言する。
「なにを根拠にそんなことを……」
何者かが謁見の間に入ってきたことに気づき、俺は反論を中断した。そして、その姿を目にした一瞬、思考が停止する。
「……母……さん、なのか?……」
俺は、しぼり出すよう呟いた。
ゼトラとの戦いに決着がつき、ようやく謁見の間に敵の姿がなくなった。ジルバーナの元へと駆けつけたメルティナが倒れた父の手を握る。だが、ジルバーナに息はなく、既に完全なる死を迎えているのは明らかだ。
「アルフォス! お願い! 聖剣の力でお父様を助けて!!!」
メルティナは涙に濡れた顔で懇願してくる。が、俺にはそれに応えることはできなかった。
「すまない。ジルバーナ殿は既に死んでしまっている。聖剣といえども死んだ人間を蘇生することはできない……」
「でも、もしかしたらなんとかなるかもしれないじゃない! お願い、アルフォスお兄ちゃん!!」
ピファも一縷の望みを託してすがりついてくる。
「いい加減になさい、二人とも! アルフォス様にもできることとできないことはありますわ。そうやってアルフォス様に無理難題をふっかけて困らせるのは感心しませんわね……」
謁見の間へと帰還したセラがメルティナとピファを一喝する。無事にヴェーガを撃破したことにホッと息をつく。セラたちなら勝つと信じていても、心配しないということではない。しかし、セラの傷はかなりひどい……
「けどよぉ、やるだけやってみちゃどうだ?」
共に入ってきたウィナーが声をかける。しかし、俺は首を縦には振らない。
「おバカさんは黙ってなさい。敵の襲撃は終わっておりませんわ。ここで魔力を使い過ぎるのは悪手ですわよ」
俺が言いたいことをセラが代弁してくれる。
「……フフフフ……さすがは七星大将軍といったところですか。冷静に状況を見ていらっしゃいますね」
突然、どこからか聞こえてきた声に聖剣と魔剣を構える。
(いったい、どこにいる?)
今、この場に敵がいるのは間違いない。しかし、相手の気配を探ろうとも見つけることができない。
「だれを探しているのです?」
突然に聞こえた背後からの声に飛び退く。そこには、白と黒を基調としたドレスを身にまとった女が冷笑を浮かべていた。淡い紫の半透明の肉体の内側は骨格ばかりで臓器のたぐいは見当たらない。たしかに言えることは、人間ではないということと……とてつもなく強いということくらいか。
「でりゃぁぁぁぁ!!」
クレイモアを掲げたウィナーが飛びかかっていく。
「……愚かな……」
銀髪の女は手をかざすことで出現した鎌をつかみ取り、ウィナーの攻撃を軽々と弾く。
「火属性最上級魔術!」
セラが得意の火炎系魔術を放つ。
(消えた!?)
銀髪の女が一瞬にして俺の視界が消えたかのように姿が見えなくなった。
「あぐっ!」
セラが声を漏らす。そちらに視線を流すと背後をとられたセラが銀髪の女の攻撃を受けていた。どうやら背中に掌底をくらったらしい。
「くっ!」
前方によろめいたセラが振り返り、鞭を揮う。それは銀髪の女の右肩を打った。
「フフフフフ……」
銀髪の女が笑い声を漏らす。
「ワタクシに一撃を入れるとは、さすがは七星大将軍アルフォスの第一従者といったところですね……うん?」
銀髪の女はまるで痛みなど感じていないかのように笑みさえ浮かべていたが、自らの足に絡みついていた魔剣の縛鎖に気付く。
「紅雷!」
俺が放った紅い電撃が魔剣の縛鎖を伝って銀髪の女に流れ込む。
「ちっ!」
紅雷は効いたようだな。銀髪の女は舌打ちをして鎌で魔剣の縛鎖を断ち切った。
(……魔剣の縛鎖を一瞬で断ち切っただと? どうやら、あの鎌も相当な業物とみるべきだな)
俺はカラドボルグとエクスカリバーを構える。だが、銀髪の女は微笑を浮かべる。
「さすがは七星大将軍アルフォスですね。それだけの実力があればこそ、我らの仲間に相応しいというものです」
この女はなにをいっているんだ? 俺がこいつらの仲間になるだと? そんなことがあるわけが……
「フフフフフ……あなたはワタクシどもの仲間になりますよ。確実に、ね」
俺の考えを見透かした銀髪の女が断言する。
「なにを根拠にそんなことを……」
何者かが謁見の間に入ってきたことに気づき、俺は反論を中断した。そして、その姿を目にした一瞬、思考が停止する。
「……母……さん、なのか?……」
俺は、しぼり出すよう呟いた。
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