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第14章 大農園を救え
14―5 べダフからの依頼
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「実はですね、冒険パーティ放浪者に依頼したい案件がありましてね」
べダフはそう切り出し、内容の説明を始める。
「この宿でお客さんに提供する食事は、契約農園で採れた食材を使ってるんですが、最近、その農園がモンスターの被害に遭っているらしく、納品されないんですよ。そこで、明日にでも農園のほうへ様子を見に行ってもらえないかと……」
べダフから依頼内容を聞いたエルフェリオンが口を開く。
「なるほどな。さっきあんたの奥さんが一瞬だけ困ったような表情をしたのはそれが原因ってところか。まっ、俺はべつにかまわねぇが、その農園のやつらだってなにもしてねぇわけじゃねぇだろ。例えば、冒険者ギルドに討伐依頼を出すとか」
エルフェリオンからの指摘にべダフは「たしかに」と肯定し、さらに続ける。
「エルフェリオンさんのおっしゃるとおりです。もちろん、これまで何度も冒険者ギルドに討伐依頼は出したそうなんです。その度に群れを全滅させることには成功するんですが、数日後にはまた別のモンスターの群れがやってくるらしく……」
べダフは握った拳を怒りから震わせている。
「そりゃ災難だな。しかし、契約農園というだけで代わりにあんたらが討伐依頼を出すのか? 随分と気前がいいというか、普通なら別の契約先を見つけるとかの対策をするんじゃないのか?」
「実は、その契約農園というのは、あっしの実家なんですよ。今は妹夫婦が経営してます。だから、あっしとしちゃ放っておけないんです」
エルフェリオンの疑問にべダフは答える。
「ねぇ、エルフェリオン。あたしはこの件を引き受けようと思う。あんたは?」
アルナに問われ、エルフェリオンは寝転がっていたベッドから上体を起こし、答える。
「まっ、モンスターの群れを相手に大暴れするのも悪くねぇよな。いいぜ、やってやる」
「ありがとうございます! では、この件は明日の朝一番に冒険者ギルドに依頼します。もちろん、放浪者への指名依頼という形で!」
暗かった表情から一転して明るく言うべダフ。
「待って。わざわざ冒険者ギルドへ依頼を出さなくてもいいわよ。今夜、お世話になるんだし」
「いいえ、そういうわけにはいきません。ギルドを通さずに依頼しても放浪者の実績には影響しませんよね。だからこそ、あっしは冒険者ギルドを通じて正式に放浪者に依頼したいんです」
朝一で冒険者ギルドへ行こうとするべダフを止めるアルナだったが、べダフは確固たる意志を持って答える。
「……あたしたちは実績とかそういうのは気にしないんだけど……。それより、べダフさんの気持ちだけで嬉しいわ」
「いえいえ。これはお二方に対するあっしの誠意の表れと思ってください。それじゃ、食事の用意ができるまでもう少しお待ちください。では……」
安堵したように明るい表情となったべダフが客室から出ていった。
べダフはそう切り出し、内容の説明を始める。
「この宿でお客さんに提供する食事は、契約農園で採れた食材を使ってるんですが、最近、その農園がモンスターの被害に遭っているらしく、納品されないんですよ。そこで、明日にでも農園のほうへ様子を見に行ってもらえないかと……」
べダフから依頼内容を聞いたエルフェリオンが口を開く。
「なるほどな。さっきあんたの奥さんが一瞬だけ困ったような表情をしたのはそれが原因ってところか。まっ、俺はべつにかまわねぇが、その農園のやつらだってなにもしてねぇわけじゃねぇだろ。例えば、冒険者ギルドに討伐依頼を出すとか」
エルフェリオンからの指摘にべダフは「たしかに」と肯定し、さらに続ける。
「エルフェリオンさんのおっしゃるとおりです。もちろん、これまで何度も冒険者ギルドに討伐依頼は出したそうなんです。その度に群れを全滅させることには成功するんですが、数日後にはまた別のモンスターの群れがやってくるらしく……」
べダフは握った拳を怒りから震わせている。
「そりゃ災難だな。しかし、契約農園というだけで代わりにあんたらが討伐依頼を出すのか? 随分と気前がいいというか、普通なら別の契約先を見つけるとかの対策をするんじゃないのか?」
「実は、その契約農園というのは、あっしの実家なんですよ。今は妹夫婦が経営してます。だから、あっしとしちゃ放っておけないんです」
エルフェリオンの疑問にべダフは答える。
「ねぇ、エルフェリオン。あたしはこの件を引き受けようと思う。あんたは?」
アルナに問われ、エルフェリオンは寝転がっていたベッドから上体を起こし、答える。
「まっ、モンスターの群れを相手に大暴れするのも悪くねぇよな。いいぜ、やってやる」
「ありがとうございます! では、この件は明日の朝一番に冒険者ギルドに依頼します。もちろん、放浪者への指名依頼という形で!」
暗かった表情から一転して明るく言うべダフ。
「待って。わざわざ冒険者ギルドへ依頼を出さなくてもいいわよ。今夜、お世話になるんだし」
「いいえ、そういうわけにはいきません。ギルドを通さずに依頼しても放浪者の実績には影響しませんよね。だからこそ、あっしは冒険者ギルドを通じて正式に放浪者に依頼したいんです」
朝一で冒険者ギルドへ行こうとするべダフを止めるアルナだったが、べダフは確固たる意志を持って答える。
「……あたしたちは実績とかそういうのは気にしないんだけど……。それより、べダフさんの気持ちだけで嬉しいわ」
「いえいえ。これはお二方に対するあっしの誠意の表れと思ってください。それじゃ、食事の用意ができるまでもう少しお待ちください。では……」
安堵したように明るい表情となったべダフが客室から出ていった。
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