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第7章 野盗集団レイゼジル討伐
7―8 VSボァ①
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ペンザーが仕掛けたトラップ式魔術により生じた爆発は、エルフェリオンとザラギスを分断させた。
「うわぁっ!」
爆風によって吹き飛ばされたエルフェリオンは、そのまま土手から滑り落ちていく。
「なにがあったんだ!?」
龍衣を着ていたことと魔力をまとっていたことが幸いして、大した傷もなく土手の下へと着いたエルフェリオンは、周囲を警戒する。辺りは広く開けた場所となっていた。
「ボァ」
傍らの茂みの向こうから巨体を揺らしながら黒い影が歩み寄ってくる。
「なんだ、あいつは?」
エルフェリオンはレヴィジアルを召喚して身構える。
「ボァ」
現れたのは、全身に脂肪をたっぷりと付けた褐色肌の若い男だ。頭頂部にわずかばかりの茶色い毛髪が生えている。大きな体に似つかわしくない、つぶらな紅い瞳がエルフェリオンを見つめている。両手には金属製のグローブ填めており、太く分厚い唇をニタリと不気味にゆがめていた。
「てめぇも野盗集団レイゼジルのメンバーだな?」
「ボァ」
質問に対して意味不明な言葉を発する男に、エルフェリオンは怪訝な表情をする。
(こいつ、言葉が通じないのか?)
邪龍剣を構えて男の出方を伺うエルフェリオン。
「ボァ!」
突然だった。男は緑色の魔力を全身にまとわせて突進してきた。
「どうやら、敵であることは確定らしいな!」
男の突進を横っ跳びに躱したエルフェリオンがレヴィジアルによる斬撃を放つ。
キンッ
外見に反して機敏な反応を見せた男は、エルフェリオンの斬撃を左手に填めた金属製のグローブで弾き返し、続いて右拳を突き出す。
「うぐっ!」
男の反撃を受けたエルフェリオンは弾き飛ばされる。が、空中で体勢を立て直して着地する。
「ボァ!!」
跳躍した男がエルフェリオン目掛けて落下してくる。
ズシンッ
エルフェリオンが飛び退いた直後に男が着地する。
「てめぇ、何者だ?」
邪龍剣を構えたエルフェリオンが訊く。
「ボァ」
「名前は?」
「ボァ」
「……まさか、名前がボァなのか?」
「ボァ」
(ほんとに、なんなんだ? ボァが名前ってことは否定していないのか?)
エルフェリオンは目の前の男を見つめながら対応に困る。
「まぁいい。とりあえず敵であるのは間違いないってことだけわかればいい。覚悟はできてだろうな?」
「ボァ!!」
緑色の魔力をまとったボァは、両腕を拳を連続で突き出してくる。次々にくり出される拳を躱しつつ隙をついて斬撃を入れる。だが、魔力をまとったボァの肉体に深手を負わせることができない。
『クハハハハハハハハ! 武器化したワシを使ってもこの程度の傷しかつけられぬとは未熟もいいとこじゃのぉ? 仮にも邪龍武具を扱う者ならば根性を見せてはどうじゃ?』
エルフェリオンの内でレヴィジアルが嘲るように言う。
「言ってろよ。演習場でやってきたことは無駄じゃねぇってことを証明してやるぜ!」
エルフェリオンはバックステップでボァとの間合いを開き、邪龍剣を中段にして切先を後ろに向けて構えて集中力を高める。
「ボァ!!!」
ボァが地面を蹴って加速し、猪の如く突進してくる。
「くらいやがれ! 闘気戦術・斬閃!!」
エルフェリオンは自らの闘気をまとわせた邪龍剣を水平に素早く揮う。一筋の剣閃が描かれ、邪龍剣の刃がボァの胸に大きな切り傷をつける。
「ボァァァァァァッ!」
悲鳴をあげたボァが突進を止める。
「まだまだぁ!」
この好機を逃さず、エルフェリオンは連続攻撃を叩き込む。だが、闘気を斬撃にうまく乗せることができない。
『やれやれ、闘気を充分に乗せておれぬな。連舞とやらの修得には至っておらぬようじゃのぉ……』
レヴィジアルが落胆の声を発する。
(くそ! 癪だがレヴィジアルの言うとおりだな。これじゃ闘気戦術とは言えないか)
自分の不甲斐なさに奥歯を噛みしめつつもボァの眼光が鋭くなった瞬間を見逃さず、跳躍してボァの巨体を跳び超える。
ブンッ
ボァの太い腕が盛大に空振りする。
「闘気戦術・斬閃!」
ボァの背後をとったエルフェリオンが闘気を乗せた斬撃を背中に入れる。ボァは鮮血を流し、体勢がグラリと前に崩れかけるが踏ん張る。
「ボァ!!」
ブォンッ
ボァが振り返りざまに振り抜いた腕は、エルフェリオンが後方に飛び退いたことで、またしても空振りする。
「……ふぅ……」
一方、闘気を使った戦いに慣れていないエルフェリオンも多少の疲労を感じていた。
「ボァ! ボァ!! ボァ!!!」
怒りに燃えたボァは苛烈な連続攻撃をくり出す。
(こいつ、だんだん動きが速くなってきてやがる)
「ボァァァァァァァァァァァッ!!」
ついにエルフェリオンが猛攻を防ぎきれなくなったタイミングで、ボァの渾身の一撃がエルフェリオンの腹部にヒットした。
「がはぁっ!」
凄まじい衝撃を受けて吹っ飛んだエルフェリオンは背中から土手に激突する。
(ちっきしょう……背骨が砕けたかと思ったぜ。これはそう何度もくらいたくはないな)
エルフェリオンは、痛みに表情をゆがめつつ邪龍剣を構えて臨戦態勢をとった。
「うわぁっ!」
爆風によって吹き飛ばされたエルフェリオンは、そのまま土手から滑り落ちていく。
「なにがあったんだ!?」
龍衣を着ていたことと魔力をまとっていたことが幸いして、大した傷もなく土手の下へと着いたエルフェリオンは、周囲を警戒する。辺りは広く開けた場所となっていた。
「ボァ」
傍らの茂みの向こうから巨体を揺らしながら黒い影が歩み寄ってくる。
「なんだ、あいつは?」
エルフェリオンはレヴィジアルを召喚して身構える。
「ボァ」
現れたのは、全身に脂肪をたっぷりと付けた褐色肌の若い男だ。頭頂部にわずかばかりの茶色い毛髪が生えている。大きな体に似つかわしくない、つぶらな紅い瞳がエルフェリオンを見つめている。両手には金属製のグローブ填めており、太く分厚い唇をニタリと不気味にゆがめていた。
「てめぇも野盗集団レイゼジルのメンバーだな?」
「ボァ」
質問に対して意味不明な言葉を発する男に、エルフェリオンは怪訝な表情をする。
(こいつ、言葉が通じないのか?)
邪龍剣を構えて男の出方を伺うエルフェリオン。
「ボァ!」
突然だった。男は緑色の魔力を全身にまとわせて突進してきた。
「どうやら、敵であることは確定らしいな!」
男の突進を横っ跳びに躱したエルフェリオンがレヴィジアルによる斬撃を放つ。
キンッ
外見に反して機敏な反応を見せた男は、エルフェリオンの斬撃を左手に填めた金属製のグローブで弾き返し、続いて右拳を突き出す。
「うぐっ!」
男の反撃を受けたエルフェリオンは弾き飛ばされる。が、空中で体勢を立て直して着地する。
「ボァ!!」
跳躍した男がエルフェリオン目掛けて落下してくる。
ズシンッ
エルフェリオンが飛び退いた直後に男が着地する。
「てめぇ、何者だ?」
邪龍剣を構えたエルフェリオンが訊く。
「ボァ」
「名前は?」
「ボァ」
「……まさか、名前がボァなのか?」
「ボァ」
(ほんとに、なんなんだ? ボァが名前ってことは否定していないのか?)
エルフェリオンは目の前の男を見つめながら対応に困る。
「まぁいい。とりあえず敵であるのは間違いないってことだけわかればいい。覚悟はできてだろうな?」
「ボァ!!」
緑色の魔力をまとったボァは、両腕を拳を連続で突き出してくる。次々にくり出される拳を躱しつつ隙をついて斬撃を入れる。だが、魔力をまとったボァの肉体に深手を負わせることができない。
『クハハハハハハハハ! 武器化したワシを使ってもこの程度の傷しかつけられぬとは未熟もいいとこじゃのぉ? 仮にも邪龍武具を扱う者ならば根性を見せてはどうじゃ?』
エルフェリオンの内でレヴィジアルが嘲るように言う。
「言ってろよ。演習場でやってきたことは無駄じゃねぇってことを証明してやるぜ!」
エルフェリオンはバックステップでボァとの間合いを開き、邪龍剣を中段にして切先を後ろに向けて構えて集中力を高める。
「ボァ!!!」
ボァが地面を蹴って加速し、猪の如く突進してくる。
「くらいやがれ! 闘気戦術・斬閃!!」
エルフェリオンは自らの闘気をまとわせた邪龍剣を水平に素早く揮う。一筋の剣閃が描かれ、邪龍剣の刃がボァの胸に大きな切り傷をつける。
「ボァァァァァァッ!」
悲鳴をあげたボァが突進を止める。
「まだまだぁ!」
この好機を逃さず、エルフェリオンは連続攻撃を叩き込む。だが、闘気を斬撃にうまく乗せることができない。
『やれやれ、闘気を充分に乗せておれぬな。連舞とやらの修得には至っておらぬようじゃのぉ……』
レヴィジアルが落胆の声を発する。
(くそ! 癪だがレヴィジアルの言うとおりだな。これじゃ闘気戦術とは言えないか)
自分の不甲斐なさに奥歯を噛みしめつつもボァの眼光が鋭くなった瞬間を見逃さず、跳躍してボァの巨体を跳び超える。
ブンッ
ボァの太い腕が盛大に空振りする。
「闘気戦術・斬閃!」
ボァの背後をとったエルフェリオンが闘気を乗せた斬撃を背中に入れる。ボァは鮮血を流し、体勢がグラリと前に崩れかけるが踏ん張る。
「ボァ!!」
ブォンッ
ボァが振り返りざまに振り抜いた腕は、エルフェリオンが後方に飛び退いたことで、またしても空振りする。
「……ふぅ……」
一方、闘気を使った戦いに慣れていないエルフェリオンも多少の疲労を感じていた。
「ボァ! ボァ!! ボァ!!!」
怒りに燃えたボァは苛烈な連続攻撃をくり出す。
(こいつ、だんだん動きが速くなってきてやがる)
「ボァァァァァァァァァァァッ!!」
ついにエルフェリオンが猛攻を防ぎきれなくなったタイミングで、ボァの渾身の一撃がエルフェリオンの腹部にヒットした。
「がはぁっ!」
凄まじい衝撃を受けて吹っ飛んだエルフェリオンは背中から土手に激突する。
(ちっきしょう……背骨が砕けたかと思ったぜ。これはそう何度もくらいたくはないな)
エルフェリオンは、痛みに表情をゆがめつつ邪龍剣を構えて臨戦態勢をとった。
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