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1章 運命が動く建国祭
14話 デルモス山の悲劇④
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「どういうことだ?」
それでも、あくまで冷静さを欠くことなく対応するウォレン。
「貴様ほどの強者と戦うのに、このわたしがなんの対策もしなかったと思うのか?」
「アルフォスに何をした?」
静かに問う。だが、その相好には怒りが宿っている。
「禁断の秘術により、わたしの命が尽きた瞬間、アルフォスもまた同じ運命をたどることになるだろう」
「…空言だな。他人同士の生命を繋ぐ魔術など存在しない」
ウォレンはクレイモアを握る手に力を込める。
「空言、か。貴様がそう断ずるのならばわたしを殺せ。そして、クラッツェルンに帰ってアルフォスの遺体と対面するのだな」
タハルジャの言葉は胡乱であり、真偽が定かではない。
「フッ…」
暫しの沈黙の後、ウォレンは微笑する。
「何がおかしい?」
今度はタハルジャが訊く。
それに答えることなく、クレイモアの切先をタハルジャの喉元から離す。
「フハハハハハ! 国士無双の強さを誇る貴様も息子の命を盾に取られては手も足も出ないようだな」
勝ち誇ったように笑むタハルジャだったが、間もなくそれは消えることとなった。
ウォレンは再びクレイモアを構え、臨戦態勢を整えた。
「どういうつもりだ?」
「要は貴様を殺さなければいいのだろう?」
ウォレンの眼光が鋭くなる。
「だれがそんな事を言った? 勝手に思い込んでいるのではないかね?」
タハルジャは余裕の態度を崩さない。
「わたしの意志でアルフォスの命を絶つことも可能なのだよ」
またしても動きを止めるウォレン。
「さあ、おとなしく剣を捨てよ。一人息子の命が惜しいのならばな」
ガシャン
決断を迫られたウォレンはクレイモアを手放すことを選択した。
「いい判断だ。貴様にはおとなしくここで死んでもらうぞ!!」
タハルジャは狂気の表情を見せ、魔力を練り上げた……。
◎
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
デルモス山山頂付近の洞窟。その最奥のフロアでタハルジャは息を切らしていた。眼前にはウォレンが全身からおびただしいほどの血を流しながらも立っている。足元には血だまりができていた。
(なんという生命力だ。わたしの魔術をこれほど受けてまだ死なぬとは……)
乱れた息を整え、目の前に立つ血まみれの男を見据える。息があるのか、それとも死んでいるのか……。タハルジャは判断できずにいた。もしも、この男が生きていたとすれば、今回の計画は全て水泡に帰す。そうなっては破滅である。確実に息の根を止めておかなければならない。
タハルジャは血だまりの中からクレイモアを拾い上げる。ずっしりと重量感のある大振りの剣は日ごろから剣を持ち歩く習慣のないタハルジャにとってはとても武器として扱える代物ではない。
「さらばだ、ウォレンよ!」
全体重をのせてクレイモアをウォレンの左胸に突き刺した。
ドサッ……
ウォレンの身体が押し倒されるかたちで仰向けに倒れた。
タハルジャは両手でクレイモアの柄を握り、力の限りにウォレンの身体に刃先を沈める。もはや、ウォレンに息があるとは考えられない。確実に死んでいる。
「フ……フハハハ……フハハハハハハハハハハ!」
タハルジャの狂気に満ちた笑い声が響いた。
それでも、あくまで冷静さを欠くことなく対応するウォレン。
「貴様ほどの強者と戦うのに、このわたしがなんの対策もしなかったと思うのか?」
「アルフォスに何をした?」
静かに問う。だが、その相好には怒りが宿っている。
「禁断の秘術により、わたしの命が尽きた瞬間、アルフォスもまた同じ運命をたどることになるだろう」
「…空言だな。他人同士の生命を繋ぐ魔術など存在しない」
ウォレンはクレイモアを握る手に力を込める。
「空言、か。貴様がそう断ずるのならばわたしを殺せ。そして、クラッツェルンに帰ってアルフォスの遺体と対面するのだな」
タハルジャの言葉は胡乱であり、真偽が定かではない。
「フッ…」
暫しの沈黙の後、ウォレンは微笑する。
「何がおかしい?」
今度はタハルジャが訊く。
それに答えることなく、クレイモアの切先をタハルジャの喉元から離す。
「フハハハハハ! 国士無双の強さを誇る貴様も息子の命を盾に取られては手も足も出ないようだな」
勝ち誇ったように笑むタハルジャだったが、間もなくそれは消えることとなった。
ウォレンは再びクレイモアを構え、臨戦態勢を整えた。
「どういうつもりだ?」
「要は貴様を殺さなければいいのだろう?」
ウォレンの眼光が鋭くなる。
「だれがそんな事を言った? 勝手に思い込んでいるのではないかね?」
タハルジャは余裕の態度を崩さない。
「わたしの意志でアルフォスの命を絶つことも可能なのだよ」
またしても動きを止めるウォレン。
「さあ、おとなしく剣を捨てよ。一人息子の命が惜しいのならばな」
ガシャン
決断を迫られたウォレンはクレイモアを手放すことを選択した。
「いい判断だ。貴様にはおとなしくここで死んでもらうぞ!!」
タハルジャは狂気の表情を見せ、魔力を練り上げた……。
◎
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」
デルモス山山頂付近の洞窟。その最奥のフロアでタハルジャは息を切らしていた。眼前にはウォレンが全身からおびただしいほどの血を流しながらも立っている。足元には血だまりができていた。
(なんという生命力だ。わたしの魔術をこれほど受けてまだ死なぬとは……)
乱れた息を整え、目の前に立つ血まみれの男を見据える。息があるのか、それとも死んでいるのか……。タハルジャは判断できずにいた。もしも、この男が生きていたとすれば、今回の計画は全て水泡に帰す。そうなっては破滅である。確実に息の根を止めておかなければならない。
タハルジャは血だまりの中からクレイモアを拾い上げる。ずっしりと重量感のある大振りの剣は日ごろから剣を持ち歩く習慣のないタハルジャにとってはとても武器として扱える代物ではない。
「さらばだ、ウォレンよ!」
全体重をのせてクレイモアをウォレンの左胸に突き刺した。
ドサッ……
ウォレンの身体が押し倒されるかたちで仰向けに倒れた。
タハルジャは両手でクレイモアの柄を握り、力の限りにウォレンの身体に刃先を沈める。もはや、ウォレンに息があるとは考えられない。確実に死んでいる。
「フ……フハハハ……フハハハハハハハハハハ!」
タハルジャの狂気に満ちた笑い声が響いた。
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