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第8章 龍滅の戦神①
8―3 ギゼム邸
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「ギゼム様、そちらの方々は?」
玄関ロビーで待っていた若い男が、ルガーダとレフィンを見て主に訊ねる。執事服に身を包んでいるが腰には長剣を提げていることから、ただの執事ではないことは明白である。
(こいつ、おそらくはA級上位相当の実力はありそうだな)
執事風の男を一瞥したレフィンの表情が険しくなる。最悪の場合は、ギゼムとこの男を同時に相手しなければならない。
ルガーダとレフィンはそれぞれがS級冒険者であるものの、ギゼムの戦闘能力はS級だと推測してはいるがはっきりとしておらず未知数だ。可能であれば、ギゼムひとりに集中したいところであった。
「彼らは僕に用があるらしくてね。例の部屋へ案内しようと思うんだ。暫くは誰も近付かないように」
「はっ、かしこまりました。皆に伝えておきます」
ギゼムに言われ、男は一礼して答える。
「ああ、そうしてくれ。……それじゃ、こっちだ。ついてきたまえ。」
冷笑を浮かべたギゼムが背中を向けたのを見て、レフィンの手がバスタードソードの柄へと伸びる。
「おっと、念のために言っておくが早まったことはしないほうがいい。この屋敷の敷地内にはB級以上の冒険者がゴロゴロいるからね。君たちがS級だといっても少々不利なんじゃないかね? それでもやるというなら止めないが?」
そう言って振り返ったギゼムの表情からは余裕を感じ取ることができる。
「今は堪えろ。好機は必ずくるはずだ」
ルガーダに抑えられ、今にも飛び掛かりそうな衝動にブレーキをかけて踏みとどまる。
「賢明な判断だ。もっとも、どちらにしても結果は変わらないけどさ。まぁいいだろう。行こうか」
再びルガーダとレフィンに背を向けたギゼムはスタスタと歩いていった。
◎★☆◎
ギゼムの先導でやってきたのは、邸宅の裏口を抜けた先にある、広々とした花園であった。花々がそこかしこで自己主張の匂いを発している。青々とした木々には瑞々しい果実が実り、ガラス張りの天井からは月光が降り注ぐ。中央には大きな池があり、さらにその真ん中には巨大な噴水が清らかな水を噴き出していた。
「さて、と。僕は君たちを龍滅の戦神にスカウトした覚えはないのだがね? しかしだ、君たちもS級冒険者なのだろう? であれば、龍滅の戦神に迎えてあげてもかまわない。どうだね?」
花園のベンチに腰を下ろして足を組んだギゼムが話を振る。
「バカを言ってんじゃねぇぞ、クソ野郎!」
レフィンは湧き出る怒りを顔面に張り付けて怒声をあげ、腰のバスタードソードを鞘から抜き放つ。ギラリと月明かりを反射した刃は、活躍の時を待ち望んでいたかのようである。
「随分と下品な言葉遣いだね。世界最大の冒険者クランの総帥である、この僕に対して不敬だぞ。直ちに謝罪したまえ」
不愉快そうに言い捨てるギゼム。だが、今度はルガーダが両手用戦斧を構えた。
「不敬だと? 貴様のような鬼畜に敬意など必要あるまい?」
ギゼムはやれやれというように肩を竦める。
「この僕が鬼畜、ねぇ。どうして僕が鬼畜などと言われなければならないのか理解に苦しむよ」
僅かばかりの罪悪感もなく、まるで謂れもなく暴言を吐かれている被害者を気取るギゼム。
「謂れがないと言うなら、オレたちが思い出させてやる!!」
「覚悟するのだな、ギゼム!」
レフィンとルガーダは叫び、ギゼムに襲いかかった。
玄関ロビーで待っていた若い男が、ルガーダとレフィンを見て主に訊ねる。執事服に身を包んでいるが腰には長剣を提げていることから、ただの執事ではないことは明白である。
(こいつ、おそらくはA級上位相当の実力はありそうだな)
執事風の男を一瞥したレフィンの表情が険しくなる。最悪の場合は、ギゼムとこの男を同時に相手しなければならない。
ルガーダとレフィンはそれぞれがS級冒険者であるものの、ギゼムの戦闘能力はS級だと推測してはいるがはっきりとしておらず未知数だ。可能であれば、ギゼムひとりに集中したいところであった。
「彼らは僕に用があるらしくてね。例の部屋へ案内しようと思うんだ。暫くは誰も近付かないように」
「はっ、かしこまりました。皆に伝えておきます」
ギゼムに言われ、男は一礼して答える。
「ああ、そうしてくれ。……それじゃ、こっちだ。ついてきたまえ。」
冷笑を浮かべたギゼムが背中を向けたのを見て、レフィンの手がバスタードソードの柄へと伸びる。
「おっと、念のために言っておくが早まったことはしないほうがいい。この屋敷の敷地内にはB級以上の冒険者がゴロゴロいるからね。君たちがS級だといっても少々不利なんじゃないかね? それでもやるというなら止めないが?」
そう言って振り返ったギゼムの表情からは余裕を感じ取ることができる。
「今は堪えろ。好機は必ずくるはずだ」
ルガーダに抑えられ、今にも飛び掛かりそうな衝動にブレーキをかけて踏みとどまる。
「賢明な判断だ。もっとも、どちらにしても結果は変わらないけどさ。まぁいいだろう。行こうか」
再びルガーダとレフィンに背を向けたギゼムはスタスタと歩いていった。
◎★☆◎
ギゼムの先導でやってきたのは、邸宅の裏口を抜けた先にある、広々とした花園であった。花々がそこかしこで自己主張の匂いを発している。青々とした木々には瑞々しい果実が実り、ガラス張りの天井からは月光が降り注ぐ。中央には大きな池があり、さらにその真ん中には巨大な噴水が清らかな水を噴き出していた。
「さて、と。僕は君たちを龍滅の戦神にスカウトした覚えはないのだがね? しかしだ、君たちもS級冒険者なのだろう? であれば、龍滅の戦神に迎えてあげてもかまわない。どうだね?」
花園のベンチに腰を下ろして足を組んだギゼムが話を振る。
「バカを言ってんじゃねぇぞ、クソ野郎!」
レフィンは湧き出る怒りを顔面に張り付けて怒声をあげ、腰のバスタードソードを鞘から抜き放つ。ギラリと月明かりを反射した刃は、活躍の時を待ち望んでいたかのようである。
「随分と下品な言葉遣いだね。世界最大の冒険者クランの総帥である、この僕に対して不敬だぞ。直ちに謝罪したまえ」
不愉快そうに言い捨てるギゼム。だが、今度はルガーダが両手用戦斧を構えた。
「不敬だと? 貴様のような鬼畜に敬意など必要あるまい?」
ギゼムはやれやれというように肩を竦める。
「この僕が鬼畜、ねぇ。どうして僕が鬼畜などと言われなければならないのか理解に苦しむよ」
僅かばかりの罪悪感もなく、まるで謂れもなく暴言を吐かれている被害者を気取るギゼム。
「謂れがないと言うなら、オレたちが思い出させてやる!!」
「覚悟するのだな、ギゼム!」
レフィンとルガーダは叫び、ギゼムに襲いかかった。
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