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第9章 森林モンスター合同討伐依頼
9―11 解決
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気絶したギャブを封印球に収容したアルナとネティエが、ほかの冒険者たちと合流する。重傷者は回復魔術を得意とする者たちで手分けして治療し、可能であれば、自力で歩行できる状態まで回復させた。
「問題はティクまでどうやつまて帰るかね……」
ネティエが途方に暮れたように漏らす。実際、自立歩行が難しい状態の者も何人かおり、全員での移動は困難であった。
「あたしがティクまで大急ぎで戻って迎えの馬車を用意します。ネティエさんたちはそれまでここで待っていてください」
アルナからの提案にネティエは黙考する。
たしかに、アルナひとりであれば翌日には迎えの馬車を引き連れてくることが可能だろう。だが、危惧すべきは森林の安全が確認されたわけではないということだ。もしも、ギャブにほかの仲間がいたとして、それらが襲撃してきた場合、疲弊しきった冒険者たちでは対応できない。
(だからといって、全員で移動したとしてもティクまで距離があり過ぎるわね。食料や治療薬もないうえに、負傷者の傷が悪化してしまうリスクもある。ただ、サポーターの皆さんが応援を連れて戻ってくるはず)
「アルナさんの提案はありがたいんだけど、サポーターの皆さんが応援を引き連れてきてくれるまでここで待機しましょう。森林に残党がいる可能性もあるし、それとは関係なくモンスターの襲撃も考えられる。情けない話だけど、そうした事態に陥ったときにアルナさんがいないのは致命的だわ」
考えをまとめたネティエがアルナに言う。
「でも、ティクに向かった馬車がモンスターに襲われてしまってたら……ごめんなさい。あたし、悪いほうにばかり考えてしまって……わかりました。あたしもサポーターさんたちを信じて待ちます」
アルナはネティエの指示に従うことにするのだった。
◎★☆◎
ティクからの応援がやってきたのは翌日の昼過ぎだった。
「……よかった……」
気を張り詰めていたアルナがポツリと呟く。
「エルフェリオン!」
馬車から降りてきた青髪の青年を見つけたアルナが声を発する。それに振り向いたエルフェリオンがニッと口角を上げた。
「よぉ、アルナ。さすがに相当疲れてるみたいだな?……って、おい!」
歩み寄ってきたエルフェリオンが間近までくると、アルナの全身からフッと力が抜けた。咄嗟にアルナの体を抱きかかえたエルフェリオンが、ゆっくりと地面に座らせる。
「ごめんね。わたくしが不甲斐ないせいでアルナさんにかなりの無理をさせてしまって……」
傍にやってきたネティエがこれまでのことを説明する。
「……なるほど。がんばったじゃないか」
いつになく素直に労をねぎらうエルフェリオンにアルナは言葉が出てこない。
「どうしたんだよ?」
怪訝な表情を浮かべたエルフェリオンが訊く。
「いや、あんたが素直に褒めるのが意外で……」
「けっ、言ってろよ」
正直に答えたアルナに対してエルフェリオンは吐き捨てるように返し、さらに続ける。
「あとは、森林を調査して残党の有無と安全を確認するだけだな?」
「そうだけど、行くならあたしも……」
「バァカ。今のおまえじゃ足手まといにしかならねぇよ。おとなしくここで待ってろ」
エルフェリオンはアルナの言葉を遮って拒否する。
「なっ! バカとはなによ!?……って、あたしの話を聞く気がないでしょ!?」
文句を言うアルナを放置して、スタスタと歩いていくエルフェリオン。
「アハハハハ! あなたたちって仲がいいのね」
傍で見ていたネティエが笑う。
「仲がいいとかじゃなくて……あいつ、いつもあんな感じで自分勝手なんです!」
頬を膨らませるアルナにネティエはクスリと笑む。
「あれは、ゆっくりしろっていう彼なりの優しさよ。それに、アルナさんは本当によくがんばったもの。今は休むべきなのは間違いないわ」
「……はい……」
アルナは遠ざかっていくエルフェリオンの後ろ姿を見送った。
「問題はティクまでどうやつまて帰るかね……」
ネティエが途方に暮れたように漏らす。実際、自立歩行が難しい状態の者も何人かおり、全員での移動は困難であった。
「あたしがティクまで大急ぎで戻って迎えの馬車を用意します。ネティエさんたちはそれまでここで待っていてください」
アルナからの提案にネティエは黙考する。
たしかに、アルナひとりであれば翌日には迎えの馬車を引き連れてくることが可能だろう。だが、危惧すべきは森林の安全が確認されたわけではないということだ。もしも、ギャブにほかの仲間がいたとして、それらが襲撃してきた場合、疲弊しきった冒険者たちでは対応できない。
(だからといって、全員で移動したとしてもティクまで距離があり過ぎるわね。食料や治療薬もないうえに、負傷者の傷が悪化してしまうリスクもある。ただ、サポーターの皆さんが応援を連れて戻ってくるはず)
「アルナさんの提案はありがたいんだけど、サポーターの皆さんが応援を引き連れてきてくれるまでここで待機しましょう。森林に残党がいる可能性もあるし、それとは関係なくモンスターの襲撃も考えられる。情けない話だけど、そうした事態に陥ったときにアルナさんがいないのは致命的だわ」
考えをまとめたネティエがアルナに言う。
「でも、ティクに向かった馬車がモンスターに襲われてしまってたら……ごめんなさい。あたし、悪いほうにばかり考えてしまって……わかりました。あたしもサポーターさんたちを信じて待ちます」
アルナはネティエの指示に従うことにするのだった。
◎★☆◎
ティクからの応援がやってきたのは翌日の昼過ぎだった。
「……よかった……」
気を張り詰めていたアルナがポツリと呟く。
「エルフェリオン!」
馬車から降りてきた青髪の青年を見つけたアルナが声を発する。それに振り向いたエルフェリオンがニッと口角を上げた。
「よぉ、アルナ。さすがに相当疲れてるみたいだな?……って、おい!」
歩み寄ってきたエルフェリオンが間近までくると、アルナの全身からフッと力が抜けた。咄嗟にアルナの体を抱きかかえたエルフェリオンが、ゆっくりと地面に座らせる。
「ごめんね。わたくしが不甲斐ないせいでアルナさんにかなりの無理をさせてしまって……」
傍にやってきたネティエがこれまでのことを説明する。
「……なるほど。がんばったじゃないか」
いつになく素直に労をねぎらうエルフェリオンにアルナは言葉が出てこない。
「どうしたんだよ?」
怪訝な表情を浮かべたエルフェリオンが訊く。
「いや、あんたが素直に褒めるのが意外で……」
「けっ、言ってろよ」
正直に答えたアルナに対してエルフェリオンは吐き捨てるように返し、さらに続ける。
「あとは、森林を調査して残党の有無と安全を確認するだけだな?」
「そうだけど、行くならあたしも……」
「バァカ。今のおまえじゃ足手まといにしかならねぇよ。おとなしくここで待ってろ」
エルフェリオンはアルナの言葉を遮って拒否する。
「なっ! バカとはなによ!?……って、あたしの話を聞く気がないでしょ!?」
文句を言うアルナを放置して、スタスタと歩いていくエルフェリオン。
「アハハハハ! あなたたちって仲がいいのね」
傍で見ていたネティエが笑う。
「仲がいいとかじゃなくて……あいつ、いつもあんな感じで自分勝手なんです!」
頬を膨らませるアルナにネティエはクスリと笑む。
「あれは、ゆっくりしろっていう彼なりの優しさよ。それに、アルナさんは本当によくがんばったもの。今は休むべきなのは間違いないわ」
「……はい……」
アルナは遠ざかっていくエルフェリオンの後ろ姿を見送った。
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