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1章 運命が動く建国祭
10話 ウォレンの死
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自宅に戻ったアルフォスは早めの昼食を済ませ、すぐに準備を整えて屋敷を出た。
「アルフォス君」
屋敷の門を出たところでフード付きのローブをまとった男が声をかけてきた。
(この声、どこかで聞き覚えがあるような……)
自らの記憶を探ってみるも答えは見つからない。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
アルフォスが訊くと、男は口元に笑みを浮かべた。次の瞬間、アルフォスの耳許に男の口があった。日ごろから鍛練してきたアルフォスですらまるで反応できなかった。
「フフフフ……。そう警戒することはない。わたしだ。君のお父さんの親友タハルジャだよ」
言われて、アルフォスは間近にある男の顔を見る。それは確かにルットの父タハルジャであった。
「タハルジャ様! いつお戻りになられたのですか!?」
タハルジャが戻ったということは、共に調査に向かったウォレンも一緒のはずだ。それが嬉しくて声が高くなる。
しかし、タハルジャは人差し指を口の前で立ててみせる。
「……どうかしたのですか? もしや父に何か!?」
急に胸騒ぎを覚え、タハルジャに詰め寄る。
「その事でアルフォス君に話があってね。すまないが、今すぐわたしと一緒に来てもらえないだろうか?」
タハルジャは真剣な眼差しをアルフォスに向けている。
「わかりました。ですが、今日はメルティナ様の警護があります。少し遅れる旨を伝えてまいりますので暫しお待ちください」
「待ちなさい」
タハルジャは、アルスフェルト城へ駆け出そうとするアルフォスを制止した。
「さすがはウォレンの息子のアルフォス君だね。冷静ないい判断だ。しかし、わたしの部下を使いのだしてあるから大丈夫だ。それよりも事は一刻を争うのだよ」
タハルジャの手回しの良さに驚かされながらもアルフォスは頷く。
「そういう事でしたら同行いたします」
「そうか! では、瞬間移動魔術で向かうとしよう。わたしに捕まりなさい」
「わかりました!」
アルフォスはタハルジャの指示に従う。
一瞬だけ景色が歪み、視界全体が暗闇におおわれた。
◎
「ここは…」
気がつくと、どこかの小屋の中に立っていた。なんとなく見覚えがあるような気がする。
「ここは、ウォレンが修行で山ごもりする際に使っていた山小屋だよ」
側に立っているタハルジャが情報を伝える。
(言われてみれば確かにそうだ。子供のころに父さんに連れてきてもらったことがある。あの時はタハルジャ様、ルット、ジルバーナ様、それにメルティナも一緒だったんだ)
懐かしい記憶が甦る。が、今はそんなことよりも気になるのはウォレンの安否だ。
「それで、父は!?」
アルフォスは再びタハルジャに詰め寄る。そんなアルフォスの肩に手をのせ、そっと引き離す。
「落ち着いて聞くんだよ。いいかね?」
アルフォスは黙って頷き、息をのんで次の言葉を待つ。
「我が親友ウォレンは死んだ……」
かつて経験したことがないほどの衝撃がアルフォスをおそう。頭が真っ白になり、思考が停止する。
「……どう…して?……」
絞り出すように声を出す。
「……わたしが殺した……」
タハルジャからさらなる衝撃的な返答が飛び出した。アルフォスは理解が追い付かず、全身の力が抜けたように崩れ落ちる。
「アルフォス君には詳しく聞く権利がある。わたしが話してあげよう。デルモス山で何があって、ウォレンがどのような最後を遂げたのかを……」
タハルジャは静かに語りだした。
「アルフォス君」
屋敷の門を出たところでフード付きのローブをまとった男が声をかけてきた。
(この声、どこかで聞き覚えがあるような……)
自らの記憶を探ってみるも答えは見つからない。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
アルフォスが訊くと、男は口元に笑みを浮かべた。次の瞬間、アルフォスの耳許に男の口があった。日ごろから鍛練してきたアルフォスですらまるで反応できなかった。
「フフフフ……。そう警戒することはない。わたしだ。君のお父さんの親友タハルジャだよ」
言われて、アルフォスは間近にある男の顔を見る。それは確かにルットの父タハルジャであった。
「タハルジャ様! いつお戻りになられたのですか!?」
タハルジャが戻ったということは、共に調査に向かったウォレンも一緒のはずだ。それが嬉しくて声が高くなる。
しかし、タハルジャは人差し指を口の前で立ててみせる。
「……どうかしたのですか? もしや父に何か!?」
急に胸騒ぎを覚え、タハルジャに詰め寄る。
「その事でアルフォス君に話があってね。すまないが、今すぐわたしと一緒に来てもらえないだろうか?」
タハルジャは真剣な眼差しをアルフォスに向けている。
「わかりました。ですが、今日はメルティナ様の警護があります。少し遅れる旨を伝えてまいりますので暫しお待ちください」
「待ちなさい」
タハルジャは、アルスフェルト城へ駆け出そうとするアルフォスを制止した。
「さすがはウォレンの息子のアルフォス君だね。冷静ないい判断だ。しかし、わたしの部下を使いのだしてあるから大丈夫だ。それよりも事は一刻を争うのだよ」
タハルジャの手回しの良さに驚かされながらもアルフォスは頷く。
「そういう事でしたら同行いたします」
「そうか! では、瞬間移動魔術で向かうとしよう。わたしに捕まりなさい」
「わかりました!」
アルフォスはタハルジャの指示に従う。
一瞬だけ景色が歪み、視界全体が暗闇におおわれた。
◎
「ここは…」
気がつくと、どこかの小屋の中に立っていた。なんとなく見覚えがあるような気がする。
「ここは、ウォレンが修行で山ごもりする際に使っていた山小屋だよ」
側に立っているタハルジャが情報を伝える。
(言われてみれば確かにそうだ。子供のころに父さんに連れてきてもらったことがある。あの時はタハルジャ様、ルット、ジルバーナ様、それにメルティナも一緒だったんだ)
懐かしい記憶が甦る。が、今はそんなことよりも気になるのはウォレンの安否だ。
「それで、父は!?」
アルフォスは再びタハルジャに詰め寄る。そんなアルフォスの肩に手をのせ、そっと引き離す。
「落ち着いて聞くんだよ。いいかね?」
アルフォスは黙って頷き、息をのんで次の言葉を待つ。
「我が親友ウォレンは死んだ……」
かつて経験したことがないほどの衝撃がアルフォスをおそう。頭が真っ白になり、思考が停止する。
「……どう…して?……」
絞り出すように声を出す。
「……わたしが殺した……」
タハルジャからさらなる衝撃的な返答が飛び出した。アルフォスは理解が追い付かず、全身の力が抜けたように崩れ落ちる。
「アルフォス君には詳しく聞く権利がある。わたしが話してあげよう。デルモス山で何があって、ウォレンがどのような最後を遂げたのかを……」
タハルジャは静かに語りだした。
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