スラム育ちの英雄譚

美山 鳥

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第12章 アークデーモンとの死闘、そして旅立ち

12―2 アークデーモンの元へ……

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 「まさか、ティクからあまり離れていないような場所にアークデーモンが、ね」

 ティクの東門を出て、南東に向かった先の湖畔に巨大な岩山がそびえ立っている。その下にポッカリと開いた横穴を見つめて、アルナが呟く。

 「しっかし、よく今まで何事もなかったんだな?」

 エルフェリオンの疑問は当然のものであった。湖はティクからも近いため訪れる住人も多い。故に、湖畔の岩山に横穴があれば誰かが気付くはずである。

 「それがね、この横穴は最近になって発見されたのですわ。この間、地震があったのですが、その時に岩山の一部が崩れたってわけですわ」

 先に来ていたネティエが説明する。

 「んでもって、冒険者ギルドによる調査の結果、アークデーモンの存在が明らかになったんだ。そこで、ルアークの旦那が幻影魔術のミラージュをかけてここを隠し、水質調査の名目で一般人が湖に近付くのを規制していたのさ」

 ネティエの説明をザラギスが引き継ぐ。

 「それにしても、アークデーモンがよく今までおとなしくしてましたね。普通は出てきちゃいそうなんですけど?」

 アルナの疑問にルアークはコクリと頷く。

 「確かにそう思われますよね。しかし、ここにいるアークデーモンは封印された状態なのです。が、その封印もかなり経年劣化しており、いつ解けてもおかしくありません。ボクとしては戦力が整い次第、こちらから打って出るつもりでした。そして、ようやくアークデーモンを討ち取るだけの戦力が揃ったわけです」 

 ルアークは、集まった戦力に自信をのぞかせる。

 「だな! 今、ここに集まったのはティクの冒険者ギルドの最大戦力といっていいだろうぜ」
 「はい、ボクも同感です。それでは早速アークデーモンの封印場所まで向かいましょう。ついてきてください」

 ザラギスに続いて発言したルアークは、先頭に立って岩山の穴へと入っていった。

◎★☆◎

 岩山に開いた横穴は、少し進むと螺旋状の下り階段になっていた。狭く暗い階段を一列になって進む。先頭からルアーク、ザラギス、エルフェリオン、ネティエ、アルナの順番だ。また、アルナが照明用の魔術ライト・ボールを発動して光球を作り出しているため、移動するぶんに問題ない明るさが確保されている。

 「もう少し進めば広い通路に出ます。そこからさらに先に行くと……行ってみてのお楽しみですね」

 後ろに視線を流して微笑むルアーク。

 (アークデーモン討伐に来て、お楽しみと言われてもなぁ……)

 エルフェリオンは怪訝けげんな顔をする。それは他の3人も同様であった。

 ルアークはそんなことなどお構いなしにどんどん進み、螺旋階段を下りきって、さらに通路を歩いていく。そんな一行の前に大きな扉があらわれた。

 「さぁ、この扉の向こう側にアークデーモンがいる。気を引き締めていこう」

 (楽しみにしろと言っておいて、今度は気を引き締めろかよ)

 エルフェリオンは、やれやれと言いたげに「ふぅ」と息を漏らす。
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