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第1章 邪龍との邂逅
1ー15 裏切り
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ハイ・トロルを倒した部屋に静寂がもどる。
「うぉっ! なんだ!?」
突如、足元の魔法陣が不気味な輝きを放ったことにゼイナスが驚いて飛び退こうとする。しかし、見えない壁があるかのように魔法陣から出ることができない。
(妙だな……)
エルフェリオンは手を伸ばしてみる。しかし、やはり不可視の壁に阻まれてしまう。
「ギゼム、ルドア。この魔法陣から出ることができないみたいだ。そっちでどうにかできないか?」
エルフェリオンはルドアたちに救助を求める。だが、仲間が窮地に陥っているというのにギゼムたちは行動を起こそうとしない。まるで、この事態を最初から予想していたかのように……
「どうかしたのか?」
違和感を覚えたエルフェリオンに対して、ギゼムは冷笑を浮かべて天井を仰ぐ。
「邪龍レヴィジアルよ、我らの力は示した! この2名を生贄として捧げる。その対価として財宝を望む!!」
ギゼムは視線をあてもなく彷徨わせ、高らかな声を発する。
「生贄だと!? おい! そりゃいったいどういう意味だ!!?」
ゼイナスがギゼムに飛びかからんばかりの剣幕で叫ぶ。それに対して返答したのはルドアだった。
「わからねぇのか? オレたちは最初からおまえたちを生贄にするためだけに、この場所まで連れてきてやったのさ。そうでもなきゃ、だれがおめぇらなんかをこんな所まで連れてくるかよ!」
隻眼の剣士ルドアは可笑しそうに笑う。
「君たちのように、元々スラム街で暮らしてる連中なら消息を絶ったところで問題にならない。せめて、最後は僕たち華麗なる英雄のために死ねるんだ。本来ならば無価値な君たちの命も多少は役立つことができるわけだよ。望外の僥倖だろう?」
ギゼムはそれまでとは打って変わった非情な本性を見せつけるように言う。
「エルフェリオン君は落ち着いているようだね。君がそんなに諦めがいいほうだとは知らなかったよ」
黙している青髪の青年に視線を流したギゼム。エルフェリオンは翡翠色の瞳に怒りを宿して金髪の青年を睨めつける。
「諦める? いったい何を諦める必要があるんだ? そんなことよりも俺はおまえたちを絶対に赦さない。必ず見つけ出して殺す」
はっきりと宣言したエルフェリオンだったが、ギゼムとルドアは大笑いする。
「おいおい、あまり笑わせるなよ。おまえがここまでバカなやつだったとはな。おまえたちはもはや邪龍レヴィジアルの餌になることが決定されてるんだぜ? それとも、レヴィジアルに勝つ自信でもあるのか? あぁん?」
腹を押さえてルドアがクックックッ……と喉を鳴らす。その時、どこからともなく低く重々しい声が響く。
「卑しき人間どもよ、生贄の代わりに財宝を欲するか。まったく、人とはどこまでも強欲なものよ……じゃが、己が欲を満たすためならば、いかなる犠牲も厭わぬのが人間。よかろう。望みどおりに財宝の一部をくれてやろう。どうせ、わしにとってはゴミのようなものだ」
ゴゴゴゴゴゴ……
壁の一部がスライドして奥へと続く通路が現れる。
「いよっしゃあ!!」
ルドアが歓喜の声をあげた。
「よし! 財宝とご対面といこうじゃないか! エルフェリオン君、ゼイナス君。君たちの犠牲は僕たち華麗なる英雄の糧となる。誇りに思って安心して死んでくれたまえ」
最後にエルフェリオンたちを一瞥し、ギゼムはルドアを引き連れて通路の奥へと姿を消した。
「では、おまえたちは、わしの元へと転送するとしよう。せいぜい愉しませてみせよ」
2つの魔法陣が一際強く輝いた。その光が消えたあとには何者の姿もない、静寂だけの空間がそこにはあった。
「うぉっ! なんだ!?」
突如、足元の魔法陣が不気味な輝きを放ったことにゼイナスが驚いて飛び退こうとする。しかし、見えない壁があるかのように魔法陣から出ることができない。
(妙だな……)
エルフェリオンは手を伸ばしてみる。しかし、やはり不可視の壁に阻まれてしまう。
「ギゼム、ルドア。この魔法陣から出ることができないみたいだ。そっちでどうにかできないか?」
エルフェリオンはルドアたちに救助を求める。だが、仲間が窮地に陥っているというのにギゼムたちは行動を起こそうとしない。まるで、この事態を最初から予想していたかのように……
「どうかしたのか?」
違和感を覚えたエルフェリオンに対して、ギゼムは冷笑を浮かべて天井を仰ぐ。
「邪龍レヴィジアルよ、我らの力は示した! この2名を生贄として捧げる。その対価として財宝を望む!!」
ギゼムは視線をあてもなく彷徨わせ、高らかな声を発する。
「生贄だと!? おい! そりゃいったいどういう意味だ!!?」
ゼイナスがギゼムに飛びかからんばかりの剣幕で叫ぶ。それに対して返答したのはルドアだった。
「わからねぇのか? オレたちは最初からおまえたちを生贄にするためだけに、この場所まで連れてきてやったのさ。そうでもなきゃ、だれがおめぇらなんかをこんな所まで連れてくるかよ!」
隻眼の剣士ルドアは可笑しそうに笑う。
「君たちのように、元々スラム街で暮らしてる連中なら消息を絶ったところで問題にならない。せめて、最後は僕たち華麗なる英雄のために死ねるんだ。本来ならば無価値な君たちの命も多少は役立つことができるわけだよ。望外の僥倖だろう?」
ギゼムはそれまでとは打って変わった非情な本性を見せつけるように言う。
「エルフェリオン君は落ち着いているようだね。君がそんなに諦めがいいほうだとは知らなかったよ」
黙している青髪の青年に視線を流したギゼム。エルフェリオンは翡翠色の瞳に怒りを宿して金髪の青年を睨めつける。
「諦める? いったい何を諦める必要があるんだ? そんなことよりも俺はおまえたちを絶対に赦さない。必ず見つけ出して殺す」
はっきりと宣言したエルフェリオンだったが、ギゼムとルドアは大笑いする。
「おいおい、あまり笑わせるなよ。おまえがここまでバカなやつだったとはな。おまえたちはもはや邪龍レヴィジアルの餌になることが決定されてるんだぜ? それとも、レヴィジアルに勝つ自信でもあるのか? あぁん?」
腹を押さえてルドアがクックックッ……と喉を鳴らす。その時、どこからともなく低く重々しい声が響く。
「卑しき人間どもよ、生贄の代わりに財宝を欲するか。まったく、人とはどこまでも強欲なものよ……じゃが、己が欲を満たすためならば、いかなる犠牲も厭わぬのが人間。よかろう。望みどおりに財宝の一部をくれてやろう。どうせ、わしにとってはゴミのようなものだ」
ゴゴゴゴゴゴ……
壁の一部がスライドして奥へと続く通路が現れる。
「いよっしゃあ!!」
ルドアが歓喜の声をあげた。
「よし! 財宝とご対面といこうじゃないか! エルフェリオン君、ゼイナス君。君たちの犠牲は僕たち華麗なる英雄の糧となる。誇りに思って安心して死んでくれたまえ」
最後にエルフェリオンたちを一瞥し、ギゼムはルドアを引き連れて通路の奥へと姿を消した。
「では、おまえたちは、わしの元へと転送するとしよう。せいぜい愉しませてみせよ」
2つの魔法陣が一際強く輝いた。その光が消えたあとには何者の姿もない、静寂だけの空間がそこにはあった。
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