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第14章 大農園を救え
14―8 アルナという希望
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「本当に、本当に助かりました! なんとお礼を申し上げてよいのやら!」
セト大農園の経営者ルフェスは、ハーピーとニードル・ボアの群れを撃退した冒険パーティ放浪者に心からの謝意を伝えた。
年齢は40代半ば。オールバックの髪は赤く、瞳は紺色である。顎に少しばかりの髭を生やしている。身長は170センチほどで体型は痩せ型だが、農作業で鍛えられているのか程よく筋肉が付いている。
「しかし、農園に甚大な被害が出てしまったみたいですね……」
すっかり荒らされた農園の惨状を見て、アルナが言う。
「ええ。しかし、あなたがたが来られていなければ壊滅的な被害を受けていたことでしょう。ですが、どうしてセト大農園にいらしたのですか?」
「申し遅れました。あたしたちは冒険パーティ放浪者といいます。あたしはアルナ、こっちはエルフェリオンです。今回は、べダフさんからこちらの農園を荒らすモンスターの討伐依頼を受けて参りました」
ルフェスに訊かれ、アルナは自分たちの紹介と来訪の理由を告げる。
「そうだったんですね! お義兄さんには感謝しなければなりませんね。妻は現在、身重でして、モンスターの襲撃が落ち着くまでの間だけ離れているのです」
「そうでしたか。それで、モンスターの群れは何度も襲撃してくるときいたのですが?」
アルナが確認するように訊くと、ルフェスは表情をゆがませた。
「はい。モンスターの群れに襲撃されること自体は、これまで何度も経験してきました。ですが、ここ最近は頻繁に襲われるので困り果てています。このままでは大農園の経営が成り立たなくなるのもそう遠くないかと……。全滅させたとしても、1週間もすればまた別のモンスターの群れが現れてしまう。防護柵の修復や冒険者や用心棒の確保も間に合わず、被害ばかりが拡大していくというのが現状です……」
沈痛な面持ちで答えるルフェスの声は微かに震えており、絶望感がにじみ出ているかのようだ。
「なるほど。でしたら、暫くの間、こちらに滞在させていただいてもかまいませんか? それほど度々モンスターの群れに狙われるというのはおかしい。必ず原因があるはずなので調べさせてほしいんです」
アルナからの思いもしない申し出にルフェスの紺色の瞳に微かな希望が宿る。
「本当ですか!? 原因を調査していただけるのであれば、どんな事でも協力は惜しみません。どうか、いつまででもご滞在ください!」
ルフェスはアルナの手を取る。モンスターによって廃業間近にまで追い詰められている彼にしてみれば、アルナは、絶望という闇の中に差し込んだ一筋の希望の光であった。
セト大農園の経営者ルフェスは、ハーピーとニードル・ボアの群れを撃退した冒険パーティ放浪者に心からの謝意を伝えた。
年齢は40代半ば。オールバックの髪は赤く、瞳は紺色である。顎に少しばかりの髭を生やしている。身長は170センチほどで体型は痩せ型だが、農作業で鍛えられているのか程よく筋肉が付いている。
「しかし、農園に甚大な被害が出てしまったみたいですね……」
すっかり荒らされた農園の惨状を見て、アルナが言う。
「ええ。しかし、あなたがたが来られていなければ壊滅的な被害を受けていたことでしょう。ですが、どうしてセト大農園にいらしたのですか?」
「申し遅れました。あたしたちは冒険パーティ放浪者といいます。あたしはアルナ、こっちはエルフェリオンです。今回は、べダフさんからこちらの農園を荒らすモンスターの討伐依頼を受けて参りました」
ルフェスに訊かれ、アルナは自分たちの紹介と来訪の理由を告げる。
「そうだったんですね! お義兄さんには感謝しなければなりませんね。妻は現在、身重でして、モンスターの襲撃が落ち着くまでの間だけ離れているのです」
「そうでしたか。それで、モンスターの群れは何度も襲撃してくるときいたのですが?」
アルナが確認するように訊くと、ルフェスは表情をゆがませた。
「はい。モンスターの群れに襲撃されること自体は、これまで何度も経験してきました。ですが、ここ最近は頻繁に襲われるので困り果てています。このままでは大農園の経営が成り立たなくなるのもそう遠くないかと……。全滅させたとしても、1週間もすればまた別のモンスターの群れが現れてしまう。防護柵の修復や冒険者や用心棒の確保も間に合わず、被害ばかりが拡大していくというのが現状です……」
沈痛な面持ちで答えるルフェスの声は微かに震えており、絶望感がにじみ出ているかのようだ。
「なるほど。でしたら、暫くの間、こちらに滞在させていただいてもかまいませんか? それほど度々モンスターの群れに狙われるというのはおかしい。必ず原因があるはずなので調べさせてほしいんです」
アルナからの思いもしない申し出にルフェスの紺色の瞳に微かな希望が宿る。
「本当ですか!? 原因を調査していただけるのであれば、どんな事でも協力は惜しみません。どうか、いつまででもご滞在ください!」
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