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第2章 出会い
2―5 エルフェリオンVSアルナ①
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エルフェリオンはこれまでの経緯を全て話して聞かせた。ギゼムとルドアのこと、邪龍レヴィジアルのことなど隠し事など一切せずにである。
「それじゃ、お兄ちゃんを殺した邪龍はあなたと同化してるっていうの!?」
仇を見るような鋭い視線をエルフェリオンに向け、アルナは再び聖杖を構える。
「まぁ、そうなんだが……ちょっと待て。冷静になれよ」
今にも飛びかかりそうな少女を刺激し過ぎないように注意を払いながら話を進める。
「べつにレヴィジアルを弁護するわけじゃないが、あいつの言い分も筋が通らないことはないだろ? たしかに、俺たちが勝手に侵入してきたことには違いない。」
「だから、お兄ちゃんが殺されてもしかたなかったって言うの!?」
アルナは、なおも敵意をむき出しにしている。
「だいたい、あなただってお兄ちゃんのことを『ゼイナスの兄貴』って慕ってたんでしょ!? それなのに、その兄貴分を殺した相手を簡単に受け入れちゃうなんて、どういうつもりよ!?」
アルナの反論に今度はエルフェリオンが不快感をあらわにする。
「おい、だれがだれを慕ってただと?」
「隠したって無駄よ。お兄ちゃんからの手紙に全部書いてあったんだから! お兄ちゃんにコテンパンに敗けてからは舎弟になったんでしょ!?」
アルナが事実とは違うことを自信たっぷりに語る。が、エルフェリオンは顔をしかめる。
(あのバカ野郎。俺がいつコテンパンにやられたってんだ? 妹にカッコつけるために嘘を書きやがったか)
文句のひとつも言ってやりたいとは思いつつも肝心の相手が他界しているため、ぶつけるすべがない。
「あのなぁ、俺はゼイナスに敗けた覚えもなければ慕ってたわけでもないぞ」
「なによ! それじゃ、お兄ちゃんが嘘をついてたとでも言うの!? あなた、本当はお兄ちゃんのことを嫌ってたの!?」
悔しげに唇を噛むアルナに青髪の青年は言葉をのむ。少女の身体からは白い魔力が立ち昇り、ユラユラと揺蕩っている。
「いや、少なくとも嫌いじゃなかったぜ」
エルフェリオンが正直に返した答えにアルナの表情はわずかに柔らかくなる。が、依然として敵意はなくなったわけではない。
「それじゃ、あなたにとってお兄ちゃんはどういう存在だったの?」
少しの嘘も見落とすまいと見据えてくる少女にエルフェリオンはフッと短く息を吐く。
「どういう存在、か……そうだな、敢えて言うとしたら金蔓?」
エルフェリオンが思いのままを口にした瞬間、アルナの魔力が一気に膨れ上がった。
「バーニング・ショット!!」
「おっと!……」
差し向けられた聖杖の先端部から飛び出した火炎弾をエルフェリオンは横っ跳びに躱す。
「おい! いきなりなにしやがる!? 危ねぇだろうが!」
抗議するエルフェリオンに対して、アルナは全く聞く耳を持たない。
「うるさい! うるさい! うるさーい!! バーニング・ガトリング」
アルナが怒りにまかせて連射する火炎弾の軌道を冷静に見極め、床を蹴ったエルフェリオンが一気に少女との距離を詰める。
「いい加減に……しやがれ!!」
アルナの持つ杖を奪い取ろうと右手を突き出した青髪の青年。
バチィッ!
エルフェリオンの右手が少女の持つ杖に触れた刹那、得体のしれない力によって弾かれてしまう。
「なんだ!?」
警戒したエルフェリオンは数歩後退して様子を伺う。
『なるほどのぉ。あれはただの杖ではないようじゃぞ。おそらくは聖杖じゃな』
「聖杖? なんだ、それは?」
聞き慣れない言葉に質問を返す。
『文字どおり、聖なる魔力を宿した杖じゃよ。わしの邪龍の力に反応したんじゃろうて。ほれ、どうした? おぬしも邪龍剣を召喚して対応せい』
「必要ねぇよ」
『ほほぉ。では、いったいどう……』
「なにをゴチャゴチャ言ってるの!? そっちがこなくても、こっちからいくわよ! アイシクル・ガトリング!!」
エルフェリオンが独り言を言っているようにしか聞こえないアルナは、氷柱を連射して攻撃をくり出す。
「げっ!」
相棒との会話を中断したエルフェリオンは素早く円柱の陰に身を隠す。
ズガガガガガガガガッ
アイシクル・ガトリングによって作り出された氷柱が円柱に激突して砕ける。
「おいおい。あいつ、俺を殺す気か!?」
アルナの魔術の威力と命中力に額に汗が滲むのを感じながらもエルフェリオンの口元には自然と笑みがこぼれていた。
『やれやれ。おぬしもまことに戦闘狂じゃのぉ。じゃが、いかに龍衣をまとっておるとはいえ、この威力の攻撃を無防備に受け続けるのはいかんのぉ。ふむ、わしが魔力の新たな使い方を伝授してやろうかの。まずは……』
またしても、レヴィジアルが話している途中でアルナが動く。円柱を回り込むように移動し、エルフェリオンを視覚に捉えた少女は聖杖を構える。
「ライトニング・ウィップ!!」
アルナの白い魔力から生じた稲妻がムチのようにしなり、エルフェリオンを襲う。
「けっ! じゃじゃ馬が!!」
毒づきつつ後方宙返りで華麗に回避したエルフェリオンは、着地するとすぐに別の円柱に隠れる。
「そんで、魔力ってのはどうやるんだ? こっちは非常事態なんだ。さっさと教えろ」
『まったく、それが教えを乞う者の態度かのぉ? 最近の若者は礼儀がなっとらんわい……じゃが、わしは心が広いゆえに教えてしんぜよう』
「逃げてばかりじゃ、あたしに勝てないわよ! バインド・チェーン!」
アルナが発動した魔術によって床から伸びた魔力の鎖が円柱ごとエルフェリオンに巻き付こうとする。
「ちっ!」
エルフェリオンは咄嗟に跳躍して背後の円柱を蹴り、難を逃れる。
『よいか。ミノタウロスとの戦闘において、おぬしは右手に魔力を集中したであろう? あれの応用で、今度は全身に魔力を巡らせるイメージを固めるのじゃ。そうすれば、今の小娘のように自己能力と防御力を大幅に増大できるはずじゃ』
(……全身に、か)
エルフェリオンの全身から黒い魔力が揺らめき立つ。
(ほぉ。やはり、こやつには戦闘に関しての天性の才能があるのは間違いないようじゃの。これはしごき甲斐がありそうじゃ)
レヴィジアルはエルフェリオンの才能を認めて笑む。
「やっと、やる気になったってわけね!」
アルナは、エルフェリオンの変化に警戒心を強める。
「これで同じ土俵に立てたってことだな」
エルフェリオンは臨戦態勢をとる少女に不敵な笑みを見せた。
「それじゃ、お兄ちゃんを殺した邪龍はあなたと同化してるっていうの!?」
仇を見るような鋭い視線をエルフェリオンに向け、アルナは再び聖杖を構える。
「まぁ、そうなんだが……ちょっと待て。冷静になれよ」
今にも飛びかかりそうな少女を刺激し過ぎないように注意を払いながら話を進める。
「べつにレヴィジアルを弁護するわけじゃないが、あいつの言い分も筋が通らないことはないだろ? たしかに、俺たちが勝手に侵入してきたことには違いない。」
「だから、お兄ちゃんが殺されてもしかたなかったって言うの!?」
アルナは、なおも敵意をむき出しにしている。
「だいたい、あなただってお兄ちゃんのことを『ゼイナスの兄貴』って慕ってたんでしょ!? それなのに、その兄貴分を殺した相手を簡単に受け入れちゃうなんて、どういうつもりよ!?」
アルナの反論に今度はエルフェリオンが不快感をあらわにする。
「おい、だれがだれを慕ってただと?」
「隠したって無駄よ。お兄ちゃんからの手紙に全部書いてあったんだから! お兄ちゃんにコテンパンに敗けてからは舎弟になったんでしょ!?」
アルナが事実とは違うことを自信たっぷりに語る。が、エルフェリオンは顔をしかめる。
(あのバカ野郎。俺がいつコテンパンにやられたってんだ? 妹にカッコつけるために嘘を書きやがったか)
文句のひとつも言ってやりたいとは思いつつも肝心の相手が他界しているため、ぶつけるすべがない。
「あのなぁ、俺はゼイナスに敗けた覚えもなければ慕ってたわけでもないぞ」
「なによ! それじゃ、お兄ちゃんが嘘をついてたとでも言うの!? あなた、本当はお兄ちゃんのことを嫌ってたの!?」
悔しげに唇を噛むアルナに青髪の青年は言葉をのむ。少女の身体からは白い魔力が立ち昇り、ユラユラと揺蕩っている。
「いや、少なくとも嫌いじゃなかったぜ」
エルフェリオンが正直に返した答えにアルナの表情はわずかに柔らかくなる。が、依然として敵意はなくなったわけではない。
「それじゃ、あなたにとってお兄ちゃんはどういう存在だったの?」
少しの嘘も見落とすまいと見据えてくる少女にエルフェリオンはフッと短く息を吐く。
「どういう存在、か……そうだな、敢えて言うとしたら金蔓?」
エルフェリオンが思いのままを口にした瞬間、アルナの魔力が一気に膨れ上がった。
「バーニング・ショット!!」
「おっと!……」
差し向けられた聖杖の先端部から飛び出した火炎弾をエルフェリオンは横っ跳びに躱す。
「おい! いきなりなにしやがる!? 危ねぇだろうが!」
抗議するエルフェリオンに対して、アルナは全く聞く耳を持たない。
「うるさい! うるさい! うるさーい!! バーニング・ガトリング」
アルナが怒りにまかせて連射する火炎弾の軌道を冷静に見極め、床を蹴ったエルフェリオンが一気に少女との距離を詰める。
「いい加減に……しやがれ!!」
アルナの持つ杖を奪い取ろうと右手を突き出した青髪の青年。
バチィッ!
エルフェリオンの右手が少女の持つ杖に触れた刹那、得体のしれない力によって弾かれてしまう。
「なんだ!?」
警戒したエルフェリオンは数歩後退して様子を伺う。
『なるほどのぉ。あれはただの杖ではないようじゃぞ。おそらくは聖杖じゃな』
「聖杖? なんだ、それは?」
聞き慣れない言葉に質問を返す。
『文字どおり、聖なる魔力を宿した杖じゃよ。わしの邪龍の力に反応したんじゃろうて。ほれ、どうした? おぬしも邪龍剣を召喚して対応せい』
「必要ねぇよ」
『ほほぉ。では、いったいどう……』
「なにをゴチャゴチャ言ってるの!? そっちがこなくても、こっちからいくわよ! アイシクル・ガトリング!!」
エルフェリオンが独り言を言っているようにしか聞こえないアルナは、氷柱を連射して攻撃をくり出す。
「げっ!」
相棒との会話を中断したエルフェリオンは素早く円柱の陰に身を隠す。
ズガガガガガガガガッ
アイシクル・ガトリングによって作り出された氷柱が円柱に激突して砕ける。
「おいおい。あいつ、俺を殺す気か!?」
アルナの魔術の威力と命中力に額に汗が滲むのを感じながらもエルフェリオンの口元には自然と笑みがこぼれていた。
『やれやれ。おぬしもまことに戦闘狂じゃのぉ。じゃが、いかに龍衣をまとっておるとはいえ、この威力の攻撃を無防備に受け続けるのはいかんのぉ。ふむ、わしが魔力の新たな使い方を伝授してやろうかの。まずは……』
またしても、レヴィジアルが話している途中でアルナが動く。円柱を回り込むように移動し、エルフェリオンを視覚に捉えた少女は聖杖を構える。
「ライトニング・ウィップ!!」
アルナの白い魔力から生じた稲妻がムチのようにしなり、エルフェリオンを襲う。
「けっ! じゃじゃ馬が!!」
毒づきつつ後方宙返りで華麗に回避したエルフェリオンは、着地するとすぐに別の円柱に隠れる。
「そんで、魔力ってのはどうやるんだ? こっちは非常事態なんだ。さっさと教えろ」
『まったく、それが教えを乞う者の態度かのぉ? 最近の若者は礼儀がなっとらんわい……じゃが、わしは心が広いゆえに教えてしんぜよう』
「逃げてばかりじゃ、あたしに勝てないわよ! バインド・チェーン!」
アルナが発動した魔術によって床から伸びた魔力の鎖が円柱ごとエルフェリオンに巻き付こうとする。
「ちっ!」
エルフェリオンは咄嗟に跳躍して背後の円柱を蹴り、難を逃れる。
『よいか。ミノタウロスとの戦闘において、おぬしは右手に魔力を集中したであろう? あれの応用で、今度は全身に魔力を巡らせるイメージを固めるのじゃ。そうすれば、今の小娘のように自己能力と防御力を大幅に増大できるはずじゃ』
(……全身に、か)
エルフェリオンの全身から黒い魔力が揺らめき立つ。
(ほぉ。やはり、こやつには戦闘に関しての天性の才能があるのは間違いないようじゃの。これはしごき甲斐がありそうじゃ)
レヴィジアルはエルフェリオンの才能を認めて笑む。
「やっと、やる気になったってわけね!」
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