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第2章 出会い
2―7 新たなトラップ
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(やれやれ、今度はなんなんだよ……)
うんざりしたように見つめるエルフェリオンの視線に気付いた二人組みの男たちが近付いてくる。
「あれあれ~、もしかして君たちも冒険者なのかい?」
「背中の彼女、どうしちゃったのかなぁ?」
長い茶髪の男が最初に声をかけると、緑髪の男が前髪をかき上げながら続く。
(面倒くさそうなのが出てきたな)
内心で舌打ちしつつもエルフェリオンは何食わぬ顔で無視する。
「おいおいおい、心配してやってるのに無視することはないだろ?」
茶髪の男がエルフェリオンの肩に手を置く。
「気にしてもらわなくてけっこうだ。俺たちはこれから戻るところなんだよ。それじゃあな」
簡潔に答えて去ろうとするエルフェリオンだったが、二人組の男たちはしつこく付きまとう。
「ちょっと待ちなって! 気を失ってる彼女を抱えながら地上を目指すつもりかい? それは無謀ってものさ! ボクたちが送っていってあげるからさ」
緑髪の男がエルフェリオンの前に立つ。
「大きなお世話だ。退いてもらおうか」
エルフェリオンの目に怒りの色が溶け出してきていることに男たちは気付かない。
「まぁまぁ! オレたちってば天才冒険者だからさ。安心して任せてくれればいいんだぜ?」
(こいつら、マジでウザいな。黙らせるか?)
エルフェリオンの脳裏にそんな考えが浮かんできた。その時、上階に続く出入口が天井部から下りてきた壁によって塞がれてしまう。
「おい、これはなんなんだ?」
エルフェリオンは相棒であり、この迷宮の主でもある邪龍に問う。
『トラップが発動してしもうたようじゃな。さっさと出ぬからじゃぞ? わしは悪くないからの』
「やれやれだな。そんなトラップが仕掛けてあるなら先に言っておいてほしかったぜ」
エルフェリオンは愚痴りながらもアルナを左腕で抱える。
「こい、レヴィジアル!」
邪龍剣を呼び出す。それに応じて現れた邪龍剣レヴィジアルの柄を右手で握り、周囲に注意を払う。
「なんだ、なんだ、なんだ!?」
「どどど、どうなってるんだ!?」
茶色い長髪の男と緑髪の男はすっかり狼狽して冷静さを失っている。
「これくらいで騒ぐなよ。天才冒険者が聞いて呆れるぜ」
冷めた視線で二人組の男たちを一瞥しつつも周囲に気を配っていたエルフェリオンが、空間の一部が歪んだことに気付く。
「狼、か?」
空間の歪みから飛び出してきたモンスターを見て、エルフェリオンが呟く。体長は2メートルほどだろうか。赤銅色の体毛に全身を覆われた巨狼の茶色の瞳がエルフェリオンたちを映す。
「人間どもよ、おとなしくその娘を差し出すならば今回にかぎり見逃してやるぞ?」
巨狼は人語を話せるようであり、恐怖に震えている二人組の男とエルフェリオンに提案を持ちかける。
「お……おい、さっさとその女を差し出せよ!」
「そうだよ! あいつは間違いないヤバいやつだ! ここは逆らわないほうがいい!」
茶色の長髪の男の意見に賛同する緑髪の男。そんな身勝手な二人組をエルフェリオンは睨める。
「てめぇら、目障りだ。すっこんでろよ」
静かだが凄みのある声音に二人組は戦慄して言葉をなくし、反論できない。
「愚かな。おとなしく従えば喰われるのはその娘だけですんだものを……」
巨狼は嘲笑うかのように鼻を鳴らす。
(やれやれ、ちっとキツイが殺るしかなさそうだな)
邪龍剣を構え、エルフェリオンはアルナを守りながら巨狼と戦うことを決意した。その身体からは黒い魔力が迸っている。
うんざりしたように見つめるエルフェリオンの視線に気付いた二人組みの男たちが近付いてくる。
「あれあれ~、もしかして君たちも冒険者なのかい?」
「背中の彼女、どうしちゃったのかなぁ?」
長い茶髪の男が最初に声をかけると、緑髪の男が前髪をかき上げながら続く。
(面倒くさそうなのが出てきたな)
内心で舌打ちしつつもエルフェリオンは何食わぬ顔で無視する。
「おいおいおい、心配してやってるのに無視することはないだろ?」
茶髪の男がエルフェリオンの肩に手を置く。
「気にしてもらわなくてけっこうだ。俺たちはこれから戻るところなんだよ。それじゃあな」
簡潔に答えて去ろうとするエルフェリオンだったが、二人組の男たちはしつこく付きまとう。
「ちょっと待ちなって! 気を失ってる彼女を抱えながら地上を目指すつもりかい? それは無謀ってものさ! ボクたちが送っていってあげるからさ」
緑髪の男がエルフェリオンの前に立つ。
「大きなお世話だ。退いてもらおうか」
エルフェリオンの目に怒りの色が溶け出してきていることに男たちは気付かない。
「まぁまぁ! オレたちってば天才冒険者だからさ。安心して任せてくれればいいんだぜ?」
(こいつら、マジでウザいな。黙らせるか?)
エルフェリオンの脳裏にそんな考えが浮かんできた。その時、上階に続く出入口が天井部から下りてきた壁によって塞がれてしまう。
「おい、これはなんなんだ?」
エルフェリオンは相棒であり、この迷宮の主でもある邪龍に問う。
『トラップが発動してしもうたようじゃな。さっさと出ぬからじゃぞ? わしは悪くないからの』
「やれやれだな。そんなトラップが仕掛けてあるなら先に言っておいてほしかったぜ」
エルフェリオンは愚痴りながらもアルナを左腕で抱える。
「こい、レヴィジアル!」
邪龍剣を呼び出す。それに応じて現れた邪龍剣レヴィジアルの柄を右手で握り、周囲に注意を払う。
「なんだ、なんだ、なんだ!?」
「どどど、どうなってるんだ!?」
茶色い長髪の男と緑髪の男はすっかり狼狽して冷静さを失っている。
「これくらいで騒ぐなよ。天才冒険者が聞いて呆れるぜ」
冷めた視線で二人組の男たちを一瞥しつつも周囲に気を配っていたエルフェリオンが、空間の一部が歪んだことに気付く。
「狼、か?」
空間の歪みから飛び出してきたモンスターを見て、エルフェリオンが呟く。体長は2メートルほどだろうか。赤銅色の体毛に全身を覆われた巨狼の茶色の瞳がエルフェリオンたちを映す。
「人間どもよ、おとなしくその娘を差し出すならば今回にかぎり見逃してやるぞ?」
巨狼は人語を話せるようであり、恐怖に震えている二人組の男とエルフェリオンに提案を持ちかける。
「お……おい、さっさとその女を差し出せよ!」
「そうだよ! あいつは間違いないヤバいやつだ! ここは逆らわないほうがいい!」
茶色の長髪の男の意見に賛同する緑髪の男。そんな身勝手な二人組をエルフェリオンは睨める。
「てめぇら、目障りだ。すっこんでろよ」
静かだが凄みのある声音に二人組は戦慄して言葉をなくし、反論できない。
「愚かな。おとなしく従えば喰われるのはその娘だけですんだものを……」
巨狼は嘲笑うかのように鼻を鳴らす。
(やれやれ、ちっとキツイが殺るしかなさそうだな)
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