スラム育ちの英雄譚

美山 鳥

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第12章 アークデーモンとの死闘、そして旅立ち

12―6 VSエルダー級アークデーモン②

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 「闘気戦術・連舞!」

 エルダー級アークデーモンとの間合いを詰めたエルフェリオンは邪龍槍に闘気を纏わせ、斬撃と刺突を組み合わせた連続攻撃をくり出す。だが、浅く傷つけるばかりで決定打には繋がらない。

 「ククククク……こんな未熟者にいいように使われるとは、邪龍も地に落ちたものだな」

 口元に侮蔑の笑みを張り付けたエルダー級アークデーモンが、自身の魔力を高める。

 「ちっ!」

 バックステップで間合いをとったエルフェリオンにエルダー級アークデーモンは両手をかざす。

 「まずは、貴様から消してやろう。邪龍レヴィジアルとともにな!……バーニング・ショット!!」

 両手から放たれた二つの火炎弾がエルフェリオンを飲み込む。

 「うぁぁぁぁぁぁ!!」
 「エルフェリオン!?」

 エルフェリオンとアルナの叫び声がドームに響く。

 「フハハハハハハハ!」

 火炎の中のエルフェリオンは、邪龍槍を杖代わりに片膝を折る。

 「ヒール!!」

 アルナは回復魔術をエルフェリオンにかける。淡い黄緑色の光がエルフェリオンを優しく包み込む。

 「エルフェリオン! しっかりしなさいよね!?」

 駆け寄ったアルナにエルフェリオンはニヤリと笑む。

 「まいったぜ、こいつはマジでつえぇ……そんで、それ以上におもしれぇ!!」

 嬉々とした表情を見せるエルフェリオンに、アルナはドン引きする。

 その間にもルアークとザラギスとネティエによる連携攻撃は、エルダー級アークデーモンに着実にダメージを与えていく。

 「うっとうしいハエどもだ。バーニング・ウィップ!」

 苛ついたエルダー級アークデーモンが魔力により作り出した火炎の鞭を素早く全方位にふるう。だが、熟練した戦闘技術を有する3人は寸前のところで飛び退いてかわす。

 「エア・ショット」

 ネティエに狙いを定めたエルダー級アークデーモンが圧縮された空気弾を撃った。

 バンッ

 ネティエは小盾でそれを受け止めるが、体ごと弾き飛ばされてしまう。

 床に両膝をついてたネティエにとどめを刺そうと、飛翔したエルダー級アークデーモンが今度は急降下する。

 「死ねぃ!」

 急降下による加速に加え、全体重を乗せた右拳をネティエに放とうとするエルダー級アークデーモン。

 「闘気戦術・衝打!!」

 黒い魔力を纏ったエルフェリオンが弾丸の如く疾走し、邪龍槍から変形させた邪龍鎚を水平に振り抜く。

 ドガァッ

 「ぬぉぉぉ!!」

 強烈な一撃を頭部に直撃したエルダー級アークデーモンは床でバウンドし、何度も激しく打ち付けられる。

 「これは驚いた。ただのヒヨッコと思っていたが、案外まともな一撃を入れることもできるようだな。不意打ちとはいえ、今のは効いたぞ」

 あくまでも余裕の態度を崩さず、ゆっくりとした動作で立ち上がるエルダー級アークデーモン。

 「そいつはなにより。ただ、俺のパートナーも侮らないほうがいいと思うがな?」

 エルフェリオンが忠告した刹那、エルダー級アークデーモンは背後に気配を感じ、咄嗟に黒い魔力を身に纏って防御態勢をとる。

 「ホーリー・レイ!!」

 白い魔力を全身に帯びたアルナが至近距離射撃した白い光線が、エルダー級アークデーモンの右肩を貫く。

 「ぐぉ!」

 苦悶に表情を歪ませたエルダー級アークデーモンが空中へと退避する。

 「あなたは黒い魔力なのね。それなら、あたしの白い魔力はかなり効いたんじゃないかしら?」
 「……それを言うならば、白い魔力を宿す貴様にとっては我が黒い魔力は脅威となり得る。これでもくらうがいい。アイシクル・ガトリング!」

 エルダー級アークデーモンが魔術を発動した瞬間、ドーム内の空気が冷気を帯び、空中に巨大な氷柱つららが幾つも出現し、一斉に降り注ぐ。

 「魔力同士の相性って、そんなにも重要なのかよ?」

 降り注ぐ氷柱つららを散り散りになってかわしながら、エルフェリオンがレヴィジアルに問う。

 『……魔術戦においては、黒い魔力と白い魔力、赤い魔力と青い魔力のように魔力の相性は、勝敗を左右する要因のひとつとなろう』
 「だったら、やつと同じ黒い魔力の俺の攻撃は問題ないのか?」
 『うむ。おぬしは邪龍武具わしと闘気を使った戦いが基本じゃからのぉ』
 「なぁるほど。それを聞いて安心したぜ」

 レヴィジアルからの回答に、エルフェリオンは口角を上げた。
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