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第1章 邪龍との邂逅
1ー17 VS邪龍レヴィジアル②
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邪龍レヴィジアル息を大きく吸い込む。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
邪龍があげた咆哮は無限空間の空気を激しく振動させ、凄まじい衝撃波を生み出す。
「ぐっ! うぅ……」
エルフェリオンとゼイナスは姿勢を低くして踏ん張る。しかし、僅かでも油断すれば吹き飛ばされそうだ。
(調子にのるなよ、デカブツ!)
エルフェリオンは左手のダガーを大きく開かれた邪龍の口に向けて投げる。
バキッ
レヴィジアルは飛んできたダガーを噛み砕く。
(ほほぉ……わしの雄叫びを聞いてもなお攻撃してくるか)
レヴィジアルは噛み砕いたダガーの残骸を吐き捨てる。
「へっ……こいつはまたとんでもない化け物だぜ」
あまりにも強大すぎる邪龍の力を目の当たりにして、なぜか口元に笑みをこぼすエルフェリオン。
(この絶望的な状況で笑みを浮かべるか。恐怖のあまり気でも触れたか。あるいは……)
エルフェリオンの笑みが示すものははたしてなんなのか。レヴィジアルは思考を巡らせる。
「くそ……どうやってもこんな化け物になんて勝てるわけがねぇよ!!」
構えていた大戦斧を足元に落とし、ゼイナスは膝を折って崩れる。
「なんだ、貴様はもう終いか? 青髪の小童はまだやる気があるようだぞ?」
レヴィジアルの3つの蒼い瞳が短い茶髪の青年を見下ろす。
「なぁ、レヴィジアルさんよ。ものは相談なんだが見逃してもらうわけにはいかねぇか?」
「興ざめだな……そのようなことをして、わしになんの得がある? 取引したいのであれば相応の対価を示せ」
返答するレヴィジアルの声音にはいくらかの落胆が含まれていた。永き時を経て、ようやくやってきた生贄である。簡単に手放すつもりはなかった。
「差し出すものはねぇ! けど、アルナって妹がいるんだ! そいつのためにも絶対に死ぬわけにはいかねぇんだよ!! だから、頼む!! どうか命ばかりは助けてくれ!!!」
ゼイナスの懸命の命乞いに対してレヴィジアルは冷たい視線を向ける。
「ならぬ。貴様の事情などわしの知ったことか。残念じゃが、わしは生贄にいちいち同情せぬ」
「そんな!……そこをなんとか頼む! あいつは……アルナはまだ12歳なんだぞ!?」
「それがどうした? わしにとってはどうでもよいこと。これ以上わしを楽しませることができぬと言うのならば死ぬがいい」
邪龍は冷たく言い捨て、拳を振り下ろす。
ズゥゥゥゥゥゥン……
レヴィジアルの拳が床を打ったことで地響きがする。
「ふむ」
邪龍は小さく声を漏らす。ゆっくりとした動きで拳を退けて床を見る。そこには砕けた大戦斧が転がっているのみだった。
(クハハハ……あの青髪の男め、仲間を突き飛ばして救っただけでなく、自身も回避するとはなかなかの動きをするではないか)
エルフェリオンの動きを気付いていた邪龍にとって、対峙する小さき存在を潰すことなど造作もないことであったが、それをしなかった。圧倒的な実力差を前にしても決して闘志をなくさない青髪の青年に興味を抱いたからである。
(……さっきの一撃、本気で撃ってきていたら間違いなく殺られていた。やってくれるぜ!!)
エルフェリオンは邪龍が遊び気分でいるうちに勝負を決めようと動く。ロングソードを鞘に収め、レヴィジアルの脇を駆け抜けて背後へと回り込む。
(なにをする気だ?)
邪龍は興味津々で青髪の青年の行動を観察する。
「余裕こいてられるのも今のうちだぜ!」
レヴィジアルの尾から体に取り付いたエルフェリオンは、両手足を使って頭部に向かって背中を登っていく。
(こやつ、わしの体をよじ登ってきおったか! ククククク……しかも反撃しにくい背中側からとはな)
期待以上のエルフェリオンの行動にレヴィジアルは笑む。
(これならどうする?)
邪龍は全身を勢いよく回転させる。
「ぐっ!!……」
凄まじい遠心力を受けるが龍鱗にしがみつき、どうにか振り落とされずに堪える。
「ほほぉ!……ぬっ!?」
エルフェリオンの健闘に感嘆したレヴィジアルが短く声をあげたとき、遂に頭部までたどり着いたエルフェリオンがロングソードを抜き放つ。
「へへっ……目ん玉の一つくらいはもらっとくぜ!!」
エルフェリオンは叫び、レヴィジアルの蒼い瞳に向けて渾身の力でロングソードによる突きをくり出す。
ザシュッ
ロングソードは固く閉じられた邪龍の瞼を僅かに傷つけた。
(……おいおい、うそだろ!?)
計り知れない邪龍の強固さにエルフェリオンの表情が固まる。その隙をついて、レヴィジアルは素早く首を動かして青髪の青年を振り落とし、その小さな体を掴む。全身の骨が砕かれそうなほどの力で握られ、苦悶の表情を見せるエルフェリオン。
「さて、どうする? このまま握り潰してやってもかまわぬが……」
勝ち誇ったように笑みをこぼす邪龍にエルフェリオンも不適な笑みを返す。
「へへへ……生贄だとか言って侮っていた相手に目を潰されそうになって腹が立ったか? ざまぁみろってんだ」
絶望的な状況にまで追い詰められてもなお心が折れない年若い人間に邪龍は蒼い目を細める。
(なんとも興味深き人間よ。ここまでくれば、どうあってもこやつの心を砕ききって喰らってやりたくなるというもの!)
レヴィジアルはエルフェリオンを掴んだ手を振り上げる。
(げっ! やばっ……)
エルフェリオンが予感したとおり、邪龍はエルフェリオンを床へと叩きつけた。
「かはっ!!」
全身を強く打ち付けられたエルフェリオンが声を漏らす。
「ひっ!……エルフェリオンがこんなに一方的に……もう、ダメだ!!」
すっかり戦意を喪失してしまっているゼイナスは腰を抜かす。
「さらばだ、人間どもよ!」
レヴィジアルは持ち上げた巨大な尾を二人めがけて振り下ろした。
ドガァァァァァンッ
無限空間に地響きが轟いた。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
邪龍があげた咆哮は無限空間の空気を激しく振動させ、凄まじい衝撃波を生み出す。
「ぐっ! うぅ……」
エルフェリオンとゼイナスは姿勢を低くして踏ん張る。しかし、僅かでも油断すれば吹き飛ばされそうだ。
(調子にのるなよ、デカブツ!)
エルフェリオンは左手のダガーを大きく開かれた邪龍の口に向けて投げる。
バキッ
レヴィジアルは飛んできたダガーを噛み砕く。
(ほほぉ……わしの雄叫びを聞いてもなお攻撃してくるか)
レヴィジアルは噛み砕いたダガーの残骸を吐き捨てる。
「へっ……こいつはまたとんでもない化け物だぜ」
あまりにも強大すぎる邪龍の力を目の当たりにして、なぜか口元に笑みをこぼすエルフェリオン。
(この絶望的な状況で笑みを浮かべるか。恐怖のあまり気でも触れたか。あるいは……)
エルフェリオンの笑みが示すものははたしてなんなのか。レヴィジアルは思考を巡らせる。
「くそ……どうやってもこんな化け物になんて勝てるわけがねぇよ!!」
構えていた大戦斧を足元に落とし、ゼイナスは膝を折って崩れる。
「なんだ、貴様はもう終いか? 青髪の小童はまだやる気があるようだぞ?」
レヴィジアルの3つの蒼い瞳が短い茶髪の青年を見下ろす。
「なぁ、レヴィジアルさんよ。ものは相談なんだが見逃してもらうわけにはいかねぇか?」
「興ざめだな……そのようなことをして、わしになんの得がある? 取引したいのであれば相応の対価を示せ」
返答するレヴィジアルの声音にはいくらかの落胆が含まれていた。永き時を経て、ようやくやってきた生贄である。簡単に手放すつもりはなかった。
「差し出すものはねぇ! けど、アルナって妹がいるんだ! そいつのためにも絶対に死ぬわけにはいかねぇんだよ!! だから、頼む!! どうか命ばかりは助けてくれ!!!」
ゼイナスの懸命の命乞いに対してレヴィジアルは冷たい視線を向ける。
「ならぬ。貴様の事情などわしの知ったことか。残念じゃが、わしは生贄にいちいち同情せぬ」
「そんな!……そこをなんとか頼む! あいつは……アルナはまだ12歳なんだぞ!?」
「それがどうした? わしにとってはどうでもよいこと。これ以上わしを楽しませることができぬと言うのならば死ぬがいい」
邪龍は冷たく言い捨て、拳を振り下ろす。
ズゥゥゥゥゥゥン……
レヴィジアルの拳が床を打ったことで地響きがする。
「ふむ」
邪龍は小さく声を漏らす。ゆっくりとした動きで拳を退けて床を見る。そこには砕けた大戦斧が転がっているのみだった。
(クハハハ……あの青髪の男め、仲間を突き飛ばして救っただけでなく、自身も回避するとはなかなかの動きをするではないか)
エルフェリオンの動きを気付いていた邪龍にとって、対峙する小さき存在を潰すことなど造作もないことであったが、それをしなかった。圧倒的な実力差を前にしても決して闘志をなくさない青髪の青年に興味を抱いたからである。
(……さっきの一撃、本気で撃ってきていたら間違いなく殺られていた。やってくれるぜ!!)
エルフェリオンは邪龍が遊び気分でいるうちに勝負を決めようと動く。ロングソードを鞘に収め、レヴィジアルの脇を駆け抜けて背後へと回り込む。
(なにをする気だ?)
邪龍は興味津々で青髪の青年の行動を観察する。
「余裕こいてられるのも今のうちだぜ!」
レヴィジアルの尾から体に取り付いたエルフェリオンは、両手足を使って頭部に向かって背中を登っていく。
(こやつ、わしの体をよじ登ってきおったか! ククククク……しかも反撃しにくい背中側からとはな)
期待以上のエルフェリオンの行動にレヴィジアルは笑む。
(これならどうする?)
邪龍は全身を勢いよく回転させる。
「ぐっ!!……」
凄まじい遠心力を受けるが龍鱗にしがみつき、どうにか振り落とされずに堪える。
「ほほぉ!……ぬっ!?」
エルフェリオンの健闘に感嘆したレヴィジアルが短く声をあげたとき、遂に頭部までたどり着いたエルフェリオンがロングソードを抜き放つ。
「へへっ……目ん玉の一つくらいはもらっとくぜ!!」
エルフェリオンは叫び、レヴィジアルの蒼い瞳に向けて渾身の力でロングソードによる突きをくり出す。
ザシュッ
ロングソードは固く閉じられた邪龍の瞼を僅かに傷つけた。
(……おいおい、うそだろ!?)
計り知れない邪龍の強固さにエルフェリオンの表情が固まる。その隙をついて、レヴィジアルは素早く首を動かして青髪の青年を振り落とし、その小さな体を掴む。全身の骨が砕かれそうなほどの力で握られ、苦悶の表情を見せるエルフェリオン。
「さて、どうする? このまま握り潰してやってもかまわぬが……」
勝ち誇ったように笑みをこぼす邪龍にエルフェリオンも不適な笑みを返す。
「へへへ……生贄だとか言って侮っていた相手に目を潰されそうになって腹が立ったか? ざまぁみろってんだ」
絶望的な状況にまで追い詰められてもなお心が折れない年若い人間に邪龍は蒼い目を細める。
(なんとも興味深き人間よ。ここまでくれば、どうあってもこやつの心を砕ききって喰らってやりたくなるというもの!)
レヴィジアルはエルフェリオンを掴んだ手を振り上げる。
(げっ! やばっ……)
エルフェリオンが予感したとおり、邪龍はエルフェリオンを床へと叩きつけた。
「かはっ!!」
全身を強く打ち付けられたエルフェリオンが声を漏らす。
「ひっ!……エルフェリオンがこんなに一方的に……もう、ダメだ!!」
すっかり戦意を喪失してしまっているゼイナスは腰を抜かす。
「さらばだ、人間どもよ!」
レヴィジアルは持ち上げた巨大な尾を二人めがけて振り下ろした。
ドガァァァァァンッ
無限空間に地響きが轟いた。
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