聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

文字の大きさ
39 / 75
3章 聖剣エクスカリバー

38話 天救教団施設①

しおりを挟む
 「ぬわぁぁぁぁ!」

 ウィナーは周囲を囲むゴーレムの群れの中で孤軍奮闘していた。

 ゴーレムといっても人間の成人サイズの比較的小さなものである。

 ガッ…ドカッ…バキッ…ズガッ……

 愛用のメイスを振るい、ゴーレムを薙ぎ倒していく。だが、なにしろ数が多い。ウィナー1人に対して周囲を埋め尽くさんばかりのゴーレムが襲ってくるのだ。いかに守護王ガーディアン・ロードのウィナーといえどもその全てを相手にはできない。

 「トラップか……。いくぞ、セラ」

 アルフォスは背負った2本の剣のうち、クレイモアを鞘から抜剣する。

 「しかたありませんわねぇ……」

 セラは渋々といった面持ちで立ち上がると、アルフォスとともに隠れて様子を見ていた物陰から飛び出した。

 「せやっ!」

 アルフォスのクレイモアがゴーレムたちを次々にほふっていく。

 「いや~ん、やっぱりアルフォス様は最高にカッコいいですわぁ!」

 セラは、いつものようにアルフォスに熱い視線を送りながら雷属性初級広域魔術ライトニング・レインによってゴーレムたちの頭上から雷の雨を降らせる。

 「セラ!」

 アルフォスが叫ぶ。愛する剣士の勇姿を見て歓喜しているセラに1体のゴーレムが飛び掛かっていく。

 グサッ!

 ゴーレムの拳がセラの顔面に迫った時、アルフォスが投げたクレイモアがゴーレムを貫き、土へと還す。

 「アルフォス様に守っていただけるなんて感激ですわぁ!!」

 「わかったから、戦いに集中しろ!」

 アルフォスは、全く反省をした様子を見せないセラに呆れつつも背中から魔剣カラドボルグを抜き放つ。

 「唸れ、カラドボルグ! 紅雷こうらい!!」

 魔剣カラドボルグを頭上に掲げ、魔力を解放することで紅い稲妻を発生させた。

 紅雷こうらいはアルフォスの周囲に集まっていたゴーレムを瞬殺する。

 魔剣カラドボルグの使い手となってから、アルフォスは幾度となく戦地に赴き、少しずつ使いこなせるようになってきていた。

 「なんて素敵ですの! アルフォス様ぁ!!」

 セラは相変わらず黄色い声援を送りながら火属性初級広域魔術フレイム・レインを無詠唱で撃つ。降り注ぐ炎の雨が残りのゴーレムとウィナーを焼いていく。



 アルフォスは魔剣カラドボルグを背中の鞘に納め、地面に落ちているクレイモアを拾い上げる。

 「アルフォス様は無敵ですわ!」

 セラがアルフォスに抱きつく。ここ最近のセラは以前にも増してアルフォスへのアピールが積極的だ。

 アルフォスは、彼女自身もアルフォスたちの足手まといにならないために陰で努力を重ねていることを知っていた。そのため、敢えて咎めることもしていない。

 「……おい!…」

 スキンヘッドの黒い巨漢がセラを睨む。

 「あら、いましたの?」

 アルフォスの身体に抱きついたまま、セラが興味なさそうに吐き捨てる。

 「ざけんな! ゴーレムどもと一緒にオレまで焼くな!!」

 「避けないあなたが悪いのですわ」

 悪びれることもないセラの態度にウィナーは愕然とする。

 「このアマァ……」

 ウィナーは怒りにワナワナと震えている。

 「セラ、ウィナーに回復魔術を……。治療が済んだら施設に乗り込むぞ」

 「はぁ……アルフォス様の命令では断れませんわね……」

 セラは左手をかざしてウィナーの傷を癒す。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...