聖剣と魔剣の二刀流剣士物語【復讐編】

美山 鳥

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3章 聖剣エクスカリバー

39話 天救教団施設②

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 「なぁ、アルフォスの旦那…。一つ訊いてもいいか?」

 「ん?」

 治癒初級魔術ヒールによる治療を受けながらウィナーが訊いてくる。

 「あの施設は何なんだ?」

 「はぁぁぁっ!?」

 セラは思わず治療を中断してしまう。アルフォスもこれには絶句していた。

 「あなた、何を言ってるんですの!? あれは天救教団の施設ですわよ!」

 「おぅ、それだ! その天救教団ってのは何者なんだ?」

 アルフォスとセラは互いに顔を見合わせる。

 「なあ、ウィナー。俺が魔剣を手に入れてから主に戦ってきたのが天救教団なのは知ってるか?」

 「知ってるぜ! リュカリオンに頼まれて幾つもの施設をぶっ壊してきたからな!」

 「で、その天救教団がどういった集団なのかは理解していなかったと?」

 「おう!」

 なぜか胸を張るウィナー。

 「呆れましたわ! 相手が何者かもわからずによく幾つもの施設を壊滅させてきましたわね……」

 「おぅ、アルフォスの旦那の敵ならオレにとっても敵だからな!」

 「……いいですわ。説明して差し上げますわ。天救教団とは光の女神を崇める宗教団体ですわ。この時点でリュカリオン様とは敵対関係にあると言えますの。ここまでは理解ですますわよね?」

 「おぅ!」

 「表向きは光の女神の加護による世界平和を謳ってても、裏では私設軍を編成していて、自分たちの目的達成のために世界中で暗躍しているのですわ。その軍事力は大国に匹敵するとも言われていますの」

 「とんでもねぇやつらだな!」

 「それで、今、攻めている施設はこれまで壊滅させてきたものよりも堅牢なのでどうしたものかと思案してるところですのよ……」

 「なるほど! つまりは天救教団の施設を壊滅させまくって全体の戦力を削っていくわけだな!?」

 セラの説明にウィナーが納得する。

 「……まぁ、そうなんですけど、施設を破壊して回る目的は他にもありますわよ」

 「なんでぇ?」

 「それは……」

 「そこまでだ。その続きはあとにしろ」

 アルフォスがセラとウィナーの会話を遮る。

 天救教団の施設……というよりも砦に近い建造物から光が発せられた。

 「な、なんだ!?」

 ウィナーは目を見開いた。教団施設から伸びてきた光が大地を照らす。そして、照射された大地は焦土と化したのだ。

 「おいおいおい! こりゃあピンチってやつじゃねぇか!?」

 「そんなこと言われなくてもわかってますわ! アルフォス様、どうしますの!?」

 セラがアルフォスの指示を仰ぐ。

 「……セラ、魔術であの門を吹き飛ばすことはできるか?」

 「ここからだと距離がありすぎてなんとも申し上げられませんわ。攻撃魔術に対してどれほどの対策がされているのかわかりませんし……」

 「ゴーレムのトラップは生きてるか?」

 「それは大丈夫そうですわ」

 「だったら、このまま正門へ向かう。ただし、それぞれ個別にだ。各自、あの光には十分に気を配れ!」

 「おぅよ!」

 「了解ですわ!」

 3人はそれぞれ別方向から正門を目指す。



 真正面から正門を目指すウィナーを教団施設からの光が容赦なく襲う。3人が同時に別方向から接近してくるのであれば、最も動きの遅い者を狙う算段である。

 「うわちちちちっ!」

 光がスキンヘッドの頭頂部をかすめていく。

 (ちっ、やっぱりオレを狙う気かよ!)

 ウィナーは予想通りの展開に舌打ちをする。



 天救教団施設の屋上。設置された巨大な鏡の隣で一部始終を見ていた男は口元に笑みを浮かべる。男の名はチャグラン。天救教団の幹部の一人であり、この施設を指揮を任されていた。

 「ふっ…卑しき魔神の使徒どもめ。我ら天救教団が誇る焦魔鏡の威力を思い知るがいい。まずは最も動きが遅いあの男を炭にしてやれ!」

 「はっ!」

 チャグランが指示を飛ばしたことで、焦魔鏡の狙いはウィナーの絞られた。

 「魔術師と弓兵は常に迎撃態勢を整えておけ! もしやつらが飛空魔術フライングを使ったら即座に撃ち落とせ!」

 「はっ!」

 (さあ、どうする? たった3人でこの鉄壁の守りをどう崩す?)

 チャグランは勝利を確信していた。



 「大丈夫ですの? ウィナーさんの頭から煙が昇ってますわよ?」

 正門にたどり着いたセラが後方を振り返り、隣のアルフォスに話しかける。

 「…たぶん大丈夫だろ。あいつは防御膜魔術プロテクションが使えるからな。多少のダメージは受けるかもしれないが死ぬことはない…と思う」

 「そうですわね。彼は頑丈さだけがウリですわね」

 アルフォスの言葉にセラは納得する。

 「それより、この門は破壊できそうか?」

 「…難しいですわね。建物の素材に対魔術加工が何重にも施されてますわ。それに、建物全体にも防御膜魔術プロテクションがかけられてるようですわ。わたくしの火属性最上級魔術フレイム・キャノンボールでさえ破壊するのは難しいかと…」

 「俺の紅雷こうらいとウィナーの打撃が加わればどうだ?」

 「あるいは…というところですわ」

 「賭けてみるか」

 「了解ですわ!」

 作戦がまとまり、アルフォスとセラは準備にかかった。
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