23 / 224
第1章 邪龍との邂逅
1―21 VSミノタウロス①
しおりを挟む
気がつくとエルフェリオンは邪龍の迷宮の第2階層の奥の部屋に立っていた。当然ながら、ギゼムやルドアの姿はない。
「おい、レヴィジアル。あいつらがどこにいるかわかるか?」
エルフェリオンが姿なき相棒に訊く。
『さてのぉ。とっくにこの迷宮を去っておるじゃろう。なにせ5年は経っておるじゃろうからのぉ』
「んな!?」
突然の爆弾発言に言葉を失ったエルフェリオンに邪龍はさらに続ける。
『なんじゃ、知らんかったのか。今までおった無限空間は時間の流れが非常に遅いんじゃよ』
「俺の感覚だとまだ一日も経ってないんだが……」
『それはあくまでもおぬしの感覚じゃろうが。現実から目を背けるでないわ』
レヴィジアルに指摘されてエルフェリオンは舌を打つ。
「んなこと、聞いてねぇぞ」
『言うとらんからのぉ。そんなことよりもじゃ、体のほうは大丈夫なのか?』
「ん? そういえば、痛みがほとんど消えているような……」
レヴィジアルに改めて訊かれ、エルフェリオンは初めて気付く。
『それは重畳! さすがは龍衣じゃ。着用者の回復能力を大幅に高めておる。ならば、あれを倒すくらい造作もないということじゃの?』
「あれ、とは?」
レヴィジアルが何を言っているのか理解できず、部屋の中を見回す。
「まさか、アレのことか?」
エルフェリオンの視界が部屋の一点で止まる。そこには頭部と両足か牛、胴体と両腕が人間の姿をしたモンスターと視線がぶつかる。
『ミノタウロスじゃ。早速の食事があれではあまり嬉しくもないが、まぁ贅沢も言っておれぬからのぉ。我慢してやるゆえ、あれを狩ってみせよ』
「といっても、相手は戦斧を持ってるぜ? こっちは丸腰なんだがな……」
レヴィジアルからの無茶振りに文句を言うエルフェリオン。
『あんなザコならば素手で充分じゃろうが。じゃが、しかたない。今後のためにもわし自らレクチャーしてやろうかのぉ』
エルフェリオンは上から目線に不満を抱きながらも何も言い返さない。
『よいか。わしはおぬしと同化しておる……』
「ブモォォォォォッ!」
レヴィジアルが説明している最中、青髪の青年を獲物として認識したミノタウロスが突進する。
「教えるなら、さっさとしろ」
ブンッ
ミノタウロスの揮う戦斧の軌道を冷静に読んで回避しながらエルフェリオンが急かす。
『そう急くでないわ。まずは拳に魔力を集中させよ』
レヴィジアルのアドバイスを受け、エルフェリオンは右手を強く握る。
「グモォッ!」
ミノタウロスが振りかざした戦斧を、身を屈めて避けた青髪の青年は、右手に魔力が集まるイメージを固める。
「モ?」
エルフェリオンの右拳に黒い魔力が集まっていくのを感じたミノタウロスが一歩さがる。
「これでもくらいな!」
エルフェリオンは大きく踏み込んで黒い魔力をまとった右拳を突き出す。
「モゴッ!」
エルフェリオンからの反撃を腹部にくらったミノタウロスはヨロヨロと後退する。
「クムォォォッ!!」
怒りをあらわにしたミノタウロスが掲げた戦斧を振り下ろす。その動きをいち早く察知していたエルフェリオンは素早いバックステップで回避し、臨戦態勢をとる。
『なかなかやるのぉ。もっとも、それでなければ同化契約をした意味がないのじゃがな』
「んなことはどうだっていいだろ。まさか、あいつをこのまま殴り倒せとでも言うのか?」
エルフェリオンは冷静にツッコむ。
『フハハハハハ……それも悪くはないのぉ。じゃが、安心せい。同化契約をしたおぬしならば龍武具を扱えるはずじゃ』
「ブモモォォォォォッ!!」
ミノタウロスが奇声をあげながら戦斧を乱舞する。その軌道をすべて見極めて紙一重で躱すエルフェリオン。
「龍武具?」
エルフェリオンが疑問符を付けて復唱する。
『そうじゃのぉ……まずは剣をイメージしてみよ』
(まったく、この状況でよく言ってくれるぜ)
青髪の青年はミノタウロスの猛攻を躱しつつ、溜め息をつく。幸い、戦闘には慣れている。そのため、かなり大振りなミノタウロスの動きを見切ることはそれほど難しいことではない。しかし、万が一にも一撃を受ければダメージは軽くないだろう。できるなら、対抗するための武器はほしいところである。
(……剣か……)
さらにバックステップでミノタウロスとの距離をとったエルフェリオンは深呼吸をして精神を落ち着け、剣を強くイメージする。
『よかろう! さぁ、わしを呼び出すのじゃ!!』
「こい! レヴィジアル!!」
エルフェリオンが邪龍の名を呼ぶ。それに呼応するかのように剣の形となったレヴィジアルが何もない空間から現れる。
「へぇ、これが龍武具か」
エルフェリオンは手にした龍武具を見つめる。3つの蒼い瞳を持つ邪龍の剣が青髪の青年と視線を合わせた。
『さぁ、邪龍剣となったわしを扱うからにはあの程度のモンスターに遅れを取ることはゆるされぬぞ?』
「当たり前だ。まぁ、見てろよ」
エルフェリオンは邪龍剣レヴィジアルを正面に構えて微笑する。
「おい、レヴィジアル。あいつらがどこにいるかわかるか?」
エルフェリオンが姿なき相棒に訊く。
『さてのぉ。とっくにこの迷宮を去っておるじゃろう。なにせ5年は経っておるじゃろうからのぉ』
「んな!?」
突然の爆弾発言に言葉を失ったエルフェリオンに邪龍はさらに続ける。
『なんじゃ、知らんかったのか。今までおった無限空間は時間の流れが非常に遅いんじゃよ』
「俺の感覚だとまだ一日も経ってないんだが……」
『それはあくまでもおぬしの感覚じゃろうが。現実から目を背けるでないわ』
レヴィジアルに指摘されてエルフェリオンは舌を打つ。
「んなこと、聞いてねぇぞ」
『言うとらんからのぉ。そんなことよりもじゃ、体のほうは大丈夫なのか?』
「ん? そういえば、痛みがほとんど消えているような……」
レヴィジアルに改めて訊かれ、エルフェリオンは初めて気付く。
『それは重畳! さすがは龍衣じゃ。着用者の回復能力を大幅に高めておる。ならば、あれを倒すくらい造作もないということじゃの?』
「あれ、とは?」
レヴィジアルが何を言っているのか理解できず、部屋の中を見回す。
「まさか、アレのことか?」
エルフェリオンの視界が部屋の一点で止まる。そこには頭部と両足か牛、胴体と両腕が人間の姿をしたモンスターと視線がぶつかる。
『ミノタウロスじゃ。早速の食事があれではあまり嬉しくもないが、まぁ贅沢も言っておれぬからのぉ。我慢してやるゆえ、あれを狩ってみせよ』
「といっても、相手は戦斧を持ってるぜ? こっちは丸腰なんだがな……」
レヴィジアルからの無茶振りに文句を言うエルフェリオン。
『あんなザコならば素手で充分じゃろうが。じゃが、しかたない。今後のためにもわし自らレクチャーしてやろうかのぉ』
エルフェリオンは上から目線に不満を抱きながらも何も言い返さない。
『よいか。わしはおぬしと同化しておる……』
「ブモォォォォォッ!」
レヴィジアルが説明している最中、青髪の青年を獲物として認識したミノタウロスが突進する。
「教えるなら、さっさとしろ」
ブンッ
ミノタウロスの揮う戦斧の軌道を冷静に読んで回避しながらエルフェリオンが急かす。
『そう急くでないわ。まずは拳に魔力を集中させよ』
レヴィジアルのアドバイスを受け、エルフェリオンは右手を強く握る。
「グモォッ!」
ミノタウロスが振りかざした戦斧を、身を屈めて避けた青髪の青年は、右手に魔力が集まるイメージを固める。
「モ?」
エルフェリオンの右拳に黒い魔力が集まっていくのを感じたミノタウロスが一歩さがる。
「これでもくらいな!」
エルフェリオンは大きく踏み込んで黒い魔力をまとった右拳を突き出す。
「モゴッ!」
エルフェリオンからの反撃を腹部にくらったミノタウロスはヨロヨロと後退する。
「クムォォォッ!!」
怒りをあらわにしたミノタウロスが掲げた戦斧を振り下ろす。その動きをいち早く察知していたエルフェリオンは素早いバックステップで回避し、臨戦態勢をとる。
『なかなかやるのぉ。もっとも、それでなければ同化契約をした意味がないのじゃがな』
「んなことはどうだっていいだろ。まさか、あいつをこのまま殴り倒せとでも言うのか?」
エルフェリオンは冷静にツッコむ。
『フハハハハハ……それも悪くはないのぉ。じゃが、安心せい。同化契約をしたおぬしならば龍武具を扱えるはずじゃ』
「ブモモォォォォォッ!!」
ミノタウロスが奇声をあげながら戦斧を乱舞する。その軌道をすべて見極めて紙一重で躱すエルフェリオン。
「龍武具?」
エルフェリオンが疑問符を付けて復唱する。
『そうじゃのぉ……まずは剣をイメージしてみよ』
(まったく、この状況でよく言ってくれるぜ)
青髪の青年はミノタウロスの猛攻を躱しつつ、溜め息をつく。幸い、戦闘には慣れている。そのため、かなり大振りなミノタウロスの動きを見切ることはそれほど難しいことではない。しかし、万が一にも一撃を受ければダメージは軽くないだろう。できるなら、対抗するための武器はほしいところである。
(……剣か……)
さらにバックステップでミノタウロスとの距離をとったエルフェリオンは深呼吸をして精神を落ち着け、剣を強くイメージする。
『よかろう! さぁ、わしを呼び出すのじゃ!!』
「こい! レヴィジアル!!」
エルフェリオンが邪龍の名を呼ぶ。それに呼応するかのように剣の形となったレヴィジアルが何もない空間から現れる。
「へぇ、これが龍武具か」
エルフェリオンは手にした龍武具を見つめる。3つの蒼い瞳を持つ邪龍の剣が青髪の青年と視線を合わせた。
『さぁ、邪龍剣となったわしを扱うからにはあの程度のモンスターに遅れを取ることはゆるされぬぞ?』
「当たり前だ。まぁ、見てろよ」
エルフェリオンは邪龍剣レヴィジアルを正面に構えて微笑する。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる