聖剣と魔剣の二刀流剣士物語2【七星大将軍編】

美山 鳥

文字の大きさ
90 / 97
7章 最後の戦い

82話 ジルバーナ死亡

しおりを挟む
 「お父様!!」

 ゼトラとの戦いに決着がつき、ようやく謁見の間に敵の姿がなくなった。ジルバーナの元へと駆けつけたメルティナが倒れた父の手を握る。だが、ジルバーナに息はなく、既に完全なる死を迎えているのは明らかだ。

 「アルフォス! お願い! 聖剣の力でお父様を助けて!!!」

 メルティナは涙に濡れた顔で懇願してくる。が、俺にはそれに応えることはできなかった。

 「すまない。ジルバーナ殿は既に死んでしまっている。聖剣といえども死んだ人間を蘇生することはできない……」
 「でも、もしかしたらなんとかなるかもしれないじゃない! お願い、アルフォスお兄ちゃん!!」

 ピファも一縷いちるの望みを託してすがりついてくる。

 「いい加減になさい、二人とも! アルフォス様にもできることとできないことはありますわ。そうやってアルフォス様に無理難題をふっかけて困らせるのは感心しませんわね……」

 謁見の間へと帰還したセラがメルティナとピファを一喝する。無事にヴェーガを撃破したことにホッと息をつく。セラたちなら勝つと信じていても、心配しないということではない。しかし、セラの傷はかなりひどい……

 「けどよぉ、やるだけやってみちゃどうだ?」

 共に入ってきたウィナーが声をかける。しかし、俺は首を縦には振らない。

 「おバカさんは黙ってなさい。敵の襲撃は終わっておりませんわ。ここで魔力を使い過ぎるのは悪手ですわよ」

 俺が言いたいことをセラが代弁してくれる。

 「……フフフフ……さすがは七星大将軍といったところですか。冷静に状況を見ていらっしゃいますね」

 突然、どこからか聞こえてきた声に聖剣と魔剣を構える。

 (いったい、どこにいる?)

 今、この場に敵がいるのは間違いない。しかし、相手の気配を探ろうとも見つけることができない。

 「だれを探しているのです?」

 突然に聞こえた背後からの声に飛び退く。そこには、白と黒を基調としたドレスを身にまとった女が冷笑を浮かべていた。淡い紫の半透明の肉体の内側は骨格ばかりで臓器のたぐいは見当たらない。たしかに言えることは、人間ではないということと……とてつもなく強いということくらいか。

 「でりゃぁぁぁぁ!!」

 クレイモアを掲げたウィナーが飛びかかっていく。

 「……愚かな……」

 銀髪の女は手をかざすことで出現した鎌をつかみ取り、ウィナーの攻撃を軽々と弾く。

 「火属性最上級魔術フレイム・キャノンボール!」

 セラが得意の火炎系魔術を放つ。

 (消えた!?)

 銀髪の女が一瞬にして俺の視界が消えたかのように姿が見えなくなった。

 「あぐっ!」

 セラが声を漏らす。そちらに視線を流すと背後をとられたセラが銀髪の女の攻撃を受けていた。どうやら背中に掌底をくらったらしい。

 「くっ!」

 前方によろめいたセラが振り返り、鞭をふるう。それは銀髪の女の右肩を打った。

 「フフフフフ……」

 銀髪の女が笑い声を漏らす。

 「ワタクシに一撃を入れるとは、さすがは七星大将軍アルフォスの第一従者といったところですね……うん?」

 銀髪の女はまるで痛みなど感じていないかのように笑みさえ浮かべていたが、自らの足に絡みついていた魔剣の縛鎖に気付く。

 「紅雷こうらい!」

 俺が放った紅い電撃が魔剣の縛鎖を伝って銀髪の女に流れ込む。

 「ちっ!」

 紅雷こうらいは効いたようだな。銀髪の女は舌打ちをして鎌で魔剣の縛鎖を断ち切った。

 (……魔剣の縛鎖を一瞬で断ち切っただと? どうやら、あの鎌も相当な業物とみるべきだな)

 俺はカラドボルグとエクスカリバーを構える。だが、銀髪の女は微笑を浮かべる。

 「さすがは七星大将軍アルフォスですね。それだけの実力があればこそ、我らの仲間に相応しいというものです」

 この女はなにをいっているんだ? 俺がこいつらの仲間になるだと? そんなことがあるわけが……

 「フフフフフ……あなたはワタクシどもの仲間になりますよ。確実に、ね」

 俺の考えを見透かした銀髪の女が断言する。

 「なにを根拠にそんなことを……」

 何者かが謁見の間に入ってきたことに気づき、俺は反論を中断した。そして、その姿を目にした一瞬、思考が停止する。

 「……母……さん、なのか?……」

 俺は、しぼり出すよう呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...