209 / 224
第14章 大農園を救え
14―1 目指すはグワンドラ
しおりを挟む
ティクの町で冒険者としての経験と実績を積んだ放浪者は、乗合馬車に揺られていた。
「次はグワンドラの町だったか?」
座席で車窓から外の景色をぼんやりと眺めていたアルナに、隣に座るエルフェリオンの声が届く。
「ええ、そうよ。ティクからベルストラインへ直行する便はないからね。だから、まずはグワンドラを経由してルッカスの港町へ向かうのよ」
「そのルッカスの港町からは船なのか?」
「違うわ。ルッカスからは飛行船でベルストラインへ向かう予定よ」
アルナの説明に、エルフェリオンは「ふぅん」と納得する。
「ねぇねぇ、君ぃ!」
近付いてきた若い男が、アルナに軽いノリで声をかける。
「あたし?」
キョトンとして聞き返すアルナに、若い男はオレンジ色の瞳で見つめ、白い歯を見せてウインクし、銀髪をかき上げる。
「そう、君だよ君! そんなやつと話してないでオレサマの隣においでよ。ね?」
若い男は、馴れ馴れしくアルナの肩に手を伸ばそうとする。
「やめとけ。こいつはおまえの手には余るぜ?」
エルフェリオンの言葉に若い男は眉根を寄せる。
「あん? 勝手に出しゃばってくんじゃねぇよ!」
不快感をあらわにして言い放つ若い男を、エルフェリオンはフンと鼻で笑う。それが余計に気に入らなかったらしく、若い男は、アルナに伸ばしてかけていた手で、エルフェリオンの胸ぐらを掴む。
「いい度胸だな、おい! このオレサマを苛つかせたからには覚悟はできてるんだろうな!?」
「覚悟? さてね、なんの覚悟が要るのやら?」
余裕の態度を一切崩さず、エルフェリオンはやれやれと肩をすくめる。
「上等……」
「モンスターだぁぁ!」
我慢の限界に達した若い男が拳を振り上げた刹那、御者の叫び声があがり、馬車が急停車する。
「モンスターだって!?」
「だ、大丈夫だ! 馬車には護衛の用心棒がいるはず!」
乗客たちは狼狽えている。
「ちっ、モンスターどものお出ましかよ!」
若い男は舌打ちをし、座っていた席から弓矢を手にとって馬車から飛び出る。
「エルフェリオン、あたしたちも行くわよ!」
アルナも若い男に続くように馬車から出ていく。
『ほれほれ、なにをしておる。おぬしもさっさと行かぬか。わしは小腹が空いておるのじゃぞ。この際、贅沢は言わぬ。モンスターの魂でもよいから喰わせろ』
レヴィジアルが食事の催促をする。
「しょうがねえなぁ。まっ、ちっとは楽しめる相手かもしれねぇし、行ってみるか」
エルフェリオンはようやく重い腰を上げて馬車の外へと向かうのだった。
「次はグワンドラの町だったか?」
座席で車窓から外の景色をぼんやりと眺めていたアルナに、隣に座るエルフェリオンの声が届く。
「ええ、そうよ。ティクからベルストラインへ直行する便はないからね。だから、まずはグワンドラを経由してルッカスの港町へ向かうのよ」
「そのルッカスの港町からは船なのか?」
「違うわ。ルッカスからは飛行船でベルストラインへ向かう予定よ」
アルナの説明に、エルフェリオンは「ふぅん」と納得する。
「ねぇねぇ、君ぃ!」
近付いてきた若い男が、アルナに軽いノリで声をかける。
「あたし?」
キョトンとして聞き返すアルナに、若い男はオレンジ色の瞳で見つめ、白い歯を見せてウインクし、銀髪をかき上げる。
「そう、君だよ君! そんなやつと話してないでオレサマの隣においでよ。ね?」
若い男は、馴れ馴れしくアルナの肩に手を伸ばそうとする。
「やめとけ。こいつはおまえの手には余るぜ?」
エルフェリオンの言葉に若い男は眉根を寄せる。
「あん? 勝手に出しゃばってくんじゃねぇよ!」
不快感をあらわにして言い放つ若い男を、エルフェリオンはフンと鼻で笑う。それが余計に気に入らなかったらしく、若い男は、アルナに伸ばしてかけていた手で、エルフェリオンの胸ぐらを掴む。
「いい度胸だな、おい! このオレサマを苛つかせたからには覚悟はできてるんだろうな!?」
「覚悟? さてね、なんの覚悟が要るのやら?」
余裕の態度を一切崩さず、エルフェリオンはやれやれと肩をすくめる。
「上等……」
「モンスターだぁぁ!」
我慢の限界に達した若い男が拳を振り上げた刹那、御者の叫び声があがり、馬車が急停車する。
「モンスターだって!?」
「だ、大丈夫だ! 馬車には護衛の用心棒がいるはず!」
乗客たちは狼狽えている。
「ちっ、モンスターどものお出ましかよ!」
若い男は舌打ちをし、座っていた席から弓矢を手にとって馬車から飛び出る。
「エルフェリオン、あたしたちも行くわよ!」
アルナも若い男に続くように馬車から出ていく。
『ほれほれ、なにをしておる。おぬしもさっさと行かぬか。わしは小腹が空いておるのじゃぞ。この際、贅沢は言わぬ。モンスターの魂でもよいから喰わせろ』
レヴィジアルが食事の催促をする。
「しょうがねえなぁ。まっ、ちっとは楽しめる相手かもしれねぇし、行ってみるか」
エルフェリオンはようやく重い腰を上げて馬車の外へと向かうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる