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第11章 レッドレオとブルータイガー
11―10 ルーニアンとラナリの過去①
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「わたしは父オグリスから大切に育てられてきました。しかし、その父の優しさはレッドレオの勢力を拡大するためのものだったんです……」
そこまで話すとラナリへ哀しげに視線を落とす。
「父にとって、女は政略結婚させるための道具としてのみ存在意義があったんです」
「なによ、それ! いつの時代の話よ! 時代錯誤もいいところだわ!!」
アルナが憤慨する。それをエルフェリオンは「うるせぇよ」の一言で片付けてしまう。当然、アルナも言い返そうとするが、話が進まなくなることを悟り、言葉を飲み込む。
「ですから、わたしが勝手にルーニアンと結婚すること……いえ、付き合うことからして父は猛反対でした」
「なぜだ? ブルータイガーのボスと娘を結婚させれば、レッドレオとしても大幅な勢力拡大に繋がるだろ」
エルフェリオンの疑問に答えを返したのはルーニアンだ。
「それが、ラナリと付き合いだしたころの僕は、レッドレオの構成員のひとりに過ぎなかったんだ。オグリスさんのやり方にはどうにも馴染めず、かといって抜ける勇気もない弱虫だったなぁ」
ルーニアンは過去の自分を思い出して苦笑する。
「父は、お金と力こそが全てという考えでしたから。ですが、ルーニアンはそんな父のやり方に納得がいかず、意見しては殴られていました。わたしは、それでも諦めずに父と向き合うルーニアンに惹かれていきました。ですが……」
そこまで話して、ラナリはテシアのことを気にする。
「あ~、テシアちゃん。オイラと向こうで遊ぶっすか? テシアちゃんがやりたい遊びに付き合うっすよ!」
「本当!? じゃあね、おままごと!!」
気を利かせたラクターがテシアを隣室へと連れて行く。
「それでさ、僕とラナリは密やかに愛を育んだんだ。その結果、あの超かわいいテシアが産まれたんだよぉ!」
「……ルーニアン、顔がだらしなくなってるわよ……」
隣室をデレ顔で見つめるルーニアンにラナリはため息混じりで言う。
「おっと、失礼。テシアのことになるとどうもね。……それで、テシアが産まれればオグリスさんも認めてくれるかと思ったんだけどさぁ、どうやら甘かったんだ。認めてくれるどころか危うく殺されそうになっちゃったよ。アハハハハハ」
明るく笑うルーニアン。だが、アルナは顔を引き攣らせる。
(アハハハハハって、そんなポップに話す内容でもないわよね?)
アルナのそんな考えを置き去りに、ルーニアンはさらに話を続ける。
「当時からボクを慕ってくれていたラクターの手助けで九死に一生を得た僕は、この地下街に逃げ込んだんだ。ところがだ、地下街では小規模なギャングがしのぎを削る争いをしていてね。いやぁ、ほんとに大変だったよ」
(大変だったんだろうが、こいつの話し方からはそれが伝わってこないな)
エルフェリオンは内心で密かに思う。
「だけどさぁ、僕としても少しでも早く危機的状況を抜け出して、ラナリとテシアを迎えたいっていう思いがあったんだ。それにね、ラクターだって僕を助けてくれた時点でレッドレオには戻ることはできなくなっちゃってるわけさ」
「だろうな。戻れば命がなかったはずだ」
スラム育ちのエルフェリオンが肯定する。
「そうそう。でね、幸いにも僕とラクターはそれなりには戦えたから、比較的簡単に倒せそうなギャングに目をつけて、実力を示した上で乗っ取ったんだ。あとは、それを繰り返すことで、短期間でレッドレオに匹敵するほどの組織を作り上げたってわけさ」
説明したルーニアンはグッと親指を立てた。
そこまで話すとラナリへ哀しげに視線を落とす。
「父にとって、女は政略結婚させるための道具としてのみ存在意義があったんです」
「なによ、それ! いつの時代の話よ! 時代錯誤もいいところだわ!!」
アルナが憤慨する。それをエルフェリオンは「うるせぇよ」の一言で片付けてしまう。当然、アルナも言い返そうとするが、話が進まなくなることを悟り、言葉を飲み込む。
「ですから、わたしが勝手にルーニアンと結婚すること……いえ、付き合うことからして父は猛反対でした」
「なぜだ? ブルータイガーのボスと娘を結婚させれば、レッドレオとしても大幅な勢力拡大に繋がるだろ」
エルフェリオンの疑問に答えを返したのはルーニアンだ。
「それが、ラナリと付き合いだしたころの僕は、レッドレオの構成員のひとりに過ぎなかったんだ。オグリスさんのやり方にはどうにも馴染めず、かといって抜ける勇気もない弱虫だったなぁ」
ルーニアンは過去の自分を思い出して苦笑する。
「父は、お金と力こそが全てという考えでしたから。ですが、ルーニアンはそんな父のやり方に納得がいかず、意見しては殴られていました。わたしは、それでも諦めずに父と向き合うルーニアンに惹かれていきました。ですが……」
そこまで話して、ラナリはテシアのことを気にする。
「あ~、テシアちゃん。オイラと向こうで遊ぶっすか? テシアちゃんがやりたい遊びに付き合うっすよ!」
「本当!? じゃあね、おままごと!!」
気を利かせたラクターがテシアを隣室へと連れて行く。
「それでさ、僕とラナリは密やかに愛を育んだんだ。その結果、あの超かわいいテシアが産まれたんだよぉ!」
「……ルーニアン、顔がだらしなくなってるわよ……」
隣室をデレ顔で見つめるルーニアンにラナリはため息混じりで言う。
「おっと、失礼。テシアのことになるとどうもね。……それで、テシアが産まれればオグリスさんも認めてくれるかと思ったんだけどさぁ、どうやら甘かったんだ。認めてくれるどころか危うく殺されそうになっちゃったよ。アハハハハハ」
明るく笑うルーニアン。だが、アルナは顔を引き攣らせる。
(アハハハハハって、そんなポップに話す内容でもないわよね?)
アルナのそんな考えを置き去りに、ルーニアンはさらに話を続ける。
「当時からボクを慕ってくれていたラクターの手助けで九死に一生を得た僕は、この地下街に逃げ込んだんだ。ところがだ、地下街では小規模なギャングがしのぎを削る争いをしていてね。いやぁ、ほんとに大変だったよ」
(大変だったんだろうが、こいつの話し方からはそれが伝わってこないな)
エルフェリオンは内心で密かに思う。
「だけどさぁ、僕としても少しでも早く危機的状況を抜け出して、ラナリとテシアを迎えたいっていう思いがあったんだ。それにね、ラクターだって僕を助けてくれた時点でレッドレオには戻ることはできなくなっちゃってるわけさ」
「だろうな。戻れば命がなかったはずだ」
スラム育ちのエルフェリオンが肯定する。
「そうそう。でね、幸いにも僕とラクターはそれなりには戦えたから、比較的簡単に倒せそうなギャングに目をつけて、実力を示した上で乗っ取ったんだ。あとは、それを繰り返すことで、短期間でレッドレオに匹敵するほどの組織を作り上げたってわけさ」
説明したルーニアンはグッと親指を立てた。
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