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第4章 狙われた親子
4―15 追跡
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林に飛び込み、木々の間を疾走するエルフェリオンはフード付き黒マントを着た人物を視界に捉える。
「待ちやがれ!」
一目散に退散する黒マントの人物を追跡するため、エルフェリオンは邪龍剣を召喚し、黒い魔力をまとって身体能力を強化する。
「けっ、相手も魔力の使い手かよ」
黒マントの人物は緑色の魔力をまとって逃走を続ける。
「ちっ、速いな。全然追いつけねぇ。それどころか徐々に距離がひらいている」
『クハハハハハハ! 今のおぬしよりもあやつのほうが魔力の扱いに長けておるようじゃのぉ。ほぅれほれ、このままでは逃げられてしまうぞ。どうするつもりじゃ?』
レヴィジアルは愉快げに笑う。
「言ってろよ、クソ龍……ちぃっ!」
エルフェリオン言い返そうとした直後、逃走する黒マントの人物が矢を射る。それにいち早く気付いたエルフェリオンは咄嗟に木の陰へと飛び込んで回避する。
(ふむふむ。こやつはこやつで潜在能力はなかなかのもんじゃからのぉ……)
エルフェリオンの内でレヴィジアルは感心するが、それを声には出さない。
「くそっ」
追跡するエルフェリオンを射殺すべく放たれる矢。それを避けるため木々の間や茂みに抜けていくため距離はさらにひらいてしまう。
「エア・ショット!」
白い魔力をまとって追いついてきたアルナが圧縮された空気弾を撃つ。だが、黒マントの人物はヒラリと躱してみせる。
「もぅ! すばしっこいわね! エア・ガトリング!!」
ならばとばかりに無数の空気弾を放つアルナ。しかし、それでも黒マントの人物に当てることはできなかった。
「おまえって、案外コントロールが悪いんじゃねぇのか?」
「なっ!?……失礼ね! あいつが速すぎるのよ!」
エルフェリオンの言葉にアルナが反論する。
「そうかよ。まっ、んなことはどうでもいい。通りに出るみたいだぜ」
話しながらも足を止めることなく追跡していたエルフェリオンの言葉どおり、黒マントの人物は林を抜けて通りに出た。
「仲間がいたの!?」
表通りに出た黒マントの男は停車していた馬車の荷台に乗り込む。それを待っていたかのように馬車は猛スピードで遠ざかっていく。
「エア・ショット!!」
深呼吸をひとつしたアルナが、聖杖の先端部を馬車に差し向けて神経を集中し、空気弾を撃った。発射された空気弾は、猛スピードで逃走する馬車の右後輪に吸い込まれるかのように命中した。
「くっ!」
直前に荷台から飛び降りた黒マントの人物が歯ぎしりをする。
右後輪を失った馬車はすぐに停車し、御者をしていた女が黒マントの人物の隣へとやってくる。
「アルナ君、感謝する。暴走したまま町まで行かれていては被害が出るところだった」
遅れてきたデルマがアルナに謝意を伝える。しかし、その視線は黒マントの人物を凝視していた。
逃走をあきらめた黒マントの人物はゆっくりと弓矢を構える。
「貴様は、まさかガージンか!?」
デルマが厳しい表情で問うた刹那、黒マントの人物の体がわずかにピクリと動いた。
「……やはり、そうか。木々の間を駆け抜けながら、あれだけの精度の射撃をできる者などそうはいまい。少なくとも、わたしの知るなかではひとりだけだ」
確信を抱いた眼差しを向けられ、黒マントの人物は「ククククク……」と笑う。
「さすがはレバルフの警備隊長殿ですなぁ。気付かれてしまいましたか」
「警備隊の副長である貴様がどういうつもりなのだ? よもや、誘拐未遂事件の黒幕は……」
デルマは愛用の槍の穂先をガージンに向ける。
「ご明答です。クラビーヌどもを雇ってラッケル君を誘拐させようとしたのですが、とんだ邪魔が入ってきてしまい、計画が台無しですよ、まったく……」
ガージンはやれやれと言わんばかりに深いため息を吐く。
「ふざけないで! それじゃ、そのクラビーヌたちを殺したのは口封じだったのね!!」
アルナが怒声をあげる。
「そうですよ。それなのに、あなたがたが執拗に追跡してくるものですから参ってしまい……」
ダッ
ガージンが言い終わる前にエルフェリオンが駆けだす。矢を警戒して回り込むように距離を詰める。
ガージンはエルフェリオンの動きを目で追う。
ビュッ
ガージンが迎撃の矢を射る。
「洒落臭ぇ!」
エルフェリオンが邪龍剣で矢を切り払う。
「やりますね。だが、あまいですよ!!」
1本目の矢を切り払ったエルフェリオンの視界に、既に2本目の矢を番えているガージンの姿が飛び込んできた。
「がはぁっ!」
放たれた矢はエルフェリオンの左胸に一直線に飛んでいく。それを受けたエルフェリオンは勢いよく後方に吹っ飛ばされて茂みの中へと落下する。
「エルフェリオン!!!」
叫んだアルナが茂みに向かって駆ける。
「お待ちなさい!! この場で勝手な行動は慎んでもらいましょうか。ラッケル君の身を案ずるのならば、ね」
ガージンは愉快げに口角を上げた。
「待ちやがれ!」
一目散に退散する黒マントの人物を追跡するため、エルフェリオンは邪龍剣を召喚し、黒い魔力をまとって身体能力を強化する。
「けっ、相手も魔力の使い手かよ」
黒マントの人物は緑色の魔力をまとって逃走を続ける。
「ちっ、速いな。全然追いつけねぇ。それどころか徐々に距離がひらいている」
『クハハハハハハ! 今のおぬしよりもあやつのほうが魔力の扱いに長けておるようじゃのぉ。ほぅれほれ、このままでは逃げられてしまうぞ。どうするつもりじゃ?』
レヴィジアルは愉快げに笑う。
「言ってろよ、クソ龍……ちぃっ!」
エルフェリオン言い返そうとした直後、逃走する黒マントの人物が矢を射る。それにいち早く気付いたエルフェリオンは咄嗟に木の陰へと飛び込んで回避する。
(ふむふむ。こやつはこやつで潜在能力はなかなかのもんじゃからのぉ……)
エルフェリオンの内でレヴィジアルは感心するが、それを声には出さない。
「くそっ」
追跡するエルフェリオンを射殺すべく放たれる矢。それを避けるため木々の間や茂みに抜けていくため距離はさらにひらいてしまう。
「エア・ショット!」
白い魔力をまとって追いついてきたアルナが圧縮された空気弾を撃つ。だが、黒マントの人物はヒラリと躱してみせる。
「もぅ! すばしっこいわね! エア・ガトリング!!」
ならばとばかりに無数の空気弾を放つアルナ。しかし、それでも黒マントの人物に当てることはできなかった。
「おまえって、案外コントロールが悪いんじゃねぇのか?」
「なっ!?……失礼ね! あいつが速すぎるのよ!」
エルフェリオンの言葉にアルナが反論する。
「そうかよ。まっ、んなことはどうでもいい。通りに出るみたいだぜ」
話しながらも足を止めることなく追跡していたエルフェリオンの言葉どおり、黒マントの人物は林を抜けて通りに出た。
「仲間がいたの!?」
表通りに出た黒マントの男は停車していた馬車の荷台に乗り込む。それを待っていたかのように馬車は猛スピードで遠ざかっていく。
「エア・ショット!!」
深呼吸をひとつしたアルナが、聖杖の先端部を馬車に差し向けて神経を集中し、空気弾を撃った。発射された空気弾は、猛スピードで逃走する馬車の右後輪に吸い込まれるかのように命中した。
「くっ!」
直前に荷台から飛び降りた黒マントの人物が歯ぎしりをする。
右後輪を失った馬車はすぐに停車し、御者をしていた女が黒マントの人物の隣へとやってくる。
「アルナ君、感謝する。暴走したまま町まで行かれていては被害が出るところだった」
遅れてきたデルマがアルナに謝意を伝える。しかし、その視線は黒マントの人物を凝視していた。
逃走をあきらめた黒マントの人物はゆっくりと弓矢を構える。
「貴様は、まさかガージンか!?」
デルマが厳しい表情で問うた刹那、黒マントの人物の体がわずかにピクリと動いた。
「……やはり、そうか。木々の間を駆け抜けながら、あれだけの精度の射撃をできる者などそうはいまい。少なくとも、わたしの知るなかではひとりだけだ」
確信を抱いた眼差しを向けられ、黒マントの人物は「ククククク……」と笑う。
「さすがはレバルフの警備隊長殿ですなぁ。気付かれてしまいましたか」
「警備隊の副長である貴様がどういうつもりなのだ? よもや、誘拐未遂事件の黒幕は……」
デルマは愛用の槍の穂先をガージンに向ける。
「ご明答です。クラビーヌどもを雇ってラッケル君を誘拐させようとしたのですが、とんだ邪魔が入ってきてしまい、計画が台無しですよ、まったく……」
ガージンはやれやれと言わんばかりに深いため息を吐く。
「ふざけないで! それじゃ、そのクラビーヌたちを殺したのは口封じだったのね!!」
アルナが怒声をあげる。
「そうですよ。それなのに、あなたがたが執拗に追跡してくるものですから参ってしまい……」
ダッ
ガージンが言い終わる前にエルフェリオンが駆けだす。矢を警戒して回り込むように距離を詰める。
ガージンはエルフェリオンの動きを目で追う。
ビュッ
ガージンが迎撃の矢を射る。
「洒落臭ぇ!」
エルフェリオンが邪龍剣で矢を切り払う。
「やりますね。だが、あまいですよ!!」
1本目の矢を切り払ったエルフェリオンの視界に、既に2本目の矢を番えているガージンの姿が飛び込んできた。
「がはぁっ!」
放たれた矢はエルフェリオンの左胸に一直線に飛んでいく。それを受けたエルフェリオンは勢いよく後方に吹っ飛ばされて茂みの中へと落下する。
「エルフェリオン!!!」
叫んだアルナが茂みに向かって駆ける。
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