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第7章 野盗集団レイゼジル討伐
7―11 VSダーズヴェル①
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夜闇の中、雑談を交わしながらギラス山を登る二人は、山頂付近の巨岩に背中を預けて座る壮年の男を発見する。樹木の陰に身を潜めて様子を伺う。
頭に黒髪に白髪が混じっているあたり40歳は過ぎているだろう。しかし、引き締まった肉体と燃えるような赤く力強い眼光を宿した瞳は若者と同様に見える。頭部には鉢金を巻き、金属製の肩当てと胸当て、それから脛当てのみといった軽装だ。腰のベルトには二本の短剣が備えられていた。
月光に照らし出された姿にザラギスは言葉を失う。
「気をつけろ。ここからでもわかる。あいつはかなりヤバいぞ……」
囁くように注意を喚起するザラギスからは極限の緊張がヒシヒシと伝わってくる。
ギロリ。男の赤い瞳がエルフェリオンたちのほうに向けられ、ユラリと立ち上がった。
「ケヒャヒャヒャヒャヒャ。そんな所に隠れてねぇで出てこいよ。オレサマと遊んでくれよ、いいだろ? なぁ?」
ニタニタと薄気味悪く唇をゆがませた男の右手がスゥッと腰の短剣へと伸びる。
「まさかよぉ、こんな所まで来ておいて冷やかしなんことは言わねぇだろう……な!」
男は短剣を握った右手を素早く振り抜く。刹那、闘気を乗せた斬撃波が飛び出した。咄嗟にしゃがんで躱したエルフェリオンとザラギスの頭上を斬撃波が通過し、真っ二つにされた樹木が地面に横たわる。
(あれは、闘気戦術の飛閃!? 威力が桁外れだぞ!!?)
エルフェリオンは目を大きく見開く。一方、ザラギスは腹をくくって立ち上がった。
「さすがは野盗集団レイゼジルの首領ダーズヴェルだな。おっかねぇこった」
愛用の大戦鎚を構えたザラギスが不敵に笑う。だが、その頬を一筋の汗が伝い落ちる。
『ザラギスのほうは覚悟を決めたようじゃぞ。おぬしはどうするつもりじゃ?』
レヴィジアルの質問にエルフェリオンはフッと笑みをこぼす。
「んなこたぁ、決まってるだろ」
ザラギスに遅れて立ち上がったエルフェリオンは邪龍剣を召喚する。
「ケヒャヒャ! やぁっと出てきたなぁ。そんじゃあ、楽しく殺り合おうぜぇ?」
ダーズヴェルは右手の短剣に月光を反射させ、愉悦したように笑む。
ダッ
地を駆けたダーズヴェルが右手の短剣で剣閃を描く。
シュッ
反射的に上体を逸らしたザラギスの頬を短剣の切先がかすめていく。
「野郎!」
黒い魔力をまとったエルフェリオンが邪龍剣を水平に振りかざす。が、ダーズヴェルは姿勢を低くして躱すと、右手の短剣を真上に向けて斬り上げた。
「痛っ!」
エルフェリオンの右肩をダーズヴェルの短剣が斬りつけた。龍衣と魔力で守られているため出血には至ってはいないが、痛覚は刺激される。
「なんだぁ? オレサマの短剣でも斬り裂けない服だとぉ?」
ダーズヴェルはエルフェリオンの着衣に興味を示す。
「ぬりゃあ!」
ザラギスが大戦鎚を豪快にスイングする。それは空振りにおわるが、ダーズヴェルをエルフェリオンから引き離すことはできた。
「闘気戦術・飛閃!!」
邪龍剣から放たれた斬撃波にダーズヴェルはニタァと笑い、エルフェリオンが放った飛閃に自分の飛閃をぶつける。
バァンッ
二つの飛閃が空中で激突して空気を激しく震わせた。
「あぐっ!」
ダーズヴェルが放った飛閃は、エルフェリオンが放った飛閃を打ち破り、そのままエルフェリオンを直撃する。吹き飛んだエルフェリオンが樹木に激突したことで、木の葉がハラハラと舞い落ちる。
「ふん!!」
黄土色の魔力を全身にまとったザラギスが、飛閃を撃った直後のダーズヴェルに大戦鎚を振り下ろす。
「危ねぇ、危ねぇ」
言いつつも、どこか余裕の表情をしてバックステップで躱したダーズヴェルの口角が吊り上がる。
(しまった!)
背筋に冷たい感覚を覚えたザラギスだったが、ダーズヴェルの動きは早く、対応が間に合わない。右手の短剣の切先をザラギスに向け、素早く突き出す。
ブシュッ
ダーズヴェルの短剣がザラギスの腹に突き刺さった。
「ごはっ!?」
ザラギスの口から大量の血が吐き出される。
(嘘……だろ!?……なん、なんだ……こいつの、強さは!?)
予想を遥かに凌駕するダーズヴェルの強さに驚愕と絶望したザラギス。その顔面にダーズヴェルの蹴りがめり込む。
「ごはっ!」
蹴り飛ばされたザラギスは地面を転がり、岩にぶつかって止まる。
「……く、そ!……」
ザラギスの手が懐から生命力回復薬を取り出す。
「ケヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! いいねぇ、弱者が必死になって助かろうとする姿は笑えるぜぇ! そして、絶対的強者によって蹂躙されて絶望した時の顔がたまらないんだ! さぁ、楽しい楽しい狩りの時間だ」
ダーズヴェルは短剣に付着したザラギスの血を舐め取り、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
頭に黒髪に白髪が混じっているあたり40歳は過ぎているだろう。しかし、引き締まった肉体と燃えるような赤く力強い眼光を宿した瞳は若者と同様に見える。頭部には鉢金を巻き、金属製の肩当てと胸当て、それから脛当てのみといった軽装だ。腰のベルトには二本の短剣が備えられていた。
月光に照らし出された姿にザラギスは言葉を失う。
「気をつけろ。ここからでもわかる。あいつはかなりヤバいぞ……」
囁くように注意を喚起するザラギスからは極限の緊張がヒシヒシと伝わってくる。
ギロリ。男の赤い瞳がエルフェリオンたちのほうに向けられ、ユラリと立ち上がった。
「ケヒャヒャヒャヒャヒャ。そんな所に隠れてねぇで出てこいよ。オレサマと遊んでくれよ、いいだろ? なぁ?」
ニタニタと薄気味悪く唇をゆがませた男の右手がスゥッと腰の短剣へと伸びる。
「まさかよぉ、こんな所まで来ておいて冷やかしなんことは言わねぇだろう……な!」
男は短剣を握った右手を素早く振り抜く。刹那、闘気を乗せた斬撃波が飛び出した。咄嗟にしゃがんで躱したエルフェリオンとザラギスの頭上を斬撃波が通過し、真っ二つにされた樹木が地面に横たわる。
(あれは、闘気戦術の飛閃!? 威力が桁外れだぞ!!?)
エルフェリオンは目を大きく見開く。一方、ザラギスは腹をくくって立ち上がった。
「さすがは野盗集団レイゼジルの首領ダーズヴェルだな。おっかねぇこった」
愛用の大戦鎚を構えたザラギスが不敵に笑う。だが、その頬を一筋の汗が伝い落ちる。
『ザラギスのほうは覚悟を決めたようじゃぞ。おぬしはどうするつもりじゃ?』
レヴィジアルの質問にエルフェリオンはフッと笑みをこぼす。
「んなこたぁ、決まってるだろ」
ザラギスに遅れて立ち上がったエルフェリオンは邪龍剣を召喚する。
「ケヒャヒャ! やぁっと出てきたなぁ。そんじゃあ、楽しく殺り合おうぜぇ?」
ダーズヴェルは右手の短剣に月光を反射させ、愉悦したように笑む。
ダッ
地を駆けたダーズヴェルが右手の短剣で剣閃を描く。
シュッ
反射的に上体を逸らしたザラギスの頬を短剣の切先がかすめていく。
「野郎!」
黒い魔力をまとったエルフェリオンが邪龍剣を水平に振りかざす。が、ダーズヴェルは姿勢を低くして躱すと、右手の短剣を真上に向けて斬り上げた。
「痛っ!」
エルフェリオンの右肩をダーズヴェルの短剣が斬りつけた。龍衣と魔力で守られているため出血には至ってはいないが、痛覚は刺激される。
「なんだぁ? オレサマの短剣でも斬り裂けない服だとぉ?」
ダーズヴェルはエルフェリオンの着衣に興味を示す。
「ぬりゃあ!」
ザラギスが大戦鎚を豪快にスイングする。それは空振りにおわるが、ダーズヴェルをエルフェリオンから引き離すことはできた。
「闘気戦術・飛閃!!」
邪龍剣から放たれた斬撃波にダーズヴェルはニタァと笑い、エルフェリオンが放った飛閃に自分の飛閃をぶつける。
バァンッ
二つの飛閃が空中で激突して空気を激しく震わせた。
「あぐっ!」
ダーズヴェルが放った飛閃は、エルフェリオンが放った飛閃を打ち破り、そのままエルフェリオンを直撃する。吹き飛んだエルフェリオンが樹木に激突したことで、木の葉がハラハラと舞い落ちる。
「ふん!!」
黄土色の魔力を全身にまとったザラギスが、飛閃を撃った直後のダーズヴェルに大戦鎚を振り下ろす。
「危ねぇ、危ねぇ」
言いつつも、どこか余裕の表情をしてバックステップで躱したダーズヴェルの口角が吊り上がる。
(しまった!)
背筋に冷たい感覚を覚えたザラギスだったが、ダーズヴェルの動きは早く、対応が間に合わない。右手の短剣の切先をザラギスに向け、素早く突き出す。
ブシュッ
ダーズヴェルの短剣がザラギスの腹に突き刺さった。
「ごはっ!?」
ザラギスの口から大量の血が吐き出される。
(嘘……だろ!?……なん、なんだ……こいつの、強さは!?)
予想を遥かに凌駕するダーズヴェルの強さに驚愕と絶望したザラギス。その顔面にダーズヴェルの蹴りがめり込む。
「ごはっ!」
蹴り飛ばされたザラギスは地面を転がり、岩にぶつかって止まる。
「……く、そ!……」
ザラギスの手が懐から生命力回復薬を取り出す。
「ケヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! いいねぇ、弱者が必死になって助かろうとする姿は笑えるぜぇ! そして、絶対的強者によって蹂躙されて絶望した時の顔がたまらないんだ! さぁ、楽しい楽しい狩りの時間だ」
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