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第10章 元処刑場の戦い
10―2 スケルトン、襲撃①
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ティクを発ってすぐに街道から外れ、南東へと進路をとった放浪者は荒野に出た。
「この先に問題の処刑場があるんだな?」
エルフェリオンが肩を並べて歩くパートナーに確認する。
「ええ、そのはずよ」
手元の地図に視線を落としながらアルナが応答した。
「それにしても、どうしてまた処刑場を放棄なんてしたんだろうな?」
「どうしてって……処刑場の放棄なんて珍しくないわよ。だって、大勢の命が失われていく場所には怨念が溜まる。そういった場所こそアンデッドが誕生しやすいってわけ」
「ふーん。つまり、散々殺すだけ殺しておいてヤバくなったらトンズラってことかよ」
エルフェリオンは顔に嫌悪感が滲ませる。
「あっ、あれがそうじゃないかしら?」
アルナが指差す先には建造物の影が見えていた。
「へっ、いよいよか。大暴れしてやるか!」
これから始まるであろう戦いに胸躍らせるエルフェリオンの隣では、アルナが盛大なため息をついていた。
◎★☆◎
元処刑場は監獄としての機能も備えた二階建ての建造物であった。死刑囚たちの脱走を阻止するために築かれた高い壁は未だ健在である。
ギィィィィィ……
錆びた鉄が軋む音とともに鉄扉が開かれた。
「……こい、レヴィジアル」
エルフェリオンは左手を開き、邪龍剣を喚び出す。
「ヘマしないでよ」
アルナも聖杖を構える。
「あたりまえだ。だれに言ってんだよ?」
「あんたしかいないでしょ?」
「はん! 言ってろよ」
戦闘の直前だというのに、エルフェリオンとアルナは至って平静であった。
「……いくぞ、アルナ」
「いつでもオッケーよ、エルフェリオン」
最後に互いにアイコンタクトを交わし、同時に敷地内へと飛び込む。
二人の侵入を待っていたタイミングで、背後の鉄扉が勢いよく閉じられる。だが、放浪者に慌てる様子などない。
「歓迎してくれてるみたいだぜ?」
建物の正面扉が内側から開かれたことに気付いたエルフェリオンが笑む。そのエメラルドグリーンの瞳は、押し寄せてくるスケルトンの大群を捉えている。
「先手必勝よ! バーニング・ガトリング!!」
聖杖を差し向けたアルナが火炎弾を連射する。直撃したスケルトンは業火に包まれて崩れていく。
「大群相手ならコッチか?」
エルフェリオンは邪龍剣を邪龍槍に変形させて眼前のスケルトンを薙ぎ払う。だが、邪龍槍によって斬り捨てられて残骸となったスケルトンは、瞬く間に修復されて起き上がる。
「おいおい、どうなってんだ?」
エルフェリオンは邪龍槍を構え直して斬撃をくり出す。が、結果は変わらずスケルトンを倒すことができない。
「ちっ、きりがねぇな。おい、なんか方法はねぇのか?」
スケルトンたちから一度距離をとったエルフェリオンがレヴィジアルに訊く。
『少しは慌てふためいたほうがおもしろいんじゃがのぉ……つまらぬやつじゃ。して、スケルトンを相手にするならば、小娘のように超高温で焼き払うか、修復できぬほど粉砕するかじゃな』
「だから、その方法を聞いてるんだが?」
エルフェリオンは襲いかかるスケルトンを切り払いつつ、打開策を求めて話を続ける。
『やれやれ、それが邪龍に対して教えを乞う態度かのぉ?』
優位の立場をアピールするレヴィジアルにエルフェリオンは舌打ちする。
「おい、クソ龍! いい加減に……」
言いながら周囲に視線を巡らせたエルフェリオンは文句を中断して駆ける。
「させるかよ!」
邪龍槍を横に一閃し、アルナの背後に回って剣を振り上げていたスケルトンの頭蓋骨を砕く。
「……助かったわ」
一瞬、驚いたような表情を浮かべたアルナだったが、短く謝意を伝える。
「気にするな」
簡潔に返し、続け様に周囲のスケルトンを薙ぎ倒す。
「スケルトンを普通の武器攻撃で倒すのは難しいわ。特にこれだけの数だとね。攻撃はあたしが引き受ける。エルフェリオンは護衛をお願い!」
言うが早いかアルナは聖杖を掲げる。
「バーニング・ガトリング!!!」
高く掲げられた聖杖の先端部に魔力が集められ、超高温の火炎弾となって周囲のスケルトンを焼き撃つ。
『ふむ。龍武具で倒すことも可能じゃが、とりあえずは小娘のサポートに撤すればどうじゃ?』
アルナの奮闘ぶりを見たレヴィジアルがエルフェリオンに言う。
「……しかたねぇか」
不本意ではあるものの、エルフェリオンは攻撃をアルナに任せて護衛役に徹することにした。
「この先に問題の処刑場があるんだな?」
エルフェリオンが肩を並べて歩くパートナーに確認する。
「ええ、そのはずよ」
手元の地図に視線を落としながらアルナが応答した。
「それにしても、どうしてまた処刑場を放棄なんてしたんだろうな?」
「どうしてって……処刑場の放棄なんて珍しくないわよ。だって、大勢の命が失われていく場所には怨念が溜まる。そういった場所こそアンデッドが誕生しやすいってわけ」
「ふーん。つまり、散々殺すだけ殺しておいてヤバくなったらトンズラってことかよ」
エルフェリオンは顔に嫌悪感が滲ませる。
「あっ、あれがそうじゃないかしら?」
アルナが指差す先には建造物の影が見えていた。
「へっ、いよいよか。大暴れしてやるか!」
これから始まるであろう戦いに胸躍らせるエルフェリオンの隣では、アルナが盛大なため息をついていた。
◎★☆◎
元処刑場は監獄としての機能も備えた二階建ての建造物であった。死刑囚たちの脱走を阻止するために築かれた高い壁は未だ健在である。
ギィィィィィ……
錆びた鉄が軋む音とともに鉄扉が開かれた。
「……こい、レヴィジアル」
エルフェリオンは左手を開き、邪龍剣を喚び出す。
「ヘマしないでよ」
アルナも聖杖を構える。
「あたりまえだ。だれに言ってんだよ?」
「あんたしかいないでしょ?」
「はん! 言ってろよ」
戦闘の直前だというのに、エルフェリオンとアルナは至って平静であった。
「……いくぞ、アルナ」
「いつでもオッケーよ、エルフェリオン」
最後に互いにアイコンタクトを交わし、同時に敷地内へと飛び込む。
二人の侵入を待っていたタイミングで、背後の鉄扉が勢いよく閉じられる。だが、放浪者に慌てる様子などない。
「歓迎してくれてるみたいだぜ?」
建物の正面扉が内側から開かれたことに気付いたエルフェリオンが笑む。そのエメラルドグリーンの瞳は、押し寄せてくるスケルトンの大群を捉えている。
「先手必勝よ! バーニング・ガトリング!!」
聖杖を差し向けたアルナが火炎弾を連射する。直撃したスケルトンは業火に包まれて崩れていく。
「大群相手ならコッチか?」
エルフェリオンは邪龍剣を邪龍槍に変形させて眼前のスケルトンを薙ぎ払う。だが、邪龍槍によって斬り捨てられて残骸となったスケルトンは、瞬く間に修復されて起き上がる。
「おいおい、どうなってんだ?」
エルフェリオンは邪龍槍を構え直して斬撃をくり出す。が、結果は変わらずスケルトンを倒すことができない。
「ちっ、きりがねぇな。おい、なんか方法はねぇのか?」
スケルトンたちから一度距離をとったエルフェリオンがレヴィジアルに訊く。
『少しは慌てふためいたほうがおもしろいんじゃがのぉ……つまらぬやつじゃ。して、スケルトンを相手にするならば、小娘のように超高温で焼き払うか、修復できぬほど粉砕するかじゃな』
「だから、その方法を聞いてるんだが?」
エルフェリオンは襲いかかるスケルトンを切り払いつつ、打開策を求めて話を続ける。
『やれやれ、それが邪龍に対して教えを乞う態度かのぉ?』
優位の立場をアピールするレヴィジアルにエルフェリオンは舌打ちする。
「おい、クソ龍! いい加減に……」
言いながら周囲に視線を巡らせたエルフェリオンは文句を中断して駆ける。
「させるかよ!」
邪龍槍を横に一閃し、アルナの背後に回って剣を振り上げていたスケルトンの頭蓋骨を砕く。
「……助かったわ」
一瞬、驚いたような表情を浮かべたアルナだったが、短く謝意を伝える。
「気にするな」
簡潔に返し、続け様に周囲のスケルトンを薙ぎ倒す。
「スケルトンを普通の武器攻撃で倒すのは難しいわ。特にこれだけの数だとね。攻撃はあたしが引き受ける。エルフェリオンは護衛をお願い!」
言うが早いかアルナは聖杖を掲げる。
「バーニング・ガトリング!!!」
高く掲げられた聖杖の先端部に魔力が集められ、超高温の火炎弾となって周囲のスケルトンを焼き撃つ。
『ふむ。龍武具で倒すことも可能じゃが、とりあえずは小娘のサポートに撤すればどうじゃ?』
アルナの奮闘ぶりを見たレヴィジアルがエルフェリオンに言う。
「……しかたねぇか」
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