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第8章 龍滅の戦神①
8―2 ギゼム邸へ
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雨が降りしきる深夜のルクゼイン王国の王都を、二つの人影がギゼムの邸宅へと突き進んでいる。ひとりはレフィン。バスタードソードと金属製の軽鎧と大盾を装備している。もうひとりはルガーダ。こちらは両手用戦斧と兜も含めた重鎧のフルアーマーを着用している。
「レフィン君、本当にいいのかね? 今ならまだ引き返すことも可能だぞ? 首尾よく勝利したとして、そのあと、我々は法によって裁かれることになるだろう。わたしはね、君になら娘を……ミリーナを託すことができると信じている。できることなら、すぐに引き返してほしい!」
心底から願うルガーダだが、レフィンは愚問だと言わんばかりに小さく息を漏らす。
「たしかに、オレだってミリーナのことは気がかりです。しかし、ミリーナを辱めたギゼムのことは絶対に許せない! それに、あいつは金と権力に物を言わせて、やりたい放題にやってやがる。あんなやつは生かしておいちゃいけない!!」
答えるレフィンから殺気があふれ出す。その様子にルガーダは説得を断念せざるを得なかった。
「……悪かったね。レフィン君、必ず二人で生還しようではないか。決して楽に勝てる相手ではないが、我々が共闘すれば勝てぬ相手ということはない!」
「はい!」
二人は迷いない足取りでギゼムの邸宅へて向かうのであった。
◎★☆◎
ギゼムの邸宅の門前にやってきたルガーダとレフィン。
「うん? あんたらはS級冒険者のルガーダとレフィンだな? こんな真夜中になんの用だ?」
門番の男が怪訝な表情を見せる。
「我々は、ギゼム殿から龍滅の戦神にスカウトされていてな。今日はその返事にきたのだ。通してもらえるな?」
ルガーダは落ち着き払った様子で答える。だが、門番の警戒心は解けない。
「こんな真夜中に? しかも武装までしているじゃないか?」
ツッコまれ、レフィンの右手がバスタードソードを掴もうとわずかに動く。だが、ルガーダは平然と返答する。
「この武装こそ、我々にとっては正装といえよう」
「なぜ、こんな真夜中に?」
「それは僕が指定したからだよ」
ルガーダが答えるよりも早く言葉を発したのはギゼムだった。木立に寄りかかり、月を眺めている。
(バカな! いつからいたのだ!?)
警戒していたにもかかわらず、ギゼムが発言するまでまったく気付けなかったことに、ルガーダとレフィンは戦慄を覚えた。
「これはギゼム様! いつからそこにおられたのですか!?」
門番もルガーダやレフィン同様に気付いていなかったらしく、驚きを隠せないでいる。
「ふふふ……彼らがそろそろくる頃だろうと思ってね。月を眺めながら待っていたんだ。さぁ、ついてきたまえ」
ギゼムは艶のある金色の髪をかき上げ、微笑を浮かべると屋敷のほうへと歩いていく。
(なぜ、我々を中に招く?)
スカウトの話すらでまかせであり、面会の約束などあるはずもなかった。それにもかかわらず口裏を合わせてきたギゼムの真意を測りかね、ルガーダは逡巡する。
「行きましょう。やつが何を企んでいるのかはわかりませんが、こうなっては引き下がるわけにはいかないですよ」
レフィンが小声でルガーダに話しかける。
「……そう、だな。何が起きるかわからない。警戒を怠るな」
「はい」
ルガーダとレフィンは意を決してギゼムのあとを追って屋敷へと歩を進めた。
「レフィン君、本当にいいのかね? 今ならまだ引き返すことも可能だぞ? 首尾よく勝利したとして、そのあと、我々は法によって裁かれることになるだろう。わたしはね、君になら娘を……ミリーナを託すことができると信じている。できることなら、すぐに引き返してほしい!」
心底から願うルガーダだが、レフィンは愚問だと言わんばかりに小さく息を漏らす。
「たしかに、オレだってミリーナのことは気がかりです。しかし、ミリーナを辱めたギゼムのことは絶対に許せない! それに、あいつは金と権力に物を言わせて、やりたい放題にやってやがる。あんなやつは生かしておいちゃいけない!!」
答えるレフィンから殺気があふれ出す。その様子にルガーダは説得を断念せざるを得なかった。
「……悪かったね。レフィン君、必ず二人で生還しようではないか。決して楽に勝てる相手ではないが、我々が共闘すれば勝てぬ相手ということはない!」
「はい!」
二人は迷いない足取りでギゼムの邸宅へて向かうのであった。
◎★☆◎
ギゼムの邸宅の門前にやってきたルガーダとレフィン。
「うん? あんたらはS級冒険者のルガーダとレフィンだな? こんな真夜中になんの用だ?」
門番の男が怪訝な表情を見せる。
「我々は、ギゼム殿から龍滅の戦神にスカウトされていてな。今日はその返事にきたのだ。通してもらえるな?」
ルガーダは落ち着き払った様子で答える。だが、門番の警戒心は解けない。
「こんな真夜中に? しかも武装までしているじゃないか?」
ツッコまれ、レフィンの右手がバスタードソードを掴もうとわずかに動く。だが、ルガーダは平然と返答する。
「この武装こそ、我々にとっては正装といえよう」
「なぜ、こんな真夜中に?」
「それは僕が指定したからだよ」
ルガーダが答えるよりも早く言葉を発したのはギゼムだった。木立に寄りかかり、月を眺めている。
(バカな! いつからいたのだ!?)
警戒していたにもかかわらず、ギゼムが発言するまでまったく気付けなかったことに、ルガーダとレフィンは戦慄を覚えた。
「これはギゼム様! いつからそこにおられたのですか!?」
門番もルガーダやレフィン同様に気付いていなかったらしく、驚きを隠せないでいる。
「ふふふ……彼らがそろそろくる頃だろうと思ってね。月を眺めながら待っていたんだ。さぁ、ついてきたまえ」
ギゼムは艶のある金色の髪をかき上げ、微笑を浮かべると屋敷のほうへと歩いていく。
(なぜ、我々を中に招く?)
スカウトの話すらでまかせであり、面会の約束などあるはずもなかった。それにもかかわらず口裏を合わせてきたギゼムの真意を測りかね、ルガーダは逡巡する。
「行きましょう。やつが何を企んでいるのかはわかりませんが、こうなっては引き下がるわけにはいかないですよ」
レフィンが小声でルガーダに話しかける。
「……そう、だな。何が起きるかわからない。警戒を怠るな」
「はい」
ルガーダとレフィンは意を決してギゼムのあとを追って屋敷へと歩を進めた。
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