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1章 運命が動く建国祭
11話 デルモス山の悲劇①
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バシュッ
ウォレン愛用の剣クレイモアが切り裂いたオークが霧消する。
「あらかたは片付いたか…」
ウォレンは周辺を見回す。荒涼とした景色が広がるデルモス山には数多くのモンスターが巣くっており、それらを蹴散らしながらようやく山頂付近まで到着していた。
「情報によれば、この先…山頂付近の洞窟に封印の魔法陣が存在するらしい」
傍らでタハルジャが進むべき道を指し示す。
「ならば急ごう」
ウォレンは、クレイモアを鞘に納めて先を急ぐ。
◎
「ここか……」
山頂付近の岩肌にその洞窟はあった。
松明に火を着けて内部に潜入する。暗く、じめじめとして肌にまとわりつく空気をかき分けて洞窟の最奥を目指す。
モンスターの気配はない。しかし、最奥部からは禍々しい魔力の波動が感じられる。
「気をつけろ。ここは相当危険な場所のようだ」
注意を促すタハルジャの頬を極度の緊張から汗が伝い落ちる。
「凄まじい魔力だな……。しかし、この洞窟の存在は以前から知られていたが、これまでこのような報告は受けていないはず……」
歩を進めながら、ウォレンが独り言のように呟く。
「わたしは実際にこの場所を訪れたことがある。しかし、このように禍々しい魔力はもちろん、魔法陣も存在しなかった。奥には広い空間があるのみだ」
タハルジャが反応する。
「ならば、魔法陣が出現したのはなぜなのか……」
「さて…な。今回はそのことも含めての調査になるということだ」
「そうだな」
ウォレンは短く答えた。
◎
ほどなく、一行は洞窟の最奥部に到着した。タハルジャの言葉どおりだった。広い空間になっている。だが、その床面には朱く発光する巨大な魔法陣が描かれており、その中心部は一際強い光を放っていた。
「素人が魔法陣に侵入するのは危険だ。ここは我々に任せてもらおう」
タハルジャは部下の魔術師を引き連れて魔法陣の中心部の調査を開始する。
「これは!?」
タハルジャが中心部の最も強い光を放つ箇所に触れた瞬間、強い衝撃が洞窟全体の空気を激しく振動させた。
「どうした!?」
壁や天井を注意深く調べていたウォレンが振り向く。
「……大丈夫だ。それよりもこっちに来てくれ」
タハルジャはウォレンを呼び寄せる。
「なんだ?」
側までやって来たウォレンはしゃがみ、魔法陣の中心部を見る。先ほどまでの強い輝きはなく、今は鈍く光っているのみだ。
「殺るぞ!!」
タハルジャが叫び、ウォレンから素早く離れる。それと同時に同行してきた魔術師たちも同様の行動をとる。
「むっ!?」
ウォレンは異変に気付いて立ち上がる。
「火属性上級魔術」
タハルジャがウォレンに向けて攻撃魔術を放つ。
「火属性中級魔術」
それに続いて周りの魔術師たちもウォレンを対象に定め、攻撃魔術を放った。
「ぬわぁぁぁぁっ!!」
洞窟内にウォレンの絶叫が響き渡った。
ウォレン愛用の剣クレイモアが切り裂いたオークが霧消する。
「あらかたは片付いたか…」
ウォレンは周辺を見回す。荒涼とした景色が広がるデルモス山には数多くのモンスターが巣くっており、それらを蹴散らしながらようやく山頂付近まで到着していた。
「情報によれば、この先…山頂付近の洞窟に封印の魔法陣が存在するらしい」
傍らでタハルジャが進むべき道を指し示す。
「ならば急ごう」
ウォレンは、クレイモアを鞘に納めて先を急ぐ。
◎
「ここか……」
山頂付近の岩肌にその洞窟はあった。
松明に火を着けて内部に潜入する。暗く、じめじめとして肌にまとわりつく空気をかき分けて洞窟の最奥を目指す。
モンスターの気配はない。しかし、最奥部からは禍々しい魔力の波動が感じられる。
「気をつけろ。ここは相当危険な場所のようだ」
注意を促すタハルジャの頬を極度の緊張から汗が伝い落ちる。
「凄まじい魔力だな……。しかし、この洞窟の存在は以前から知られていたが、これまでこのような報告は受けていないはず……」
歩を進めながら、ウォレンが独り言のように呟く。
「わたしは実際にこの場所を訪れたことがある。しかし、このように禍々しい魔力はもちろん、魔法陣も存在しなかった。奥には広い空間があるのみだ」
タハルジャが反応する。
「ならば、魔法陣が出現したのはなぜなのか……」
「さて…な。今回はそのことも含めての調査になるということだ」
「そうだな」
ウォレンは短く答えた。
◎
ほどなく、一行は洞窟の最奥部に到着した。タハルジャの言葉どおりだった。広い空間になっている。だが、その床面には朱く発光する巨大な魔法陣が描かれており、その中心部は一際強い光を放っていた。
「素人が魔法陣に侵入するのは危険だ。ここは我々に任せてもらおう」
タハルジャは部下の魔術師を引き連れて魔法陣の中心部の調査を開始する。
「これは!?」
タハルジャが中心部の最も強い光を放つ箇所に触れた瞬間、強い衝撃が洞窟全体の空気を激しく振動させた。
「どうした!?」
壁や天井を注意深く調べていたウォレンが振り向く。
「……大丈夫だ。それよりもこっちに来てくれ」
タハルジャはウォレンを呼び寄せる。
「なんだ?」
側までやって来たウォレンはしゃがみ、魔法陣の中心部を見る。先ほどまでの強い輝きはなく、今は鈍く光っているのみだ。
「殺るぞ!!」
タハルジャが叫び、ウォレンから素早く離れる。それと同時に同行してきた魔術師たちも同様の行動をとる。
「むっ!?」
ウォレンは異変に気付いて立ち上がる。
「火属性上級魔術」
タハルジャがウォレンに向けて攻撃魔術を放つ。
「火属性中級魔術」
それに続いて周りの魔術師たちもウォレンを対象に定め、攻撃魔術を放った。
「ぬわぁぁぁぁっ!!」
洞窟内にウォレンの絶叫が響き渡った。
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