40 / 75
3章 聖剣エクスカリバー
39話 天救教団施設②
しおりを挟む
「なぁ、アルフォスの旦那…。一つ訊いてもいいか?」
「ん?」
治癒初級魔術による治療を受けながらウィナーが訊いてくる。
「あの施設は何なんだ?」
「はぁぁぁっ!?」
セラは思わず治療を中断してしまう。アルフォスもこれには絶句していた。
「あなた、何を言ってるんですの!? あれは天救教団の施設ですわよ!」
「おぅ、それだ! その天救教団ってのは何者なんだ?」
アルフォスとセラは互いに顔を見合わせる。
「なあ、ウィナー。俺が魔剣を手に入れてから主に戦ってきたのが天救教団なのは知ってるか?」
「知ってるぜ! リュカリオンに頼まれて幾つもの施設をぶっ壊してきたからな!」
「で、その天救教団がどういった集団なのかは理解していなかったと?」
「おう!」
なぜか胸を張るウィナー。
「呆れましたわ! 相手が何者かもわからずによく幾つもの施設を壊滅させてきましたわね……」
「おぅ、アルフォスの旦那の敵ならオレにとっても敵だからな!」
「……いいですわ。説明して差し上げますわ。天救教団とは光の女神を崇める宗教団体ですわ。この時点でリュカリオン様とは敵対関係にあると言えますの。ここまでは理解ですますわよね?」
「おぅ!」
「表向きは光の女神の加護による世界平和を謳ってても、裏では私設軍を編成していて、自分たちの目的達成のために世界中で暗躍しているのですわ。その軍事力は大国に匹敵するとも言われていますの」
「とんでもねぇやつらだな!」
「それで、今、攻めている施設はこれまで壊滅させてきたものよりも堅牢なのでどうしたものかと思案してるところですのよ……」
「なるほど! つまりは天救教団の施設を壊滅させまくって全体の戦力を削っていくわけだな!?」
セラの説明にウィナーが納得する。
「……まぁ、そうなんですけど、施設を破壊して回る目的は他にもありますわよ」
「なんでぇ?」
「それは……」
「そこまでだ。その続きはあとにしろ」
アルフォスがセラとウィナーの会話を遮る。
天救教団の施設……というよりも砦に近い建造物から光が発せられた。
「な、なんだ!?」
ウィナーは目を見開いた。教団施設から伸びてきた光が大地を照らす。そして、照射された大地は焦土と化したのだ。
「おいおいおい! こりゃあピンチってやつじゃねぇか!?」
「そんなこと言われなくてもわかってますわ! アルフォス様、どうしますの!?」
セラがアルフォスの指示を仰ぐ。
「……セラ、魔術であの門を吹き飛ばすことはできるか?」
「ここからだと距離がありすぎてなんとも申し上げられませんわ。攻撃魔術に対してどれほどの対策がされているのかわかりませんし……」
「ゴーレムのトラップは生きてるか?」
「それは大丈夫そうですわ」
「だったら、このまま正門へ向かう。ただし、それぞれ個別にだ。各自、あの光には十分に気を配れ!」
「おぅよ!」
「了解ですわ!」
3人はそれぞれ別方向から正門を目指す。
◎
真正面から正門を目指すウィナーを教団施設からの光が容赦なく襲う。3人が同時に別方向から接近してくるのであれば、最も動きの遅い者を狙う算段である。
「うわちちちちっ!」
光がスキンヘッドの頭頂部をかすめていく。
(ちっ、やっぱりオレを狙う気かよ!)
ウィナーは予想通りの展開に舌打ちをする。
◎
天救教団施設の屋上。設置された巨大な鏡の隣で一部始終を見ていた男は口元に笑みを浮かべる。男の名はチャグラン。天救教団の幹部の一人であり、この施設を指揮を任されていた。
「ふっ…卑しき魔神の使徒どもめ。我ら天救教団が誇る焦魔鏡の威力を思い知るがいい。まずは最も動きが遅いあの男を炭にしてやれ!」
「はっ!」
チャグランが指示を飛ばしたことで、焦魔鏡の狙いはウィナーの絞られた。
「魔術師と弓兵は常に迎撃態勢を整えておけ! もしやつらが飛空魔術を使ったら即座に撃ち落とせ!」
「はっ!」
(さあ、どうする? たった3人でこの鉄壁の守りをどう崩す?)
チャグランは勝利を確信していた。
◎
「大丈夫ですの? ウィナーさんの頭から煙が昇ってますわよ?」
正門にたどり着いたセラが後方を振り返り、隣のアルフォスに話しかける。
「…たぶん大丈夫だろ。あいつは防御膜魔術が使えるからな。多少のダメージは受けるかもしれないが死ぬことはない…と思う」
「そうですわね。彼は頑丈さだけがウリですわね」
アルフォスの言葉にセラは納得する。
「それより、この門は破壊できそうか?」
「…難しいですわね。建物の素材に対魔術加工が何重にも施されてますわ。それに、建物全体にも防御膜魔術がかけられてるようですわ。わたくしの火属性最上級魔術でさえ破壊するのは難しいかと…」
「俺の紅雷とウィナーの打撃が加わればどうだ?」
「あるいは…というところですわ」
「賭けてみるか」
「了解ですわ!」
作戦がまとまり、アルフォスとセラは準備にかかった。
「ん?」
治癒初級魔術による治療を受けながらウィナーが訊いてくる。
「あの施設は何なんだ?」
「はぁぁぁっ!?」
セラは思わず治療を中断してしまう。アルフォスもこれには絶句していた。
「あなた、何を言ってるんですの!? あれは天救教団の施設ですわよ!」
「おぅ、それだ! その天救教団ってのは何者なんだ?」
アルフォスとセラは互いに顔を見合わせる。
「なあ、ウィナー。俺が魔剣を手に入れてから主に戦ってきたのが天救教団なのは知ってるか?」
「知ってるぜ! リュカリオンに頼まれて幾つもの施設をぶっ壊してきたからな!」
「で、その天救教団がどういった集団なのかは理解していなかったと?」
「おう!」
なぜか胸を張るウィナー。
「呆れましたわ! 相手が何者かもわからずによく幾つもの施設を壊滅させてきましたわね……」
「おぅ、アルフォスの旦那の敵ならオレにとっても敵だからな!」
「……いいですわ。説明して差し上げますわ。天救教団とは光の女神を崇める宗教団体ですわ。この時点でリュカリオン様とは敵対関係にあると言えますの。ここまでは理解ですますわよね?」
「おぅ!」
「表向きは光の女神の加護による世界平和を謳ってても、裏では私設軍を編成していて、自分たちの目的達成のために世界中で暗躍しているのですわ。その軍事力は大国に匹敵するとも言われていますの」
「とんでもねぇやつらだな!」
「それで、今、攻めている施設はこれまで壊滅させてきたものよりも堅牢なのでどうしたものかと思案してるところですのよ……」
「なるほど! つまりは天救教団の施設を壊滅させまくって全体の戦力を削っていくわけだな!?」
セラの説明にウィナーが納得する。
「……まぁ、そうなんですけど、施設を破壊して回る目的は他にもありますわよ」
「なんでぇ?」
「それは……」
「そこまでだ。その続きはあとにしろ」
アルフォスがセラとウィナーの会話を遮る。
天救教団の施設……というよりも砦に近い建造物から光が発せられた。
「な、なんだ!?」
ウィナーは目を見開いた。教団施設から伸びてきた光が大地を照らす。そして、照射された大地は焦土と化したのだ。
「おいおいおい! こりゃあピンチってやつじゃねぇか!?」
「そんなこと言われなくてもわかってますわ! アルフォス様、どうしますの!?」
セラがアルフォスの指示を仰ぐ。
「……セラ、魔術であの門を吹き飛ばすことはできるか?」
「ここからだと距離がありすぎてなんとも申し上げられませんわ。攻撃魔術に対してどれほどの対策がされているのかわかりませんし……」
「ゴーレムのトラップは生きてるか?」
「それは大丈夫そうですわ」
「だったら、このまま正門へ向かう。ただし、それぞれ個別にだ。各自、あの光には十分に気を配れ!」
「おぅよ!」
「了解ですわ!」
3人はそれぞれ別方向から正門を目指す。
◎
真正面から正門を目指すウィナーを教団施設からの光が容赦なく襲う。3人が同時に別方向から接近してくるのであれば、最も動きの遅い者を狙う算段である。
「うわちちちちっ!」
光がスキンヘッドの頭頂部をかすめていく。
(ちっ、やっぱりオレを狙う気かよ!)
ウィナーは予想通りの展開に舌打ちをする。
◎
天救教団施設の屋上。設置された巨大な鏡の隣で一部始終を見ていた男は口元に笑みを浮かべる。男の名はチャグラン。天救教団の幹部の一人であり、この施設を指揮を任されていた。
「ふっ…卑しき魔神の使徒どもめ。我ら天救教団が誇る焦魔鏡の威力を思い知るがいい。まずは最も動きが遅いあの男を炭にしてやれ!」
「はっ!」
チャグランが指示を飛ばしたことで、焦魔鏡の狙いはウィナーの絞られた。
「魔術師と弓兵は常に迎撃態勢を整えておけ! もしやつらが飛空魔術を使ったら即座に撃ち落とせ!」
「はっ!」
(さあ、どうする? たった3人でこの鉄壁の守りをどう崩す?)
チャグランは勝利を確信していた。
◎
「大丈夫ですの? ウィナーさんの頭から煙が昇ってますわよ?」
正門にたどり着いたセラが後方を振り返り、隣のアルフォスに話しかける。
「…たぶん大丈夫だろ。あいつは防御膜魔術が使えるからな。多少のダメージは受けるかもしれないが死ぬことはない…と思う」
「そうですわね。彼は頑丈さだけがウリですわね」
アルフォスの言葉にセラは納得する。
「それより、この門は破壊できそうか?」
「…難しいですわね。建物の素材に対魔術加工が何重にも施されてますわ。それに、建物全体にも防御膜魔術がかけられてるようですわ。わたくしの火属性最上級魔術でさえ破壊するのは難しいかと…」
「俺の紅雷とウィナーの打撃が加わればどうだ?」
「あるいは…というところですわ」
「賭けてみるか」
「了解ですわ!」
作戦がまとまり、アルフォスとセラは準備にかかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる