スラム育ちの英雄譚

美山 鳥

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第7章 野盗集団レイゼジル討伐

7―4 圧勝

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 ガキンッ

 バンダナ男の大剣とザラギスの大戦鎚が激しくぶつかり合う。

 「死ねや!」

 髭面の中年男が手斧を振りかざしてザラギスを襲う。

 「させるわけねぇだろ!」

 髭面の中年男とザラギスの間に割って入ったエルフェリオンが邪龍剣をふるう。

 「くっ! 邪魔しやがって!」

 忌々しげに唇を歪めた髭面男が手斧で邪龍剣を受け止める。

 「ブヘヘヘヘ! やるじゃないのよ? エア・ショット!!」

 小太り男が杖をかざして魔術を詠唱発動する。それによって、圧縮された空気弾が放たれた。だが、エルフェリオンは不敵な笑みを浮かべる。

 「ごふっ!」

 突然、腹部に強い衝撃を受けた髭面男が前かがみになる。エルフェリオンがくり出した膝蹴りによるものだった。

 「ごはっ!!」

 直後にエルフェリオンの右アッパーカットがさく裂し、よろめいた髭面男の背中に小太り男が放った空気弾が命中する。

 立て続けに三撃をくらった髭面男は白目を向いて体勢を崩す。そこにエルフェリオンが邪龍剣でとどめの一撃を入れた。絶命した髭面男はレヴィジアルに魂を喰われ、装備品のみを遺して消滅してしまう。

 「「ひっ!?」」

 その光景を目の当たりにしたバンダナ男と小太り男の顔が恐怖から青ざめる。ザラギスも驚愕から目を見開いていたが、いち早く我に返って未だに固まっていたバンダナ男の大剣を弾き返し、大戦鎚による強烈な打撃で小太り男のほうへと吹っ飛ばす。

 「なんなんだよ、今のは!? 人ひとり消えちまうなんておかしいんじゃないのよ!?」

 飛ばされてきたバンダナ男をかわした小太り男だが、髭面男が消滅したという事実にひどく狼狽ろうばいしている。

 「うっ……ぐ……ひぃぃっ!!」

 吹っ飛ばされて地面に倒れたバンダナ男が立ち上がる。だが、怯えきった表情からは戦意は消え失せており、一目散に退散していく。

 「オラたちの事を仲間に報告されるのはまずいな。エルフェリオン、小太り男そいつは任せたぜ」

 言い置いたザラギスは黄土色の魔力をまとうと、全速で遠ざかっていくバンダナ男を追う。

 「く、くるなぁ!! エア・ガトリング!!!」

 エルフェリオンが邪龍剣を構えると、恐怖を顔面に張り付かせた小太り男が圧縮されて空気弾を連射する。

 ドドドドドドドドドッ

 撃ちまくられる空気弾だが、黒い魔力をまとって駆けるエルフェリオンをとらえることができない。

 「うぉぉぉ!」

 回り込むようにしながら徐々に間合いをつめたエルフェリオンが地面を蹴って跳ぶ。

 「くそったれ! バケモノは死ね!! バーニング・ウィップ!!!」

 空中で邪龍剣を掲げるエルフェリオンに小太り男が魔力で作った火炎の鞭を振りかざす。が、小太り男の最後の抵抗は、龍衣と黒い魔力によってほとんどダメージを与えることはなかった。

 「あばよ!」

 エルフェリオンは頭上に掲げた邪龍剣を降下の勢いにのせて振り下ろす。

 ズバッ

 「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」

 邪龍剣によって頭から斬りつけられた小太り男は断末魔の叫びをあげて絶命し、その肉体は消滅した。

 『ふむ。若い娘に比べれば不味いが、まぁ人間の魂を喰らえただけでもよしとするかのぉ』

 文句を言いながらもひとまずは満足するレヴィジアル。

 「さて、と。ザラギスのほうは……」

 エルフェリオンはそんなレヴィジアルを無視し、視線をザラギスが駆けていったほうへと走らせる。

◎★☆◎

 「ふん!」

 跳び上がったザラギスが大戦鎚を振り下ろす。

 ガキッ

 「しつっけぇんだよ!」

 振り返って大剣で受け止めたバンダナ男は怒鳴り、ザラギスを弾く。

 「おまえさんを帰すわけにはいかないんでな。ここで仕留める!」
 「ちっきしょう!」

 大戦鎚と大剣が幾度も火花を散らす。

 「やるな。だが、オラたちはこんなもんじゃないぞ?」

 黄土色の魔力をまとったザラギスの攻撃速度がさらに増す。

 「ぬぅ……ぐ!……ぐぅぅ!!」

 次第に対処しきれなくなったバンダナ男は大戦鎚の重い一撃を胸部に受けて弾き飛ばされる。

 「がはっ!」

 背中を地面に打ち付けたバンダナ男は口を開けて苦しげに顔をゆがませた。

 (なんなんだよ、こいつらの強さは!?)

 バンダナ男は、これまで戦ってきたどの冒険者よりも強い二人に恐怖し、今や逃走の算段を苦慮するばかりである。

 「覚悟しろよ」

 大戦鎚を肩に乗せたザラギスがゆっくりと近付いてくる。

 「ま、待ってくれ! もう二度と悪事に手を染めねぇよ! だから見逃してくれ!……いや、見逃してください!!」

 死への恐怖に耐えきれなくなったバンダナ男は、ザラギスに命乞いを始める。

 「あんたは、そう言ってきた人間を何人殺してきたんだ? それなのに、自分が殺られる番になった途端に命乞いとは虫のいい話じゃないか?」

 殺意を含んだ鋭い双眸そうぼうで睨まれ、バンダナ男は震え上がる。

 「警備隊でも騎士団でも好きな所へ突き出してもらっていい! だから、このとおりだ! どうかお慈悲を!!」

 バンダナ男は必死だ。しかし、ザラギスは冷ややかな視線を浴びせかける。

 「野盗集団レイゼジルの噂は聞いたぞ。好みの女を見つけては犯して殺害、それ以外は意味もない拷問の末に殺害してたんだろ? それだけのことをしてきた落とし前はキッチリつけてもらわないとな」

 ザラギスはギラリと鋭い眼光を宿し、大戦鎚を高々と掲げる。

 「ひぃぃぃぃ! 待っ……」

 ザラギスは、バンダナ男が命乞いを言い終わる前に大戦鎚を振り下ろしてとどめを刺す。
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