197 / 224
第12章 アークデーモンとの死闘、そして旅立ち
12―14 仲間の死を越えて
しおりを挟む
「……よく、も……がはっ!」
憎悪した表情でアルナを睨みつけたバゾンが吐血し、そのまま倒れる。
だが、あまりにも強大な敵を相手にエルフェリオンたちは警戒を解かないまま暫しの時間が流れる。
「……ふぅぅ……」
長い沈黙のなか、遂に完全に息絶えたバゾンの肉体が霧消していくのを見て、ルアークがため息を吐く。
「……今回はマジで疲れたぜ……死ぬかと思ったぞ」
緊張が解けたザラギスも大鎚を床に置くとドカリと座り込む。
「やっぱ、強ぇやつと戦うのはおもしれぇな」
エルフェリオンは邪龍鎚をしまい、笑みをこぼす。しかし、アルナは床に横たわったままのネティエの元へと歩み寄る。
「……ネティエさん、仇はとったよ。あたしたち、ネティエさんのおかげで勝てたからね……」
冷たくなった手をとって囁きかけるアルナ。他の面々も集まってくる。
「そうですね。たしかにここにいるだれが欠けてもこの勝利はあり得ませんでした。しかし、その代償としてかけがえのない仲間を……」
沈痛な面持ちでルアークが言う。
「しょうがねぇだろ。さっきも言ったが、冒険者なんてのは明日をも知れぬ職業だ」
「エルフェリオン!!」
アルナは立ち上がり、エルフェリオンの胸ぐらをつかむ。
「よせよ、アルナ嬢ちゃん。今回はエルフェリオンの言い分も一理あるぜ。オラもこの仕事を長ぇ間続けてきた。もう、仲間の死を何度見届けてきたかもわからねぇ。勇敢に戦って死んでいったやつもいれば、オラたちを見捨てて逃走しようとして殺されたやつもいた。跡形もなく消し飛ばされたやつや惨たらしく殺されたやつもな……そして、一つ違えればオラがそうなっていたかもわからねぇんだ。ネティエだって、いつ自分が殺されるかわからねぇことくらいは覚悟してたはずだぞ」
歴戦の冒険者であるザラギスの言葉には重みがあり、アルナは押し黙る。
「とにかく、いつまでもここにいてもしかたありません。それに、ネティエさんを少しでも早くティクに連れ帰ってあげましょう」
「そうだな。ネティエはオラが背負っていこう」
ルアークの提案にザラギスが賛成し、その背中を差し出す。
「決まりだな。それじゃ、俺は大鎚を持ってやるよ」
床に置かれた大鎚を拾い上げたエルフェリオンは、わずかに眉を上げる。ズシリとしたそれは予想をはるかに超える重量を有していた。
「へっへっへっ、見た目以上に重いだろ?」
ザラギスがニヤリと笑む。
「おまえ、こんなのを振り回してたのかよ」
「まぁな。そいつの性能を十二分に発揮するために日々の鍛錬は欠かせねぇってわけさ」
『ふむ。おぬしも見習わねばならぬようじゃな。おぬしが邪龍武具の性能を引き出せておれば、アークデーモンごときに手こずることなどなかったのじゃからのぉ。そもそも、基本的な身体能力もまだまだ低いというのもあるがの』
レヴィジアルが苦言を呈する。が、エルフェリオンは何も答えない。
「さぁ、帰ろう。ティクの町へ!」
ルアークたちは疲労感を感じながらも、同時に達成感を胸に帰還するのだった。
憎悪した表情でアルナを睨みつけたバゾンが吐血し、そのまま倒れる。
だが、あまりにも強大な敵を相手にエルフェリオンたちは警戒を解かないまま暫しの時間が流れる。
「……ふぅぅ……」
長い沈黙のなか、遂に完全に息絶えたバゾンの肉体が霧消していくのを見て、ルアークがため息を吐く。
「……今回はマジで疲れたぜ……死ぬかと思ったぞ」
緊張が解けたザラギスも大鎚を床に置くとドカリと座り込む。
「やっぱ、強ぇやつと戦うのはおもしれぇな」
エルフェリオンは邪龍鎚をしまい、笑みをこぼす。しかし、アルナは床に横たわったままのネティエの元へと歩み寄る。
「……ネティエさん、仇はとったよ。あたしたち、ネティエさんのおかげで勝てたからね……」
冷たくなった手をとって囁きかけるアルナ。他の面々も集まってくる。
「そうですね。たしかにここにいるだれが欠けてもこの勝利はあり得ませんでした。しかし、その代償としてかけがえのない仲間を……」
沈痛な面持ちでルアークが言う。
「しょうがねぇだろ。さっきも言ったが、冒険者なんてのは明日をも知れぬ職業だ」
「エルフェリオン!!」
アルナは立ち上がり、エルフェリオンの胸ぐらをつかむ。
「よせよ、アルナ嬢ちゃん。今回はエルフェリオンの言い分も一理あるぜ。オラもこの仕事を長ぇ間続けてきた。もう、仲間の死を何度見届けてきたかもわからねぇ。勇敢に戦って死んでいったやつもいれば、オラたちを見捨てて逃走しようとして殺されたやつもいた。跡形もなく消し飛ばされたやつや惨たらしく殺されたやつもな……そして、一つ違えればオラがそうなっていたかもわからねぇんだ。ネティエだって、いつ自分が殺されるかわからねぇことくらいは覚悟してたはずだぞ」
歴戦の冒険者であるザラギスの言葉には重みがあり、アルナは押し黙る。
「とにかく、いつまでもここにいてもしかたありません。それに、ネティエさんを少しでも早くティクに連れ帰ってあげましょう」
「そうだな。ネティエはオラが背負っていこう」
ルアークの提案にザラギスが賛成し、その背中を差し出す。
「決まりだな。それじゃ、俺は大鎚を持ってやるよ」
床に置かれた大鎚を拾い上げたエルフェリオンは、わずかに眉を上げる。ズシリとしたそれは予想をはるかに超える重量を有していた。
「へっへっへっ、見た目以上に重いだろ?」
ザラギスがニヤリと笑む。
「おまえ、こんなのを振り回してたのかよ」
「まぁな。そいつの性能を十二分に発揮するために日々の鍛錬は欠かせねぇってわけさ」
『ふむ。おぬしも見習わねばならぬようじゃな。おぬしが邪龍武具の性能を引き出せておれば、アークデーモンごときに手こずることなどなかったのじゃからのぉ。そもそも、基本的な身体能力もまだまだ低いというのもあるがの』
レヴィジアルが苦言を呈する。が、エルフェリオンは何も答えない。
「さぁ、帰ろう。ティクの町へ!」
ルアークたちは疲労感を感じながらも、同時に達成感を胸に帰還するのだった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる