208 / 224
第13章 龍滅の戦神②
13―8 ルドアの帰還
しおりを挟む
「ふむ。正直なところ、デュージャ君には失望させられてしまったよ」
地下水路から戻ったデュージャから報告を聞いたギゼムが嘆息を漏らす。
「も、申し訳ございません!」
デュージャは額を床につけて土下座する。
「この僕がだよ、グレーターベアをプレゼントしてやったというのに、成果を出せないというのはどういうことなのかな?」
ギゼムは椅子に腰かけたまま凍てつくような視線をデュージャに向ける。
「それは、その……」
上手く説明できないデュージャの額からは冷や汗が止まらない。死への恐怖心から全身がガタガタと震えだす。
「君のような無能はすぐに処分してもいいんだけど、僕は寛大な心の持ち主だ。今回に限り、失態は許してあげようじゃないか」
「あ、ありがとうございます!!」
許されたことへの安堵からデュージャの瞳から大粒の涙がこぼれる。ここでようやく震えが止まった。
「ただし、今後は二度と失敗は許されないと思うんだね。君には何一つ期待していないけど、せめて、英雄たる僕の機嫌を損ねるのだけはやめておくほうがいい。長生きしたくなければ話は別だけどさ」
ギゼムの手がデュージャの肩に置かれる。瞬間、デュージャは湧き上がる恐怖に抗えず、再び震えが止まらない。
「も、もちろん今後、このような失敗はいたしません! お誓い申し上げます!!」
デュージャの誓いの言葉を聞き、ギゼムはニコリと笑う。
「そうか。わかってくれればそれでいいんだ。もう、行っていいよ」
「はっ、失礼いたします!」
ようやく退場の許しが出たことでデュージャは逃げるように部屋を出ていく。
「まったく、愚かな部下を持ってしまうと苦労するね……」
デュージャの背中を見送ったギゼムが愚痴る。
ガチャ
「やぁ、ルドア。もう片付けて帰還したのか。いつものことながら仕事が早いね」
デュージャと入れ違いに入ってきた隻眼の男を、ギゼムは笑顔で迎える。
「ったりめぇだろうが。山賊討伐ごときに時間をかけてられるかよ。まぁ、弱ぇやつをなぶり殺しにするのは気分がいいがな」
ルドアは、山賊を虐殺した時を思い出して愉悦の笑みを浮かべる。
「アハハハハハ! ルドアはそれでこそルドアらしいよ」
「んだよ、そりゃ。……そんなことよりも、オレがいねぇ間におもしれぇことが起きたそうだな?」
ルドアがニヤリと笑む。
「あぁ、僕の屋敷に乗り込んでくるなんてバカなやつらだよ。もっとも、返り討ちにするのは楽しかったけどね。ただ、ひとりに逃げられたのは気にくわないよ」
「べつにいいだろ。それとも、逃げたやつはそれほど脅威になる可能性のあるやつだったのか?」
怪訝な表情で訊いてくるルドアにギゼムは「まさか」と笑いながら答える。
「龍滅の戦神の脅威になり得るものなど存在しないよ。だけど、僕の予想どおりに動かないのが気に入らないのさ。デュージャにその追撃を命じたんだけど、失敗してきたようでね」
ここでギゼムはため息を吐く。
「なるほど。しっかし、おまえが失敗して帰ってきたやつを生かしておくなんて珍しいじゃないか?」
「まぁね。彼にはもう少し役に立ってもらおうと思ってるんだ。猛獣使いはわりとレアだし。それで使えなければ、その時に処分すればいいだけさ」
「違ぇねぇな」
ギゼム邸の応接室から二人の笑い声が漏れていた。
地下水路から戻ったデュージャから報告を聞いたギゼムが嘆息を漏らす。
「も、申し訳ございません!」
デュージャは額を床につけて土下座する。
「この僕がだよ、グレーターベアをプレゼントしてやったというのに、成果を出せないというのはどういうことなのかな?」
ギゼムは椅子に腰かけたまま凍てつくような視線をデュージャに向ける。
「それは、その……」
上手く説明できないデュージャの額からは冷や汗が止まらない。死への恐怖心から全身がガタガタと震えだす。
「君のような無能はすぐに処分してもいいんだけど、僕は寛大な心の持ち主だ。今回に限り、失態は許してあげようじゃないか」
「あ、ありがとうございます!!」
許されたことへの安堵からデュージャの瞳から大粒の涙がこぼれる。ここでようやく震えが止まった。
「ただし、今後は二度と失敗は許されないと思うんだね。君には何一つ期待していないけど、せめて、英雄たる僕の機嫌を損ねるのだけはやめておくほうがいい。長生きしたくなければ話は別だけどさ」
ギゼムの手がデュージャの肩に置かれる。瞬間、デュージャは湧き上がる恐怖に抗えず、再び震えが止まらない。
「も、もちろん今後、このような失敗はいたしません! お誓い申し上げます!!」
デュージャの誓いの言葉を聞き、ギゼムはニコリと笑う。
「そうか。わかってくれればそれでいいんだ。もう、行っていいよ」
「はっ、失礼いたします!」
ようやく退場の許しが出たことでデュージャは逃げるように部屋を出ていく。
「まったく、愚かな部下を持ってしまうと苦労するね……」
デュージャの背中を見送ったギゼムが愚痴る。
ガチャ
「やぁ、ルドア。もう片付けて帰還したのか。いつものことながら仕事が早いね」
デュージャと入れ違いに入ってきた隻眼の男を、ギゼムは笑顔で迎える。
「ったりめぇだろうが。山賊討伐ごときに時間をかけてられるかよ。まぁ、弱ぇやつをなぶり殺しにするのは気分がいいがな」
ルドアは、山賊を虐殺した時を思い出して愉悦の笑みを浮かべる。
「アハハハハハ! ルドアはそれでこそルドアらしいよ」
「んだよ、そりゃ。……そんなことよりも、オレがいねぇ間におもしれぇことが起きたそうだな?」
ルドアがニヤリと笑む。
「あぁ、僕の屋敷に乗り込んでくるなんてバカなやつらだよ。もっとも、返り討ちにするのは楽しかったけどね。ただ、ひとりに逃げられたのは気にくわないよ」
「べつにいいだろ。それとも、逃げたやつはそれほど脅威になる可能性のあるやつだったのか?」
怪訝な表情で訊いてくるルドアにギゼムは「まさか」と笑いながら答える。
「龍滅の戦神の脅威になり得るものなど存在しないよ。だけど、僕の予想どおりに動かないのが気に入らないのさ。デュージャにその追撃を命じたんだけど、失敗してきたようでね」
ここでギゼムはため息を吐く。
「なるほど。しっかし、おまえが失敗して帰ってきたやつを生かしておくなんて珍しいじゃないか?」
「まぁね。彼にはもう少し役に立ってもらおうと思ってるんだ。猛獣使いはわりとレアだし。それで使えなければ、その時に処分すればいいだけさ」
「違ぇねぇな」
ギゼム邸の応接室から二人の笑い声が漏れていた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる