スラム育ちの英雄譚

美山 鳥

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第12章 アークデーモンとの死闘、そして旅立ち

12―4 アークデーモンの覚醒

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 魔法陣が消失したドーム内に静寂の時が流れる。それと同時に途轍もなく邪悪な気配と強大な魔力が溢れ出す。

 「くっ!」

 ルアークをはじめ、その場にいた冒険者たちは、今まさに永き眠りから目覚めようとしているアークデーモンから距離をとる。

 「こいつ、相当やべぇな。等級はエルダー級とかいってたか」

 エルフェリオンは突き刺さるような強烈な殺気を肌で感じながらも口元に笑みをこぼす。

 「ようやく、忌まわしき封印が解けたか……」

 低い声が発したアークデーモンがゆっくりとまぶたを開けると、深紅の瞳があらわとなった。

 「ん? 脆弱ぜいじゃくなる人間どもか。ワレの封印を解いたのはキサマらか?」

 アークデーモンは眼前で厳戒態勢をとって各々の武器を構えている冒険者たちに問う。

 「ああ。そんで、あんたを倒す者でもある」

 誰もが声を発せられず沈黙しているなか、エルフェリオンだけが物怖じせずに答える。

 「ほぉ。威勢だけはいい小僧では……」

 エルフェリオンが持つ邪龍槍に目を止めたアークデーモンが、自らの言葉を止める。

 「その武器は……まさか龍武具か?」
 「へぇ~、わかってるじゃねぇか」

 肯定するエルフェリオンに、アークデーモンはニヤリと不気味な笑みをこぼす。

 「人間ごときに使役されるとは、いったい、どこのマヌケな龍なのだろうな」
 「こいつは邪龍レヴィジアルだ」

 エルフェリオンが答えると、アークデーモンは両眼を大きく見開く。

 「まさか!……邪龍レヴィジアルが、人間ごときに龍武具として使役されているだと!?」

 アークデーモンは驚きを隠せない様子だったが、やがて嘲笑する。

 「ギャハハハハハハ! なんという醜態! 邪龍レヴィジアルも地に堕ちたものだな!!」
 『アークデーモンごときが調子にのりおって。わしを愚弄したことを後悔させてやらねばのぉ』

 レヴィジアルが静かに怒りの声を漏らすが、それを聞く者はエルフェリオン以外にはいない。

 「まぁ、よい。この場にいる者全員を血祭りにあげ、その後は人間どもを皆殺しにしてくれるわぁ!!」

 咆哮したアークデーモンは背中の両翼をバッと勢いよく広げる。放たれた魔力は衝撃波となってドーム内を駆け抜ける。

 「残念ながら、あなたはここで討伐させていただきます! たとえ、我々の命に代えても!!」

 愛用の長剣を構えたルアークはアークデーモンをジロリと見据えた。
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