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第2章 出会い
2―6 エルフェリオンVSアルナ②
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先手をとったのはアルナだった。聖杖を素早く構えて精神を集中する。
「なめないで! 魔術に関しては負けないわよ! バーニング・ガトリング!」
アルナは無数の火炎弾で牽制する。だが、素早く移動するエルフェリオンに狙いが定まらない。一方、エルフェリオンは回避しながら徐々にアルナとの間合いを詰めていく。
「くっ!」
接近をゆるしてしまったアルナは間近に迫った青髪の青年に向かって聖杖を構える。対して、エルフェリオンは身を屈める。
「もらった!」
しゃがんだエルフェリオンはアルナに対して足払いを仕掛ける。しかし、アルナは跳躍することで躱す。
「あまいのよ! バーニング・ショット!」
「おわっ!」
空中から撃たれた火炎弾を横に転がって回避する。
「しぶといわね! バインド・チェーン!」
魔力の鎖でエルフェリオンを床に張り付けようとしたアルナだったが、エルフェリオンは間一髪のところで跳ね起きた。
「いい加減にしろ!」
収縮させた両足をバネにして矢の如く飛び出したエルフェリオンがアルナの手を取る。
「この!」
焦ったアルナは聖杖でエルフェリオンの背中を殴打する。
バチィッ!
「ぐっ!」
聖なる魔力を宿した杖で殴られ、エルフェリオンは強烈な衝撃を受けて床に叩きつけられる。
(ちっきしょう。やっぱ、あの杖をどうにかしねぇとな……うん?)
アルナの足元に叩きつけられたエルフェリオンはすぐに起き上がろうと視線を上に向けて動きを止めた。
「……白、か……」
エルフェリオンの何気ない呟きにアルナは赤面し、スカートの裾を押さえる。
「今だ!」
計らずも絶好の好機を得たエルフェリオンはアルナの背後を回り、その細い両手の手首を掴む。その際にアルナの手から聖杖が滑り落ちて床に転がった。
「へへっ、勝負ありだな。ほら、さっさと降参しろ」
「……だれが、降参なんてするもんですか!!!」
アルナは強引にエルフェリオンの腕を振りほどき、回し蹴りをくらわす。
「かはっ!」
蹴り飛ばされたエルフェリオンは円柱に激突する。
「……おいおい、あんな細い腕のどこにこんな力があるんだよ? こんな話、聞いてねぇぞ」
「それはしかたなかろう。魔術の才能でいえば、あの小娘のほうが上じゃろうからのぉ。自己能力強化に関しても向こうのほうが上手じゃ。心せよ。おぬしはたしかに多才じゃが、一つでも自分の長所を伸ばした者は決して侮ることはできぬぞ」
「思ったよりもやるじゃない。でも、これならどうかしら? ミスト!」
アルナが頭上に両手を掲げた。瞬間、辺りに霧が立ち込めてエルフェリオンの視界を奪う。
「これも魔術かよ。けど、見えないのはあいつも同じだろ」
『さて、それはどうかのぉ』
「うぉっ!」
エルフェリオンの言葉をレヴィジアルが否定した刹那、聖杖を拾ったアルナが青髪の青年に殴りかかる。
『言うたじゃろうが。魔力の扱いに関しては向こうのほうが圧倒的に上じゃ。周囲に魔力を広げて感知能力を上げておるようじゃな。おそらく、最初からおぬしとの戦闘も視野に入れてガーゴイル戦に於いても実力を隠しておったのじゃろう』
「ちっ、いちいち計算高い、嫌な女だぜ!」
毒づくエルフェリオンだが、その間にもアルナの打撃攻撃は続く。龍衣をまとい、魔力で防御力を強化していてもダメージは蓄積されていく。
(このままじゃ、こっちの体力を削られちまうか。どうする……)
追い詰められながらも脳内で現状の打開策を模索するエルフェリオン。だが、アルナは余裕など与えてはくれない。
「バーニング・ショット!!」
大ダメージを与えようと火炎弾を放つ。だが、エルフェリオンもこれまで幾度にもわたる実戦経験と潜在能力を発揮し、紙一重のところで回避する。
(視覚が利かない状態でどうやって躱せるのよ!?)
エルフェリオンの身体能力と反応速度に驚嘆するアルナ。
「そこか!」
「えっ!?」
アルナが放ったバーニング・ショットの魔力の発生源に目星をつけたエルフェリオンが間合いを詰める。アルナは予想外の展開に一瞬だけ硬直してしまう。
(回避は間に合わない!)
アルナはやむなく聖杖による打撃での迎撃を決め、迫る青髪の青年に聖杖を振りかざす。
(うそ!?)
またしても予想外の展開となる。聖杖は身をかがめたエルフェリオンの頭上を薙いでいく。
「一発くらい覚悟してもらうぜ!」
腰を落とし、しっかりと地面に踏ん張ったエルフェリオンが右手に魔力を集中させて掌底を撃った。
「かっ……はっ!……」
一瞬、呼吸ができなくなるほどの強烈な衝撃を受けた少女は後方へ吹っ飛ばされ、床に全身を何度もぶつけながら転がっていく。
「ふぅ……どうにかなったか?」
アルナは倒れたまま動かない。どうやら気絶しているようだと認識したエルフェリオンがまとっていた魔力を解除する。
『勝負ありのようじゃな。して、この娘はどうするのじゃ? 捨て置くか? わしとしては息の根を止めて魂を喰らいたいのじゃがのぉ?』
「却下だ。とりあえずは背負って外へ連れ出す。こんな所に置いていくわけにもいかないだろ」
エルフェリオンは倒れているアルナに歩み寄って背負う。それから聖杖を拾い上げようとして躊躇する。
「おい、また弾かれたりしないだろうな?」
一抹の不安がよぎり、相棒の邪龍に訊く。
『おぬしが敵意をもって触れぬかぎりは大丈夫じゃろ』
レヴィジアルからの答えに安堵し、聖杖を掴んで上階に続く出入り口へと歩を進める。その時だった。
「おぉ~! 遂にこんな所まで到達したぜぇい!!」
「うひょお! オレたちってば天才冒険者なんじゃねぇの!?」
突然の闖入者にエルフェリオンは顔をしかめた。
「なめないで! 魔術に関しては負けないわよ! バーニング・ガトリング!」
アルナは無数の火炎弾で牽制する。だが、素早く移動するエルフェリオンに狙いが定まらない。一方、エルフェリオンは回避しながら徐々にアルナとの間合いを詰めていく。
「くっ!」
接近をゆるしてしまったアルナは間近に迫った青髪の青年に向かって聖杖を構える。対して、エルフェリオンは身を屈める。
「もらった!」
しゃがんだエルフェリオンはアルナに対して足払いを仕掛ける。しかし、アルナは跳躍することで躱す。
「あまいのよ! バーニング・ショット!」
「おわっ!」
空中から撃たれた火炎弾を横に転がって回避する。
「しぶといわね! バインド・チェーン!」
魔力の鎖でエルフェリオンを床に張り付けようとしたアルナだったが、エルフェリオンは間一髪のところで跳ね起きた。
「いい加減にしろ!」
収縮させた両足をバネにして矢の如く飛び出したエルフェリオンがアルナの手を取る。
「この!」
焦ったアルナは聖杖でエルフェリオンの背中を殴打する。
バチィッ!
「ぐっ!」
聖なる魔力を宿した杖で殴られ、エルフェリオンは強烈な衝撃を受けて床に叩きつけられる。
(ちっきしょう。やっぱ、あの杖をどうにかしねぇとな……うん?)
アルナの足元に叩きつけられたエルフェリオンはすぐに起き上がろうと視線を上に向けて動きを止めた。
「……白、か……」
エルフェリオンの何気ない呟きにアルナは赤面し、スカートの裾を押さえる。
「今だ!」
計らずも絶好の好機を得たエルフェリオンはアルナの背後を回り、その細い両手の手首を掴む。その際にアルナの手から聖杖が滑り落ちて床に転がった。
「へへっ、勝負ありだな。ほら、さっさと降参しろ」
「……だれが、降参なんてするもんですか!!!」
アルナは強引にエルフェリオンの腕を振りほどき、回し蹴りをくらわす。
「かはっ!」
蹴り飛ばされたエルフェリオンは円柱に激突する。
「……おいおい、あんな細い腕のどこにこんな力があるんだよ? こんな話、聞いてねぇぞ」
「それはしかたなかろう。魔術の才能でいえば、あの小娘のほうが上じゃろうからのぉ。自己能力強化に関しても向こうのほうが上手じゃ。心せよ。おぬしはたしかに多才じゃが、一つでも自分の長所を伸ばした者は決して侮ることはできぬぞ」
「思ったよりもやるじゃない。でも、これならどうかしら? ミスト!」
アルナが頭上に両手を掲げた。瞬間、辺りに霧が立ち込めてエルフェリオンの視界を奪う。
「これも魔術かよ。けど、見えないのはあいつも同じだろ」
『さて、それはどうかのぉ』
「うぉっ!」
エルフェリオンの言葉をレヴィジアルが否定した刹那、聖杖を拾ったアルナが青髪の青年に殴りかかる。
『言うたじゃろうが。魔力の扱いに関しては向こうのほうが圧倒的に上じゃ。周囲に魔力を広げて感知能力を上げておるようじゃな。おそらく、最初からおぬしとの戦闘も視野に入れてガーゴイル戦に於いても実力を隠しておったのじゃろう』
「ちっ、いちいち計算高い、嫌な女だぜ!」
毒づくエルフェリオンだが、その間にもアルナの打撃攻撃は続く。龍衣をまとい、魔力で防御力を強化していてもダメージは蓄積されていく。
(このままじゃ、こっちの体力を削られちまうか。どうする……)
追い詰められながらも脳内で現状の打開策を模索するエルフェリオン。だが、アルナは余裕など与えてはくれない。
「バーニング・ショット!!」
大ダメージを与えようと火炎弾を放つ。だが、エルフェリオンもこれまで幾度にもわたる実戦経験と潜在能力を発揮し、紙一重のところで回避する。
(視覚が利かない状態でどうやって躱せるのよ!?)
エルフェリオンの身体能力と反応速度に驚嘆するアルナ。
「そこか!」
「えっ!?」
アルナが放ったバーニング・ショットの魔力の発生源に目星をつけたエルフェリオンが間合いを詰める。アルナは予想外の展開に一瞬だけ硬直してしまう。
(回避は間に合わない!)
アルナはやむなく聖杖による打撃での迎撃を決め、迫る青髪の青年に聖杖を振りかざす。
(うそ!?)
またしても予想外の展開となる。聖杖は身をかがめたエルフェリオンの頭上を薙いでいく。
「一発くらい覚悟してもらうぜ!」
腰を落とし、しっかりと地面に踏ん張ったエルフェリオンが右手に魔力を集中させて掌底を撃った。
「かっ……はっ!……」
一瞬、呼吸ができなくなるほどの強烈な衝撃を受けた少女は後方へ吹っ飛ばされ、床に全身を何度もぶつけながら転がっていく。
「ふぅ……どうにかなったか?」
アルナは倒れたまま動かない。どうやら気絶しているようだと認識したエルフェリオンがまとっていた魔力を解除する。
『勝負ありのようじゃな。して、この娘はどうするのじゃ? 捨て置くか? わしとしては息の根を止めて魂を喰らいたいのじゃがのぉ?』
「却下だ。とりあえずは背負って外へ連れ出す。こんな所に置いていくわけにもいかないだろ」
エルフェリオンは倒れているアルナに歩み寄って背負う。それから聖杖を拾い上げようとして躊躇する。
「おい、また弾かれたりしないだろうな?」
一抹の不安がよぎり、相棒の邪龍に訊く。
『おぬしが敵意をもって触れぬかぎりは大丈夫じゃろ』
レヴィジアルからの答えに安堵し、聖杖を掴んで上階に続く出入り口へと歩を進める。その時だった。
「おぉ~! 遂にこんな所まで到達したぜぇい!!」
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