聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

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1章 運命が動く建国祭

8話 王女 メルティナ

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 「姫、遅れて申し訳ございません」

 アルスフェルト城の王族居住スペースにあるサロンへやってきたアルフォスは少女の前に跪き謝罪する。

 メルティナは周囲を見回し、だれもいないのを確認する。

 「もう、だれもいない時はもっと普通に話してって言ってるでしょ!」

 メルティナが不満げに頬を膨らませ、そっぽを向く。

 「しかし、姫様……」

 「アールーフォースー!」

 跪いたままのアルフォスに顔を近づけて文句ありげな視線をぶつけるメルティナ。

 アルフォスは思わず吹き出してしまう。

 「わかった、わかった。ごめん、悪戯が過ぎたかな?」

 「もう! 意地悪なんだから……」

 「ホントにごめん」

 両手の掌を合わせて謝るアルフォスにメルティナはため息をつく。

 「しょうがないなぁ。……今日もルットと一緒にモンスター討伐に行ってたんだよね?」

 「ああ。リトルキラー退治にね」

 「大丈夫なの? どこもケガとかしてない?」

 アルフォスの身体を触りながら訊くメルティナ。

 「大丈夫だって! ルットの魔術と俺の剣術があればあれくらいどうってことないさ!」

 元気に笑顔を返すアルフォスにメルティナも安心する。

 「ところで、あと一週間ね!」

 椅子に腰をおろしたメルティナが声を弾ませる。

 「ラミーネル王国の建国祭か」

 「うん! わたし、すっごく楽しみ!!」

 瞳を輝かせて話すメルティナの姿にアルフォスは微笑みを浮かべる。

 「ほんとに嬉しそうだな」

 「そりゃそうよ! だって、クラッツェルンでいろんな出店を見たりできるんだよ!? もう楽しみしかないじゃない。アルフォスは楽しみじゃないの?」

 満面の笑顔で話すメルティナに対してアルフォスは微妙な表情である。

 「楽しみが半分、緊張が半分ってところかな」

 「どうして?」

 メルティナが訊く。

 「今年の建国祭は、俺がメルティナの護衛に選ばれたからさ」

 返ってきた答えにメルティナはクスクスと笑う。

 「だから、なおさら楽しみなんじゃない! ずっと一緒にお店を回れるんだよ!」

 「あのなぁ…。王女が城下町を回ることの危険性もあるだろ?」

 呆れた様子で言うアルフォスだったが、メルティナは少しも心配などしていない。

 「アルフォスがいてくれれば何があっても平気よ。それに、ピファだって楽しみにしてるのよ」

 メルティナは実妹の名を出す。

 「そういえば、ピファ王女の護衛はルットだったな」

 「うん!」

 「そのピファ様はどうされたんだ?」

 ラミーネル王国第二王女の姿がないことにアルフォスは質問する。

 「今はお勉強中よ」
 
 「メルティナはいいのか?」

 「うん。わたしはもう終わっちゃった」

 メルティナは言いつつVサインをする。

 「そっか。……まっ、メルティナに会えてよかった。それじゃ、俺はもう帰るよ」

 「うん……。来てくれてありがとう!」

 アルフォスとメルティナはお互いに名残惜しさを感じ、どちらからともなく唇をそっと重ねる。次に会うことになる建国祭を楽しみにしながら……。
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