スラム育ちの英雄譚

美山 鳥

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第10章 元処刑場の戦い

10―14 VSマイザム⑤

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 キィンッ

 エルフェリオンは邪龍槍を振り抜き、マイザムを後退させる。

 「……僕の首を斬る?……そんな事、今までやってきた冒険者の誰ひとりとしてできやしなかったじゃないか……やれるものなら、やってみろぉぉぉぉ!!!」

 咆哮したマイザムの赤き瞳に哀しみに加えて憎悪がにじむ。マイザムは、両手用大斧による苛烈な連続攻撃をくり出す。

 「へっ! そんなに斬られたいならおとなしく斬られてやりゃすむ話だろうが!!」

 多角度から繰り出される両手用大斧の斬撃を邪龍槍で受け流しながらエルフェリオンが反論する。

 「うるさい! 僕だって、弱者に斬られるなんて嫌なんだ!!」

 怒りを爆発させたマイザムの攻撃はさらに早く、重くなる。

 「ちっ、わがままな野郎だな! だったら、てめぇより強いやつに斬られるなら文句はねぇんだな!?」

 エルフェリオンは激しさを増すマイザムの攻撃をさばききると、邪龍槍へと闘気を流す。

 (この人は強い!!)

 マイザムは危険を察知してバックステップで間合いをとる。

 「闘気戦術・連舞!!」

 マイザムを追うように大きく前に踏み出したエルフェリオンが連続攻撃をくり出す。魔力をまとって強化された身体能力に加え、闘気の効果により一時的に軽量化された邪龍槍の怒涛の攻撃は、マイザムでさえもさばききれるものではなかった。

 「ぐっ、うぅぅぅっ!」

 闘気を帯びた邪龍槍の刃はマイザムにダメージを確実に与えていく。

 「このぉ!!」

 マイザムとて黙ってやられるわけではない。振り上げた両手用大斧を渾身の力で振り下ろす。

 「なめんなぁ!」

 エルフェリオンは、邪龍槍を邪龍鎚へと素早く変形させ、マイザムが振り下ろした両手用大斧を弾き飛ばす。

 「な……に?……」

 マイザムが驚嘆の声をもらす。

 「こっちの番だぜ?」

 今度は邪龍鎚から邪龍剣へと変形させ、闘気をまとわせた邪龍剣を握る左手に力を込める。

 「ぐっ!」

 だがしかし、エルフェリオンへ突如として動きを止める。

 (身体が動かない、だと!?)

 マイザムは霊気を操り、エルフェリオンを金縛りにすることで危機を乗り切る。

 「へっ、この期に及んで随分と往生際がわりぃじゃねぇかよ? けど、その悪あがきもここまでだぜ」

 エルフェリオンは全身の自由を奪われたまま笑みを浮かべる。そのエメラルドグリーンの瞳は勝利を確信していた。

 「ホーリー・レイ!」

 マイザムの意思がエルフェリオンに注がれている間に魔力を高めたアルナが、聖杖の先端部から白い光線を発射した。

 「かはっ!!」

 ホーリー・レイに右胸を貫かれたマイザムがグラリと体勢を崩す。それと同時にエルフェリオンの金縛りが解ける。

 「闘気戦術・斬閃!!」

 邪龍剣が一筋の剣閃を描き、マイザムの首を捉えた。
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